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64話


「私からも質問いいですか?」


 エイラが青イチゴについて考え込んでいると、アミスから質問が投げかけられた。エイラはハッとし体の力を抜く。


「いいよ」


 ユイラの何も考えていない頭を切り替え話に集中する。いつも家や倉庫をうろついているフワボウは今どこにいるのかは分からないがおそらくはその辺で再び糸を出しているだろう。


「この村は何処でお二人は何をしているのですか?」


 アミスの畏まった言葉に違和感を覚えるが、声には戸惑いなどは無くなり表情は砕けていた。優しい笑顔を向けられるとギュッと包み込んであげたい気持ちが湧いてくる。


「ここはねパーク大国のソーユ村。貧困でもないし何か大変な事が起こるわけでもないよ。あと蜂蜜がどこよりも美味しい、小さいけど栄えている村」


 エイラは簡単に村の内容をアミスに伝えるが、王都を見てしまった為この村が栄えているのかは疑問だ。確かに蜂蜜は有名だしお金もある。でも、大きな建物は無いし、ラムネ瓶といった目新しい物はない。唯一あるとしたらクロガバトのベットと枕くらいだ。


「蜂蜜が有名だから村の中も蜂蜜の匂いがしたんですね」


 アミスは鼻を立て周りの匂いを嗅ぐが流石にユイラの家まで蜂蜜の匂いが染みついているわけではない。それでもどこか嬉しそうに匂いを嗅ぐアミスは何を吸い上げているのだろうか。

 ユイラはアミスの空気を嗅ぐ仕草を真似辺りを嗅いでみるが特に変な匂いはせず、微かにバターの香りだけが確認できた。


「蜂蜜の匂いはこれから祭りだからね」

「祭り?」


 アミスは首の糸を抜かれた様に頭が傾きエイラに説明を求める。頭の傾きで髪が顔を覆い鬱陶しそうに後ろに自身の髪を投げた。流石に整えていない長い髪は邪魔になっているのだろう。ミツネにでも頼んで切ってもらう事も検討しておく。その場合にはうんと可愛くしてもらう事も頭に入れておこう。

 ユイラはニタニタと頭の中で勝手に考え話を聞いていた。


「蜂蜜祭がこの村では五月の最後にやるの。感謝とこれからの豊作を兼ねてやる村全体のお祭りだよ」


 村外からも人が訪れ緩やかに流れる村の時間が蜂蜜祭の時には忙しなく経過していく。そんな雰囲気が様変わりした村は小さな幸せから時に大きな幸せまで運んでいるとても楽しいお祭りだ。


「私も見て見たい!」


 アミスは首に一本固い紐を入れ力強く頭を戻した。固い首の動きとは対照的に、しなやかさを持ち靡く紫の色の長い髪は彼女の背中を覆った。そこでユイラは気づく。


「アミス、取り敢えずお風呂入らない?」

「ぐぅ、」


 くぐもった声を喉の奥から出しアミスは小さく唸る。

 なんで今まで気づかなかったのだろうか。アミスの髪は塩の香りが残り、少し生臭い。きしんでいない髪に騙されていたが相当匂いを吸収しているのだろう。服からも海の匂いを感じることができた。

 でも、何故だろうか今までは甘い香りがほんわかにアミスの体を包んでいたが、今の匂いは生臭い。


「やっぱり、青イチゴで確定だね。この萎れた果実」


 エイラが口角を上げ、微笑み手の中で青イチゴを遊ばせていた。


 




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