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プロローグ②

森の奥でひとしきり泣いた後、私は切り株に腰を掛け、ぼーっと木々を見つめていた。この森は二人と初めて出会った場所で、一人で考えごとをする時もよく訪れていた。何というか落ち着く場所なのだ。


こんなところを人に見られたら、何と思われるだろうか。こんな朝っぱらからキノコ拾いをしている人はいないので、やはり不審者として見られてしまうだろうか。まあ、いないものの心配をするよりは自分の今後を案じていなければならないのだが、考える気力は残っていなかった。ここには大きな獣もいないことだし、少し休もうか。



目を閉じているとあの日の出来事を思い出す。




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



私達のパーティである空の団はその日、教会に赴き《昇代の儀式》を受けていた。


《昇代の儀式》と言うのは、経験を積んだ冒険者が神へと祈りを捧げ、新しい魔術や体技……俗に言う《スキル》を取得することが出来る儀式なのだ。


私はこれを既に7回受けており、どんなものであろうと8回目が最後。9回目は認められていない。


一応、この儀式はリスクを伴うものとされている。

大半の場合、新たにスキルを得ることが出来るのだが、稀にその反対の事象、つまりスキルの没収が起こってしまう。


ただし、この現象は《調整》と言われており、圧倒的な才覚を持つ強者にのみ起こることと言われている。つまり私には無縁のことだ。教会の教えとしては「誰もが平等に活躍する機会を神様が与えてくれる」とのことだった。


私たちは物心ついた時からこのスキルを自覚し、年齢や経験を重ねたり、他者から教わることで将来的に多くのスキルを授かる。最終的には攻撃や補助など全て含めて50を超える数を得ることもできる。


これだけだと、将来的には誰もが万能の戦士になることができると言う話になるのだが、そうは問屋が卸さない。結局、不平等が世の常。


まず、スキルの習得にはある程度の傾向がある。相手を攻撃することに長けたものや、自身や味方を守ることを得意とするものなど様々だが、一人で全てを熟せるものは一部の天才とでも呼ぶべき逸材しかいないのだ。他人から教えてもらうにしても、向き不向きがあるようでどれだけ努力しようと、自分に向いてないものを取得することは絶対にできない。


加えて、私たち人間には身体能力的な向き不向きもある。ある程度は努力で補うことも出来るが、成長限界が定められており、とうに限界まで達してしまった。私が所属……していたパーティではギラードは筋力に恵まれており、エアリーは打たれ強さに定評があった。尚且つ、二人はそれぞれ攻撃と防御に向いたスキルを獲得していたので、パーティ内での役割が明確かつ強力無比なものだったのだ。


私も耐久力という観点に絞ればそれなりのものがあるのだが、ある事情からあまり長期戦は得意ではなかった。加えて私は筋力も俊敏性もギラードには遠く及ばないので攻めるのも不向き。それでも、体力回復や仲間の受ける傷を抑えるスキルのお陰で何とか二人に食らいつき、冒険を支えてきたつもりだったが。それでも私には有用なスキルが多いとはいえず、薄々と実力不足は感じていた。


もう自力で習得できるものは残っていない。今回で8回目、つまり私にとってラストチャンスとなる昇代の儀式を何よりも楽しみにしていた。

 

しかし、それが改善されるどころか、悪化の一途を辿るとは予想だにしていなかった。


「嘘……でしょ?」



私はその日、才能のほぼ全てを失った。


物語の導入は次回で最後になりますので、もう少しだけお付き合い頂けると嬉しい限りです。

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