73話 商業範囲
二人はミツネの家を目指すために歩いてきた道を戻っていた。多くの店が構える場所にあるミツネの家は辺りに強い蜂蜜の香りが漂っている。今日を含め三日後に蜂蜜祭が始まる。既にどこかの街から来た人たちが徘徊し、穏やかな時間を過ごしていた。
「ミツネの家には今年は誰か泊まってるの?」
「いや、今回は宿泊する人を取ってないよ。赤ちゃんも生まれたしね」
ソーユ村は大きく分けて二つの範囲に分かれている。ミツネやガイスがいる商業範囲。商業を主し家とお店が一緒になっていることが多い。蜂蜜祭では主に商業範囲がメインとなり多くの人が流れていく。そんな商業範囲には観光客が止まることがある。事前に予約を取り長期間の休みを過ごしている。
エイラ、ユイラの家がある農業範囲は商業範囲の様な賑わいはないが緑が多く落ち着いた雰囲気になっている。
「赤ちゃんは元気?」
「元気だよー。でも大変な事があるの」
「赤ちゃんを育てるのは大変でしょ」
「それはそうなんだけどさー」
どうやらミツネが言いたい大変な事は今までとは違うらしい。ミツネ家はこれで三人目の子供になるのだから要領は掴んでいっるはずだ。と言う事は今までにない出来事。
「元気がありすぎるとか?」
「あーそれもあるけど。問題はクッションかな」
「クッション?」
「ユイラがくれたやつ」
ミツネはため息を付きユイラを見る。何故そうなっているか分からないユイラはキョトンとしミツネに見返す。意味が分かっていないユイラに対しミツネは呆れながら言った。
「クッションを洗ったて違うの渡したらずっと泣いて、挙句の果てにクッションを投げるの」
「今一般販売してるし買えばいいじゃん」
「何言ってるの?」
再び歩き始めたはずがミツネは立ち止まりこちらをキット睨む。ユイラは困惑し、目線を合わせ委縮してしまう。
「ユイラ、あのクッションとかベット、枕、どんだけ品薄か知ってるの?」
食い入るように迫るミツネに何故かメンチカツや付近まで押される。小気味のいい油の弾ける音、香ばしい香りが鼻をくすぐりお腹の生き物が唸り声をあげる。
「わかりません..」
品薄であることは聞いていた。場所を拡大することも聞いていた。それでも、栽培にそれ程時間はかからないし、売り上げが出たから場所の拡大が出たわけで。
メンチカツが上がったのだろう。先程よりも強い香りが鼻腔に張り付く。
「あのねー」
「ミツネ!」
ユイラがギュッと目を瞑りミツネの言葉を遮る。珍しくユイラの大きな声を聴いたのがミツネはハッとし言葉を止めた。ぐっと近づいた距離が少しだけ離れミツネがゆっくりと呼吸を整える。
「なに?」
「あの、メンチカツ食べない?」
ユイラは手を精肉店に向け、ミツネの視線を誘導した。じゅるりと擬音が出たのかもしれない。ミツネは精肉店から目を離せなくなり、店主の男性がニッコリと笑った。
「ミツネちゃん、ユイラちゃん、お昼にどう?安くしておくよ」
じゅるりと鳴る擬音が大きくなる。
「じゃあ、二つ」
ミツネはそそくさと店の前に行き熱々のメンチカツを二つ貰った。
テンポが悪くダラダラして申し訳ございません。
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