嘘つき
死にたいと願う私の前に5年後の未来から来たという人と会った。
その人は私の憧れた人で、私とあなたしか知らないことの多くを知っていた。
未来から来たってことは本当らしい。
あなたは未来のこともたくさん教えてくれた。
もう少しで今の苦しい世の中は終わって、暗い雲に覆われたような世界じゃなくなる。だからもう少しの辛抱だから頑張ろう。
私は信じれなかった。
5年後の未来は漫画やアニメのように大きく変化はしてないけど、それでも君の好きだった人達と何も気にせず会えるようになる。君の好きな舞台や目標だったたくさんの人の前で歌を披露することもできるようになる。
だからもう少しだけ頑張ろう。
私の手を取ってあなたは声を震わせながら言った。
でもやっぱり私はあなたの言うことを信じれなかった。
目に涙を浮かべながらあなたは言った。
生きることを諦めないで欲しい。どんなに辛くてももう少しで世界は晴れるから、だからどうか今の世界を乗り越えて欲しい。
あぁ未来の私はいないんだ、だから止めに来たんだ。
やっぱり信じれなかった。
涙で腫らした目を必死にこすって、面影を感じさせる笑い方をしたあなたはマスクをつけ直して砂のお城が崩れるかのように姿を消した。
ほら、やっぱり嘘つき。