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87話 ビー玉

メントスコーラみたいなものです。


「学校は受かったけど入るつもりは無い」


「何で?」


 蜂蜜レモンが無くなったコップに水を注ぎ、会話を続けるのだと二人は理解した。コップの下に少しだけ溜まった蜂蜜を溶かすため、マドラーで突く。ユイラは右に回し、ベルエットは左にマドラーを回す。その間も二人の会話が途切れることは無かった。


「入試は無料で受けれるし、材料も無料だからアイディアを売り込もうと思って」


「それで、できたのが空気を出すビー玉って事か」


「でもね、今使われる物は殆ど私が作ったやつじゃないよ」


「どういうこと?」


 ベルエットは苦々しい顔を浮かべ俯いた。

 コップの中にできている渦に目を向け、ポツリと話始める。二階から何かが落ちる音がしたが、ユイラは言葉に割って入ることはせずベルエットの話を聞いた。


「私が入試で作ったのは生成した魔法をビー玉に込めること。入試ではガラス板に入れたんだけどね。でも、それは魔法をかけた瞬間から生まれるものなの」


 私はベルエットが何を言いたいのかわからなっかった。魔法をガラスに注ぎ空気を出す。ラムネを飲んだときは気泡がぷかぷかと浮かんでいた。ガイスはガラスを浮かしていたと言っていたが、おそらくそれは持続的に空気を出していたと言う事だろう。決して変なことではないし、魔法を使ったのなら魔法の効果が出ることは不自然なことではない。


「王都でラムネ飲んだ?」


「飲んだけど」


 ユイラは王都のラムネを思い浮かべる。甘くて炭酸が強烈に聞いた透明な飲み物。私の蜂蜜レモンには敵わないが安価であんなに美味しい飲み物もそうはない。


「気づかなかった?」


「何に?」


 何のことを言っているのだろうか。ラムネに変わったところなんて何もなかった。それよりもビー玉で封をし、それを押し込むことによって飲めるようになるとは遊び心もあって私は気に言ってる。


「下にラムネが入ってて上にビー玉がある。ビー玉の封を開けて落としても、ラムネと交わるのは瓶を傾けて飲むとき」


「それが?」


「あれの魔法は特殊なんだよ。二つの物が合わさり作用する」


 ビー玉を押した時液体が溢れた。私はその時にラムネが炭酸だと気が付いた。その時に気が付いた..


「瓶の魔法がビー玉によって起こされた..」


 屋根から落ちる雫が水溜りにポツリと落ち波紋を広げる。ユイラは自分で発した言葉が体の隅に届いていくようだった。

 感情が乗らない、反射的に出て言葉。しかし、その言葉に反応したベルエットは苦々しい顔をあげニヤリと口角を上げる。


「そう。あれは遅延式魔術だし、更に条件も加えられている」


「でも、そんな魔法なんて」


「簡単には出来ないよ。透明な甘い液体が入った瓶は、ビー玉に掛かっている魔法によって液体に空気を生み出す。だから、ビー玉が当たった瞬間中の液体が溢れ出した。偶に勘違いする人がいたけど、これは瓶だけに魔法をかけても意味がない。ビー玉には衝撃が加わると魔法を発動する効果が記され、その術式を読み取った瓶が反応する」


 ベルエットが説明してくれた魔法はパズルの最後のピースを埋めるようなものだった。外装や、中身は大まかに分かっている。しかし、それだけでは完成はしない。最後の1つ、今まで何百何千と積み上げてきた物の最後の1つ、それを入れることで興奮するような物が完成する。


「私が考えたのはずっと空気が入るもの。でも、私のお母さんは難しくも遊び心を入れていた、憎たらしいほどに」


 ベルエットの声音にはしっかりと憎しみの感情が出ていたが、それよりも悔しさの感情が割合的には多かった。

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