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「御馳走様でした」
一時間後、お互いに食べ終わった。
腹が苦しい。
ミリィさんの食べっぷりが、素晴らしいの一言だった。
マンガ肉は強敵だったが、残さず全て食べ切れて良かったよ。
「夕飯は、何時も軽く済ませています。今日も、丁度いい量でした」
うん。
丁度いい量だったのか、それは良かった。
俺は、腹が苦しいけどね。
「では、戻りましょう」
ミリィさんが立ち上がり、俺は後に着いていく。
店を出て、ミリィさんが光学パネルを操作する。
「戻る際は、転移を使用します」
次の瞬間、最初の部屋に戻って来た。
で、河野さんが、カップラーメンを啜っている。
あれ?
作り置きの料理は?
「只今戻りました。御主人様」
ミリィさんが、先程と同じくメガネをクイッと上げながら、河野さんに挨拶をしている。
「お帰りミリィ。酷いよ、夕飯は作り置きしてあるって言うから、見てみたらカップラーメンだし。あれ?メガネ?」
「はい、リョウ様にプレゼントして頂きました。恋人にプレゼントの1つも渡さない人とは、違いますね」
それで、カップラーメンか。
俺の買い物の代金と、この仕打ち。
鬼だ。
「すまない、ミリィ。今度、何かプレゼントする。だから、機嫌を直してくれよ」
「仕方ありませんね。約束ですよ?」
「分かった。リョウ、君には世話になったね。でも、ミリィは渡さんよ?」
笑顔だけど、目が笑ってない。
「いえ、今回ミリィさんには、案内して頂いたりしたので、ほんの御礼です。御二人の仲を、引き裂こうとした訳じゃ無いですよ?」
「本当かな?ちょっと、心配なんだけどな」
ブツブツ言いながら、カップラーメンを啜る中年。
「そうだ、君の部屋を用意してある、ミリィ悪いが、また案内してくれ」
「畏まりました。此方です」
そう言って、部屋を出て通路を歩く。
1分程歩くと、扉の前に着いた。
「此方がリョウ様の、お部屋になります」
金属製の自動ドアが開き、中を覗いてみる。
広!
40畳程の、俺1人には広過ぎる部屋だ。
「浴室、トイレは部屋の中に御座います。後、キッチンと冷蔵庫等の設備も御座いますので、自炊するのであれば、御使用下さい。他の詳しい詳細は、パネルを御覧下さい」
「分かりました」
「本日は、お休み下さい。また明朝、お迎えに上がります」
「はい、有難う御座います」
「リョウ様、此方こそ有難う御座います。では、失礼します」
ミリィさんはメガネをクイッと上げ、一礼してから来た道を戻って行く。
俺は部屋に入り革ジャンを脱いで、光学パネルで部屋の詳細を確認する。
照明は、意識に同調させる事が可能で、風呂やトイレは扉の向こう。
洗濯機も据付だ。
服を綺麗にして畳んで仕舞ってくれる、本物の全自動洗濯機だ。
キッチンは部屋の壁に収納されており、使用する時に出す。
だから、部屋が広いのか?
そもそも、元の世界でこんな広い部屋を借りたら、幾ら取られるんだ?
それに異世界の科学技術は、どれも素晴らしいな。
匠の技が満載だぜ。
さて、風呂に入って寝よう。
扉を開き、風呂場に向かう。
脱衣場が縦横3メートル程で棚が設置されており、籠の中に服を入れると、籠から洗濯機に転移され、洗濯後に任意の場所に仕舞われる仕組みだ。
風呂は、前世と同じ様な感じだ。
浴室とシャワー完備。
しかも、浴槽のお湯とシャワーは自動洗浄機能付きで、わざわざ石鹸やシャンプーを使わなくて良い。
ただ浸かるだけ、シャワーで流すだけで良いのである。
風呂が好きな俺はウキウキしながら、お湯を浴槽に溜める。
が、一瞬だった。
瞬きの間に、お湯が浴槽に入っている。
服を脱ぎ籠に入れて、ルシファーを外して浴室の棚に置く。
のんびり、お湯に浸かって明日の事を考える。
明日は、どうなるのか?
「そう言えば、鏡が無いな」
そんな事を呟くと、目の前に鏡が現れる。
鏡と言うか、光学ディスプレイみたいな感じだな。
でも、顔が写ってる。
えっ?誰?!
黒髪の超イケメンが、驚いた顔で俺を見ている。
取り合えず、自分の頬に手を当てたり、摘んだりしてみる。
鏡に写るイケメンも、同じ事をしている。
「あ〜何だ、ひょっとして俺?」
鏡を見つつ、声に出して言ってみる。
鏡に写るイケメンは、口をパクパクさせている。
どうやら、俺らしい。
この世界の自分の顔を見るのは、初めてだな。
前世と違い、今世は超イケメンでした。




