90話 背中に
「ギャア!!」
アラームはとても緊張感があるものだった。
日常生活で悲鳴は聞こえない。戦いの中のなら分からなくもないが、ここはふかふかのベッドの上だ。固い床ではない。
ユイラは目を擦り隣で悲鳴をあげるベルエットを見た。ベルエットは体を捩り何かに抵抗していた。しかし、何と戦っているかは確認できなかった。
ユイラが再び眠りにつこうと体を倒そうとした時ベルエットが震える手で両肩を掴んだ。
「どうしたの?」
涙目の彼女は時折しゃくりあげユイラに縋った。
「背中に何かいるの..ぞわぞわするの!」
「おやすみ」
「ユイラ!助けてよ」
ベルエットはユイラの肩を揺らし激しく抗議した。ユイラは寝起きで力が入っていない為、頭が激しく揺れた。揺れが収まり、ユイラの頭がぐだっと垂れた時、ベルエットはユイラの頬を両手で挟みっ持ち上げた。
「ユイラ早く!!」
「あーもう、わかったよ。フワボウ、出てあげて」
「ひぃ!」
ベルエットは気持ち悪い声を上げ背中を反った。胸を強調したと思ったが直ぐに猫背になり震えながらユイラの肩を掴む。
「ユイラ、今頭にいる。頭に!」
ベルエットは既に涙が枯れたのか、血の気は引き震えが治まり始めた。
そんなベルエットの事を気にせずフワボウは足を畳みベルエットの頭の上に座っている。フワボウはユイラの家にやってきて既に1か月くらい経っているが大きさが全く変わっていない。
「ほら、フワボウこっちに来な」
ユイラはベルエットの頭付近に掌を近づけた。フワボウはその行動を理解し、多くある足をすべて使いベルエットの頭の上から飛んだ。フワボウはベルエットの頭の上でやっていたように足を閉じユイラの掌に収まった。
「おやすみー」
カーテンから光が差し込んでいるがユイラは気にせず枕の上に頭を置いた。フワボウはユイラの頭付近を徘徊するがやがて布団の中に入り込み動きを止めた。
「ユイラ、目が覚めた」
このお嬢様、私を何だと思っているのだろうか。その辺の召使ではないのだ。何なら私はあなたを止めている方だ。おやすみなさい。
ユイラは機嫌が悪いのか、心の中で悪態をつき布団を鼻先まで持ち上げた。
「ねぇーユイラ朝ごはん作ってよー」
「お嬢様、私は眠いの。寝る」
「お嬢様って言うなー朝ごはんー」
ユイラは面倒くさくなり黙って寝て過ごそうとするが、突然布団を捲りあげ上体を起こした。しかし、再びベッドに体を埋める。ベルエットと一緒に..
「何すんのさ!」
「いたーい」
二人はおでこを押さえベッドに蹲った。数十秒悶えた二人はゆっくりとベッドから降り寝室を抜ける。
「あ!そう、エイラだよエイラ」
「エイラ?」




