92話 初対面
「エイラーごめんね。本当は夜に来ようと思ったんだけど邪魔が入って」
「ユイラ..邪魔って?」
後ろにのそのそと付いてきたベルエットはユイラの小言に噛みついた。
アミスとエイラは手を土で汚し、しゃがみ込みながら青イチゴを見ていた。既に掌ぐらいの大きさになっていた。既に完成しているのではないかと思っていたが、二人はじっと青イチゴを見つめている。
「エイラ~」
先程までふざけていたユイラだが場の空気がそのような状況でないと察し耳元で小さく囁いた。ピクリと肩が小さくはねエイラが振り返る。その際にアミスも振り返ると思っていたがじっと青イチゴを見つめこちらを向くことは無かった。
「あ、ユイラか。どうしたの?」
いつもなら声で気づくはずなのに、少しだけ残念な気持ちが湧いてきた。夜が明けているが高い集中力で見ていたのか、それとも二人が交互に見ていたのかはわからないが、二人を見るだけで大変なことをしている事は理解できた。
「あとどれぐらいで完成するの?」
「わからない」
「ん?」
「もう一時間は何もせずじっと見守ってる」
「一時間も!」
平然と言うエイラはもはや感覚がおかしくなってしまったのだろうか。一時間も変化しないものを見続けて、平然と居られるエイラは素からおかしいのかもしれない。
そんな中、アミスの隣に座ったベルエットは青イチゴを凝視し軽く触れた。
「もう完成してるよ」
ベルエットは立ち上がりググっと背を伸ばした。太陽のエネルギーを効率よく吸収するためか腕を高く伸ばし空に向かって手を開いた。
おそらくはアミスとエイラには完成の確認が取れなかっただろう。だが、ベルエットは何故完成確認が取れたのだろうか。
「なんでわかるの?」
エイラは初めてベルエットと話すが小さな傷をつけるような棘が付く。
「ベルエットは青イチゴ知ってるの?」
二人に面倒くさいしこりを残さない為ユイラが間に入る。
まぁ、エイラも大人だから何もないと思うけど、ベルエットが何言うかわからないし。
「まぁ、一般にはあまり知られてないよね。ここにあるのも正直おどろいているよ」
「完成ってこれ以上大きくならない?」
エイラがベルエットに聞き、服に付いた土埃を払った。アミスはベルエットから距離を置き、エイラの隣に並ぶ。
ユイラは手に持っていたホットドックを二人に渡し、食べ終わるまで二人を待った。
「青イチゴはさ、一般に知られないのは作れるものが少ないことにあるんだよね」
ベルエットは青イチゴを収穫した。