♥ 嗚呼っ、婚約破棄!! 4
──*──*──*── トメリロレンスの自室
殿方から一方的に婚約破棄をされ、その日の午後に婚約した殿方と交際を始めて2ヵ月後、また婚約破棄をされました。
先程、客室にて次の殿方との婚約を両親が済ませ、新たな交際が始まりました。
……え、……え、……か、……げ、……ん、……に、……せ、……ぇ、……よ、……っ!!
全く…どうして殿方は婚約者が居るのに浮気をするのでしょうか??
ワタシに不満があるならば、交際中にでも教えてくだされば良いのに……。
直接言う事に抵抗があるならば、手紙にしたためて教えてくださっても構いませんのに……。
ワタシの何が気に入らねぇっちゅうんじゃ、ボぉケがぁぁぁぁああああああッッッ!!!!
……、……、……落ち着きましょう、トメリロレンス…。
今回は未だ2ヵ月も殿方と交際が続きました。
その前は4ヵ月も続きました。
交際を始めて2週間で妹に婚約者を寝取られて、婚約を破棄された早さに比べたら、長く続いているではありませんか…。
……………………今の殿方とは何ヵ月…交際が出来るのかしら……。
やっぱり…ワタシは何かに憑かれているのかしら……。
トメリロレンス
「 はぁ……。
今度の殿方は何処の貴族令嬢と “ いけない関係 ” になるのかしら……。
──ねぇ、トゥヱ……ワタシはどうしたら良いのかしら?
ワタシはこのままずっと…婚約破棄をされ続けるのかしら…… 」
ワタシはついつい溜め息を吐きながら弱音を吐いてしまいました。
ワタシの膝の上に乗って気持ち良さそうに眠っているトゥヱを撫でながら、ポツリと悩みを漏らしてしまったのです。
?
『 尾行すれば良かろう 』
………………んんん??
今…誰か喋りました??
でも…ワタシの部屋にはワタシとトゥヱしか居ません。
トゥヱはワンコですから「 ワン 」としか鳴きません。
喋れるのはワタシだけです。
……………ワタシは無意識に1人で腹話術が出来るようになったのでしょうか?
?
『 何をキョロキョロしている?
話し掛けたのは我だが 』
トメリロレンス
「 …………えっ??
…………トゥヱ…?? 」
トゥヱ
『 如何にも我はトゥヱだ。
主だけのトゥヱだぞ 』
トメリロレンス
「 トゥ…トゥ……トゥヱ?!
本当にトゥヱが喋っているの?? 」
トゥヱ
『 正確には思念で話している。
普通に話したいなら本来の姿に戻るが? 』
トメリロレンス
「 本来の…姿…??
…………トゥヱはワンコ……ではなくて使い魔…でしたね?
ワタシの為にワンコの姿をしてくれているだけで…… 」
トゥヱ
『 そうだが。
今の状態では主が危ない輩に見えてしまうな。
我は本来の姿に戻るとしよう 』
トメリロレンス
「 トゥヱ…?? 」
思念というので話してくれていたトゥヱの体が光り出しました。
光に包まれたトゥヱの体は次第に人型に変わっていきます。
光が消えるとワタシの前に現れたのは、背丈が2m程ある美丈夫な男性でした。
ウェーブがかった長くて真っ白な髪と、左右に生えている大きな獣耳と、後ろから真っ白な尻尾が生えています。
ただ…本来ならば1本の筈の尻尾が何故か10本あります。
トメリロレンス
「 …………貴方がトゥヱ??
本来の姿……は人間なの?? 」
トゥヱ
「 人型ではあるが、人間ではないな。
我は白狼王,フェンリル王,妖狐王,魔王神の遺伝子とやらを掛け合わせて作られた “ 終焉の宴 ” と呼ばれた虐殺皇神だ。
我は皇でもなければ、神でもないが、我を恐怖れた魔族達がそう名付けた 」
トメリロレンス
「 虐殺皇神……。
トゥヱは昔…虐殺をしたの? 」
トゥヱ
「 あぁ…かなりしたな。
数え切れない程の≪ 魔界 ≫を滅ぼした。
逃げ惑う魔族共の姿は実に愉快痛快だった 」
トメリロレンス
「 …………トゥヱ……虐殺は貴方の主がさせたの? 」
トゥヱ
「 我に主など居ない。
生まれた当時の我は何も分からず、研究者共を慕い、されるがまま様々な実験を受けていた。
自我が芽生えた時、我は研究者共の実験台だと知り、1人残らず虐殺した。
初めて大量虐殺した日から、後も先にも我は1人だ 」
トメリロレンス
「 トゥヱ……。
ずっと1人で生きて来たの? 」
トゥヱ
「 まさか。
我にはシモベ,ゲボク,パシリが居た。
我の主はトメリロレンスだけだ 」
トメリロレンス
「 …………トゥヱを呼び出したシエル達は主ではなかったの? 」
トゥヱ
「 魔力を注いだ歯と魔女の血を媒体として我を召喚したに過ぎない。
主ではないが、召喚された側の我は召喚者には逆らえない。
我は召喚者には絶対服従しなければならなかった。
だが──、主との番契約を交わした事で、我は召喚者に服従する必要がなくなった 」
トメリロレンス
「 ……ワタシがトゥヱと契約をして…、トゥヱの主になったからね… 」
トゥヱ
「 そうだ。
我は主だけのトゥヱになった。
主が望むなら、シモベに婚約者の動向を探らせる事も出来る。
主はどうしたい?
我は主の望みを可能な限り叶えるぞ 」
トゥヱは3人用のソファーに腰を下ろすと、王様のように偉そうにふんぞり返って座りました。
足を組んでふてぶてしく座っているトゥヱは本当に偉そうです。
ワタシのソファーなんですけど……、今のトゥヱには丁度良い大きさみたい。
トメリロレンス
「 …………動向を探るって……出来るならお願いしたいけれど…。
トゥヱのシモベさんは何処に居るの? 」
トゥヱ
「 召喚陣で呼び出す。
主、我の隣に座るといい。
我のシモベは血の気が多い。
主を襲い兼ねないぞ 」
トメリロレンス
「 分かりました…。
座りますね… 」
トゥヱに言われたワタシは、素直にトゥヱの言葉に従う事にしました。
◎ 訂正しました。
シモベ ─→ シモベさん