契約②
「へ?」
「二度は言わねぇぞ、それにお前に拒否権は無い」
驚いた。私一人では、ゴールドクラスの仲間を集めるのは難しいと考えていた矢先のことだったから。実力的にもシルバークラスやそれ以下のパーティに加わることさえ、視野に入れていた。そんな状態で超一流のパーティにいた彼からのお誘いは願ったり叶ったりである。ただ……一つ心配がある。
「……私なんかでいいの?回復スキルの使えない元ヒーラーなんだよ?」
「んなこと聞いたから分かってる。ハッキリ言って今のお前はかなり弱いとさえ思ってる。元から特別強そうだとも感じなかったが」
「面と向かって言われるとムカつくわね……」
「ただ、お前はアレがまだ使えるって言ってただろ?俺様にとってはそれだけで採用理由なんだよ」
「えっと、双毒だっけ?」
双毒。両手から強力な毒素を放出し、相手を猛毒にするスキルだ。猛毒は長期戦になればなる程、高い効果を発揮する。もっとも、私は回復手段を失ったので、あまり有効に使える場面が無さそうなスキルになった訳だが。
昔はこの技を使える人間は多くいたが、どういう訳か8回目の昇代の儀式を受けた際にこのスキルは多くの者が使えなくなったらしい。
エアリーもこれを使った戦法が得意だったので不満を垂れていたが、それ以上に新しく習得した自分の防御力を攻撃力として相手に叩き込む技を獲得出来たことに喜んでいたようだ。私は当然、そんなスキル貰えなかった。
「それだ。俺様も使えるけど、他にそのスキルを使える人間が居てくれないと困るんだよ」
「なにゆえ?」
「それを話したらつまんねーだろ。ホラ、とっととギルドの受付にいくぞ」
彼は元々、耐久特化のパーティで戦っていたらしいので、その名残りだろうか。普段使いすることは、そう多くないスキルというイメージなのだが。
また、街のギルドに向かう道中、グランは昨日仕留めたゴーストレントの報告を依頼主に行い、素材をパパッと売り捌いていた。その時の素材の売り込み方が何とも悪徳商人のようであったことは言わないで黙っておくべきだろう。
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「えっと、グラン様は初期状態……つまり、ホワイトクラスからのスタートになりますが、よろしいですね?」
程なくしてギルドの受付に着くと、受付嬢が出迎えてくれた。私が普段見かけていた人とは別人のようだ。少し残念。
一応、グランには事前に過去の経験から、ギルドや他の冒険者に対してトラウマはないのかと聞いていたが「そんなものはない」と一蹴された。まあ、彼なら自分達を正しく評価しなかった連中に実力で再評価させてやるくらいに思っているのかもしれないが。
「あぁ、再登録だしな。ま、俺様ならツレと同じ、ゴールドくらいには直ぐに戻ってみせるが」
「あの、お二人とも……非常に、ひっじょーに申し上げ難いのですが」
「ど、どうかしましたか?」
「クインシー様のランクは……現在ブロンズランクとなっております」
「「!?」」
次の更新は今日の夜になります。




