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93話


 ベルエットは採った青い実をエイラの掌に乗せる。

 一般に知られているイチゴの実は赤く、小さい物だろう。例え大きくとも、掌全体を覆うほどの大きさではない。しかし、青イチゴはとても大きく一口で食べるのは簡単ではないだろう。


「理由の一つは生産が難しいだけじゃなくて、魔法がないと作れない事」


 魔法が使えないと作れない。これはおそらくアミスの魔法だろう。アミス本人は気づいているか分からないが、おそらくは貴重な魔法だ。


「そして、もう一つは手間がかかること」


 これに関しても、既にわかっていたことだ。エイラとアミスはおそらくこの場所にとどまり成長を見守っていたのだろう。交互に見張っているのかと思ったがそんな様子も見られなかった。トイレなどはどちらかに任せ、緊急時の対応の為、二人で見ていたのだろう。


「確かに、手間は凄い掛かった」


「それはそうでしょ。てか、青イチゴの魔法なんて誰が使えたの?」


 ベルエットは私に目配せをしたが、隠すことでもないだろう。アミスも魔法を使う事に関しては勿体ぶる素振りもない。


「エイラの後ろにいるアミスだよ」


 ベルエットにアミスを伝えると、アミスはエイラの服を掴み先ほどよりも自身を隠した。怯えるアミスにお構いなしにベルエットは近づく。


 紫の髪は未だに目を覆い、腰回りをふらついている。ベルエットはアミスの頭に手を置き、アミスの髪に手櫛を駆けた。手前に手がゆっくり動き、前髪を上がる。アミスはごくりと唾を飲みこみ身構えた。

 ベルエットによってあげられた前髪の下には綺麗な青い目が輝き震えていた。そんな目は前にいるベルエットさえ見えていないようだった。

 小さな顔立ちのアミスはとても幼く見えた。


「青い目綺麗だね」


「ありがとうございます」


「ねぇ、なんで青イチゴを作れる魔法を知ってるの?」


 詰め寄るベルエットにアミスの警戒心は増していき、エイラから手を離し一歩ずつ離れていく。


「もう、ベルエット年下に詰め寄るなよ」


 これ以上はめんどくさくなると察したユイラはベルエットの服を掴み後ろに下げさせた。


「エイラ。疲れてるでしょ?私の家で蜂蜜レモン飲む?」


「うぅん、そうする。お風呂も貸して」


「了解。ほら、ベルエット行くよ」


 エイラは青イチゴを巾着にしまい、人差し指に紐を引っ掻けた。アミスもエイラの後ろに引っ付き、ベルエットは距離を離すため前を歩かせる。



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