77話
夜ご飯を食べ終えて、コージとミツネの両親はどこかに行ってしまった。どこかに行ってしまう前に片付けられた机にケーキと紅茶が置かれた。
「まだ話すんでしょ。食べな」
シズミさんが花柄が円状にあしらわれた皿にショートケーキを乗せ出してくれた。
神々しいイチゴに雲の様な生クリーム。蜂蜜がケーキの横に添えられ誘惑しかない物体が二人の前に置かれた。紅茶の心が温まる匂いと、視覚で感じる欲望が先ほど欲を満たした胃に刺激を与えた。
「これを食べたら太ってしまう」
ミツネは見えない涎を垂らしながら私にではなく、ショートケーキに喋りかける。
そうだ。これを食べてしまえば、内か外に脂肪という物が付いてしまう。無駄なものが付いてしまう。
こう見えても私たちは悩める女の子であるわけでスタイルには気を使っている。上の脂肪に関して。ミツネには多分もう勝てない。エイラに勝てる可能性も見えてはいないが。
だからこそ、私はお腹周りに脂肪を余りつけず乗り切りたいのだ。スタイルは意外と気にしてしまう。
「でも、食べずにはいられないようね」
「勿論」
ショートケーキの柔らかいスポンジに雲みたいな生クリームを口の中に入れる。
お腹の中は満たされているはずなのにどこに入るのだろうか。本当に雲の様な物ではないと疑いをかけるべきだと私は考えている。ミツネもそう思っているだろう。
「流石に苦しいね」
思っていなかった。
「私にくれても良いけど?」
「あげないよ」
皿の上にあったケーキは無くなり、悲しくなるが切り替えないといけない。本題はこれからであり糖分を取った頭でいい案を出したい。
二人は紅茶を一口飲み口をリセットする。鼻から抜ける香りに気持ちが落ち着き、瞼が落ちそうになっているが話を始める頃には二人の眠気は覚めていた。
「さて、ここで完結しよう。エイラのプレゼント」
「んーミツネはまず何あげるの?」
「私はマニキュア」
「ミツネっぽいね」
ミツネが良く爪の色を変える。小さいときからシズミさんに怒られていたが、気づいたら色を付けるだけでなく、柄を付けたり爪の上に綺麗なビーズを乗せていた。今では村でそれらが流行りわざわざミツネに頼む者までいる。
「ユイラは何渡すの?」
「私は髪留め」
「髪留め?」
「そう。緑の桜を付けた髪留め。エイラ髪結ばないから」
アイラさんを森で合わせることを条件に王都の職人に頼んだ緑桜があしらわれた髪留め紐。パーク王国の象徴的な花でありとても特別なものだ。王都の職人だけあって色も削りも綺麗に出来上がり、手作りではなくなったが良いものだと私は思ってる。
「確かにね。これから畑仕事とか動くしね。結ぶ習慣ができそう」
「後ろで結ぶやつ絶対に合う」
「ポニーテール?」
「そうそう」
「確かにね」
あの赤い綺麗な髪を一つに結び、細長い首元が見えたらエイラは、凄く素敵になるのだろう。
頭の中の想像をいつも上書きされるから本当にやる時が楽しみだ。私がやってやろう。
「そんで肝心な事が決まらないのだが、いっその事いつもと同じで良いのではないか、と思ってる私がいる」
「ミツネ、私も思っている」
「じゃあ、年も上がったことだし×2にしない?」
「そうだね。合計四枚。それでいいかも」
二人は互いに雑なとこがある。勿論、私もミツネもやる時はやる子なのだが、やらない時もある。おそらくエイラは苦笑いをしながら、四枚に増えた券を受け取るだろう。だけど、おそらく本命のプレゼントには喜んでくれるはずだ。ミツネもそう思ってるからこそ、雑になってしまう。
まぁ、もう少し考える時間があったら変わったかも知れないが。




