世界を越えてのお引越し5
「なんということでしょう・・・!!」
聖なる力でこの世界に来てしまったのに、聖なる力によって改装された私の部屋に感動だ!
住みやすいように家具も配置してくれているが、雑誌の中の素敵家具と私が元々使っていた庶民家具のコラボ。
ちぐはぐだが庶民の私には庶民が使っていた物も必要だし、今まで使っていた愛着もあるからそのまま残っているのはありがたい。
ちぐはぐ感は・・・なんとかなるか。
まだ空き地にスペースがあるのでもう少し考えてから増築をお願いしたい。
まわりを見てみると近隣の家や畑が見えた。
これから住む場所を歩きながら確認する。
異世界転移じゃなくて普通の引越しだったら新しく住む場所の探検は楽しいんだけどな。
これからの人生や生活がかかってると思うと複雑だ。
でもこんな自然豊かなところは久し振りなのでのんびりと歩いた。
徐々に人が増えてきて賑やかな通りに出た。
「ここは市場です。生活用品はここで揃います」
携帯からシーナくんが教えてくれた。
和やかに会話している人がたくさん。
私も仲良くやっていければいいな。
色鮮やかな野菜や果物らしい物、お肉やお魚、香り豊かな香辛料、綺麗な布地やお洋服が売っているお店がある。
火が急に点いて食べ物らしき物が焼きあがったり、商品がプカプカ浮いていたり。
あの女性は買った物を次々鞄に入れているが、とても小さな鞄に収まっている。
これが魔法!!
うーん。不思議!
そんな不思議現象以外は外国に来たみたい。
珍しくてキョロキョロしてしまう。
でもこちらの人にとっては私の方が珍しく映るようだ。
「お姉さん変わった服着てるね~。観光かい?」
「!!」
言葉が分かる!
でも私の言葉は…?
「えっと…。引越してきたばかりで…」
「そーなのかい!ミルキへようこそ。これからよろしくね!よかったらこれ食べな!」
八百屋さんのおばさんがリンゴのようなものをくれた。
そして言葉が通じたー!!
ふくよかで優しそうな笑顔の女性の八百屋さん。
シーナくん以外でこの世界で初めて会話ができた。
泣きそうな程ホッとしてしまい、少し目が潤んでしまった。
「えっ!?泣いちゃった!?」
八百屋さんのおばさんがびっくりして、まわりのお客さんもこっちを見てる。
「ラッカ、どうしたんだ?」
「あんた!いや、この子とちょっと話してたら」
体格のいい男性のおじさんがカゴに入った野菜を抱えて出てきた。
「あっ!ごめんなさい!この近くに引越してきたばかりなのですが、やさしく声をかけていただいたらホッとしちゃって」
思っていたよりこの異世界での生活に不安だったようだ。
八百屋さんのご夫婦は顔を見合せ
「そうか。分からない事があれば何でも聞いてくれよ」
「そうだよ!いつでもいいからね。これも持っていきな!」
笑顔で大根に似た野菜もくれ、まわりの人達もニコニコしていた。
「ありがとうございます!これからよろしくお願いします!」
野菜と果物を手に挨拶した。