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70話


「さてどうしたものか」


 エイラに手招きされユイラとアミスは畑の近くでしゃがみ込んだ。幽遠の森で清掃をしているユイラは虫への耐性を持っているがアミスは持っていないのか顔をしかめ近くの虫を払っていた。

 エイラはスコップで先ほどの鉢程度の穴を掘り、青イチゴの根が絡まった土を植える。しかし、首を傾げブツブツと何かを言っている。


「ユイラこっからどうすればいいと思う?」

「なんのこと?」

「ここからどう増やそうか」

「え、考えてなかったの?」


 エイラの言葉にユイラは笑い、エイラは土を弄りながら唇を突き出しコクリと頷いた。アミスはボーっとし広がる畑を見ていた。一日一回しか使えない魔法を使い疲れているのか、それともただ緑に広がる風景を見ているのか。どちらかは分からなかった。それでも、口を挟まないと言う事は青イチゴを作ることができるアミスにも分からないのだろう。


「クロガバトの羽で使った魔吸い草とか使えない?」

「うーん」


 ユイラは魔吸い草についてなぞりながら考えてみるが結論に着く前に考えが破綻してしまう。


「魔吸い草はあくまでその物が持つ魔力を吸うからアミスが魔吸い草に魔力を入れても、青イチゴが持つ本来の魔力を吸えない気がする」


 ユイラはその言葉を頭で一度考え軽いため息を付く。

 魔吸い草を使い数を増やすのならば本来の青イチゴが持つ魔力を吸わせなくてはいけない。しかし、そんな量は勿論ないし、種は既に土の中に。


「アミス、青イチゴってどんくらいで実ができるの?」


 意識が飛んだように畑を眺めているアミスはユイラの声に反応しピクリと肩を上げ、ユイラを見上げた。


「えっと、実が付くのは速くて明日になると思います」

「おお!」


 思いもしていなかったアミスの言葉に一度エイラは驚くが、アミスの補足にエイラは表情を重くしコクリと頭を下げてしまった。


「実を付くのは速いのですが、最高級の青イチゴを作るのなら話は変わるらしいです。私もおばあちゃんにしか聞いたことがないので分からないのですが」


 アミスは先程とは違い饒舌に青イチゴについて話した。

 青イチゴは一つの低木に実が沢山つくという。しかし、完成度の高い青イチゴを作るには一つの実を育てる方法が必要となる。

 本来植物が持つ、蕾を付け花を咲かせ実を付けるという工程も他とは異なるらしい。青イチゴの場合は蕾を付け、花開かず蕾が実に変化するという形をとるのだとか。

 そういった過程で出来る蕾を摘蕾てきらいし最初にできた実を成熟させていく。


「でも待って、それって..」

「はい。見張りが必要です」


 エイラの苦い顔に塩を塗るようにアミスは言葉をかけた。


「蕾が実になった時点で魔力を消費すると言っていたので、蕾の時点でとります。さっき言ったように一日で実は出来るので成長スピードが速いです」

「ですよねー」


 意見を躱している間にも既に目が芽吹き、成長を目で追えるほどの速さで畑の背景に溶け込もうとしていた。

 エイラは落ち込みながら優しく目を撫で、大きなため息とともにググっと立ち上がった。



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