83話
「へ、へぇー。確かに王都は最近スリが多いって言うしね、魔染火大会もあったし」
彼女はしらを切るつもりなのだろう。顔を背け視線を迷わせている。
まぁ、全く隠しとおせるような演技はしてないのだが、まさかこの人他の人たちまでやっていたりして。まさかね..
アガアリが潰れされたことによる悪臭が広がりだし鼻に着く。正直早くここから抜け出したい気持ちが募ってきた。
「まぁ、いいや財布泥棒さん。これからよろしく」
「だから盗んでないって!!」
「ポケットから茶色の物見えてるけど..」
勿論、なにもない。てか、私の財布は白色だ。何となくだけど財布は黒か茶色が多い気がするし。それよりもベルエットの反応が面白すぎる。
ユイラは腹をかかえ、ケタケタと笑った。ポケットに手を入れまさぐるベルエットは何もないことに気が付いたのか立ち上がりユイラに近づく。
「謀ったな!!」
「そんで、やってくれる?」
「あーもう、わかったよ。海調べるだけでしょ?」
海調べるだけ。
そういう事は言ったがメインは魔物のベラリエラだ。なんか悪いことをしているようだが、めんどくさくなると手伝ってくれそうにないし、これはしょうがない。しょうがない。
それよりも時間もあと少ししかない。此処を出なくては。
そう思っていると、ベルエットは着ているワンピースの土埃を払い私が歩いて来た方に歩み出した。
「手伝う代わりに私の願いも手伝ってね」
「旅に出るってやつ?」
「うん」
「まぁ、考えておく」
「何でよ、手伝うからいいじゃん」
「財布」
「うぅぅ」
私もすぐに返事をしてしまいたい。旅に出たい。お父さんの血を引いてしまっているからだろうか。それともお母さんの意志的なものなのかはわからない。でも、旅に出るとして何をもって行けるだろうか。旅というには時間をかけどこかへ行くことなのだろう。
二人は歩き、幽遠の森に出た。門の受付にいるいる兵士に女王のアガアリの死体が転がっていたことを伝え、拡張袋と笛を返した。受付の兵士はベルエットを訝し気な目で見ていたが、ユイラがいたこともあり、すんなりと幽遠の森を出ていく。
「ここは何処なの?」
「ソーユ村。私が住んでる村」
「あ、じゃあソーメル町も近いんだ」
「まぁ、近いけど森を抜けないとだから」
「そっか、どうせなら染色された服でも買おうかと思ったのに」
いけしゃあしゃあと言うが、盗んだお金だと気づいていないのだろうか。いや、そういえばベルエットって炭酸瓶を作ってお金あるんじゃ。