66話
日が沈み始め何も生産をしなかった日にどんよりと体が重くなるがそんな私をしり目に二人は何やら楽しそうに話し込んでいる。
何もしていないのに眠いのはなんでだろうか。起きてからまだ6時間程度だが何故か過ぎにでも寝てしまいたい。自分の体には不思議が沢山ある。
「それで今から倉庫に探しにいく?」
二人で何やら話している二人の間に入り込み聞いてみる。
倉庫には小さな灯りがあるし特に探すことに苦労はかからない。あとは気力があれば動くのだが何となくエイラが出す答えは見えていた。
「明日にしない?」
「私もそういうと思ったよ」
分かっていた回答に反射的に返事を返しリビングを抜ける。
「どこ行くの」
「屋根裏」
自由な時間を作ったならばやりたいこともあった。最後の清掃からすぐに王都に向かってしまった。その間、特に何かをやるわけでもなく王都への小さな旅行を楽しんでしまった。私の目標である幽遠の森深層。お母さんが到達した最高点。お母さんは深層の事は分からないと言っていたが、そんなことは問題ではない。ただ私はお母さんの後を追いたい。
お母さんが深層に言ったのは二回。私がまだ幼い頃と去年のこの時期。帰ってきてお母さんは死んでしまったが二回行って何があったのかは知らない。
屋根裏に上がりやる事は決まっていたので作業台に必要な物を置いていく。
フワボウが作った沢山の糸に柔軟性の高い竹。オレンジ色の小さなウキ。それらを並べ頭の中で形を整える。
久しぶりの工作に頭は嬉しいのか思考が目まぐるしく頭の中で広がる。
「ふぅ~」
ユイラは作業台の前に座り深い息を付く。
部屋の中は月明かりが張り込み星の様に埃を照らす。部屋全体がプラネタリウムの様に幻想的な場所となり虫の囁きと共にユイラは手を動かした。
丸めた糸を三つ螺旋状に形作り一本の糸にする。細い一本も三本にすれば少しは厚みが出る。それでも指の10分の1くらいの厚さがあるかないかだ。
王都で知ったのだがフワボウの糸はそれなりの値段がするみたいだ。値が張ると言っても高級品ではない。無料で沢山の糸がある私からしたらいい値段なのだが、物作りをする人にとっては値がかさんでいくだろう。店主の話だと服飾学校の生徒はお金持ちが多いのだとか。
王都の思い出を辿りながら糸の量を気にせず編んでいく。
「一時間でこんだけしか作れないか」
ユイラは一時間手を動かし続けたが自身が思っていた以上に結果が出ていない事に無駄に疲れが襲ってくる。今やっている作業の何倍もの作業が今後あると考えると精神がおかしくなりそうだった。
「ユイラこんな暗いとこで何やってんの?」
背後の音が耳に入らない程、集中力は切れ後ろから投げかけられた声にびくりとする。エイラとアミスが部屋の中にのそのそと入り、蝋燭に火を付ける。クロガバトの解体作業の時、異臭が部屋の中に充満したため対抗策として、今使っている灯りは解け始めるとアロマの香りが広がるものだ。
「釣り竿作りだよ」
「釣り竿ってもっとスマートな感じじゃなかった?」
エイラはユイラが編んでいた糸を掌でゆっくりと持ち上げる。軽く右に手を流し糸が人差し指と親指の間を抜けて行った。
「かなり強そうな糸だけど何を釣るの?」
「ベラリエラ」
簡単にユイラが言ったせいかエイラは驚きもせず糸を手の中で転がした。エイラの後ろにいるアミスは会話に興味がないのか部屋の中をぐるりと体ごと回しながら見ていた。
「ベラリエラを釣るにはエイラ、青イチゴが必要になると思うからよろしくね」
「そのためにアミス借りるね」
エイラはアミスの腕を引き寄せ体に密着させる。
急の出来事でアミスは驚いたが直ぐに顔を綻ばせニッコリと小さく笑った。
目元は薄っすら髪で隠れていたが。




