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凱旋③


「じゃ、じゃあ……二人は本当に今、ブロンズランクとビギナーランクの冒険者なんだな?」



「だから何度もそういってるんだが……さっき冒険者カード見せただばっかりだろ」



「そう、私たちはぺーぺー扱いなのよ。失礼しちゃうわよねまったく!」 



「いやお前の場合は自業自得だろ……って俺もそうだったな」



「にわかには信じ難いが…………ランクを本来より高く偽るなら兎も角、低く名乗るメリットなんて殆どないしな……」




二人がかりで状況を説明することで、何とかライカは信じてくれたようだ。途中「私のせいで二人を死なせてしまったー!」と言って泣き出された時は、どうすればいいのか全く分からなかった。



あの無愛想なグランが本気で狼狽うろたえていた辺り、彼からしても想定の範囲外だったのだろう。


彼女は共に戦闘をしている時や村を案内してもらっている間はクールなイメージがあったが、それが音を立てて崩れ去っていく。意外と情熱的な性格なんだなって…………



「でも、二人程の実力者がどうしてそんな低いランク帯にいるんだ?」



「まあちょっと訳ありでな。実質的に一からやり直すハメになっちまったんだよ」



「成る程、じゃあ今のランクは過小評価されているということか。グラン殿は自動回復をしながら戦う

アタッカーとして超一流な訳だ」



「いや俺様の本職はタンクなんだが……」



「そして!クインシー殿のアレはどういった意図のものなんだ?見たことのない戦法だったが、本当に

見事な戦いぶりだったぞ!」



すごい目を輝かせている彼女だが、たまたま使えるようになった微妙と思っていたスキルがたまたま身につけていた宝珠と相性が良かったからできただけと聞いたら残念がるだろうか……?




「ああ、アレね……この宝珠って見たことある?

これをつけるとピンチになった時に素早く動けるようになるんだけど」



「いや、全く見たことのない色合いだな……」




逆転の宝珠はかなり珍しい。秘境にあるとされる、瞬間的に俊敏性を飛躍的に高めるとされる果実……の成分を水晶に取り込んで作ると聞いたことがあるが、売られているのは見たことがない。



これは迷宮ダンジョンで拾ったものだ。宝箱の中からたまたま見つけたものだが、普段はあまり使っていなかった。



勿論、回復力を高める宝珠を優先していたこともあるが、私は未知の部分が多い迷宮ダンジョンで見つけた、得体の知れないものという印象で忌避していたところもあるかもしれない。



そもそも、宝箱がどうして迷宮ダンジョンに置かれているかすら分かっていない。中身を取っても

その内、別の中身が入った状態で復活していたりする。そのメカニズムは一切不明なのだ。本当に謎。



「魔物の攻撃をあえて防がずに喰いしばり(オーラス・スタンド)で耐えて、宝珠の効果を使って体力が減った時に威力が上がるスキルで即反撃……みたいな?」



「な、な…………」



あーあ。案の定ライカは絶句しているようだ。

それはそうだ。彼女はシルバーランクの冒険者だ。



そこまでに至る者は全体の三割以下という話を聞いたことがある。ブロンズランクですら最早初心者とは言えないレベルであることを考えると、その更に上であるシルバーランクは熟練の冒険者と言って差し支えない程には経験値を積んでいる。



こんな付け焼き刃且つ、その場しのぎでしかない戦術なんてすぐに見破られてしまうだろう。彼女は私が元ヒーラーであることを知っているので尚更だ。



嗚呼、ゴールドランクといってもこの程度か……

と、幻滅されてしまっても仕方ないだろう。



彼女は大きく口を開いた。




「な、なんて練られた戦法なんだ!流石はゴールドランクの冒険者、私とは着眼点が違うんだな!」



「え」



「おっといけない。そろそろ牧場へ動物を搬入する手伝いをしなければならない時間だ。それでは私はここで失礼するよ。また、どこかで会おう!」



「ちょっ……」 



バタンと扉を閉められ、彼女を呼び止めようとした時にはもう遅かった。ライカは馬に乗って駆け出していき、すぐに見えなくなった。



「…………行っちまったな」



「まだ挨拶もできてないんだけど……」




しばらくして迎えの馬車が来て、私達は村人達との別れを惜しみつつも、街へと戻っていった。



この時の私は、ライカに変な勘違いをされたことによってこれから面倒ごとが起こるなぞ、知るよしもなかったし、考えてすらいなかった。


遅くなり申し訳ございません!

次回投稿は少し遅くなってしまうかもしれません……

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