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プロローグ①


「クインシー。お前はもう、俺のパーティには必要ない」


私が言い渡されたのは解雇宣言であった。


原因は分かっている。その上で私に反論することは出来ずに只々、無力に俯くことしか出来なかった。


パーティを纏めるリーダーで、高い実績を誇り「昇り竜」の二つ名を持つ冒険者であり、私の友人……だと思っていた、ギラードは淡々と続ける。彼の海の様に青い鎧と赤く鋭い瞳が言いようもない威圧感を与える。


「ちょっと、そんな言い方ないでしょう!私たち、ずっと前からやって来た仲間でしょ?あんた、何度もクインシーに助けられたこと忘れたの!?」


「忘れてなどいない。ただ、回復することのできなくなったヒーラーなぞ存在意義は無い。違うか?」



声を荒げてギラードに食ってかかったのは、同じくパーティメンバーのエアリーだ。銀色の甲冑を着込んだ彼女は、赤い髪を振り乱しながら、体格で大きく上回る筈のギラードにも臆さず、目を引きらせて睨みつける。


二人とも短くない付き合いだが、彼女がここまで感情的になるのも珍しい。私のことをここまで気にかけてくれることは嬉しいのだが、私はもう決断を済ませている。



彼女の気持ちに報いることは出来なさそうだ。



「違わないわ。今までありがとうね、二人とも」


「ちょっと!?アンタ、それでいいの?」


「私だって出来ればここに残りたい。でも、これ以上二人の足を引っ張る訳にも行かない」


「そんなこと!」


「これから思う筈よ。また、どこかで会いましょう、今まで本当ににありがとうね。エアリー」


「……考え直してはくれないのね」



私は黙って頷くと、さっさと身支度を済ませた。もっと二人とは話したいことがあるのだが、これ以上、彼らの顔を見ていると感極まってしまいそうだ。


「待て、コレを持っていけ」


「……受け取れない。それはみんなで貯めたお金でしょう?私が一人占めして良い理由はないんだから」



「そうか…………なら、さっさといけ」



「えぇ、そうさせてもらうつもり。ギラード、あなたは一人で抱え込む癖があるから、無理はしちゃダメよ?困ったことがあったら、仲間を頼ることを忘れないで。じゃ、二人とも元気でね!」



「………………………………ない」



私は酒場を出た後、無我夢中で走り出した。


別れの時は笑顔。それが私のモットー、出来るだけ気丈に振る舞ったつもりだ。今、泣いていることを知られたら、強がって出ていった意味がない。


誰もいないであろう、森の中に消えてしまいたかった。悔いが無い訳ではないのだが、みんなのことを考えればこれでいいのだと自分に言い聞かせる。


別れ際、ギラードが何か言っていたみたいだが、よく聞こえなかった。


初投稿です。一日一部分を目安に更新していく予定なので今後とも宜しくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[一言] 私は最近酷いドライアイに悩まされていました。目薬を挿しても潤うことも知らず、私の瞳はさながら枯れ果てた砂漠でオアシスを探す旅人のようでした。しかしこの感想を書いている今、そんな悩みは何処かへ…
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