62話
「流されたってどこから流されてきたの?」
エイラがアミスに問うと彼女は少し困った顔をし考え始めた。
流石に元居た場所を知らないと言う事は無さそうだが、何に迷っているのだろうか。
「えっと、私が村はプレラです。国名は分かりません。木の小さな船で流されて着いた場所がすぐそこの海でした。そんで、崖を上って歩いてたらそこについて...」
ここまで流された経緯を話してくれているが何故流されたのかそこが良く分からなかった。それよりも私はどうしても彼女の前髪が気になってしまう。せっかく綺麗な青い瞳をしているのだから、前髪で隠す必要がない。というか、勿体ない。
「まぁ、取り敢えず全部食べちゃいな。冷めるよ」
こちらから質問をしていたがエイラはフレンチトーストが冷めるのを気にしていたのだろう。アミスにフレンチトーストを進めると共にコップの中に水を注いだ。
外は日がもうすぐ傾き始める事だろうか。涼やかな風が微風だが家の中を通り過ぎ心を落ち着かせる。
あと5日もすれば町一番の祭りが始める。そのこともあってか風に乗り蜂蜜の匂いが流れ込む。いくら食べても飽きない蜂蜜は村の中では無くはならないものだ。そんな蜂蜜の豊作を願うための祭りにはどうしても気合が入ってしまう。
「ごちそうさまでした」
アミスは簡単にフレンチトーストを平らげ皿を綺麗にした。下を小さく出し口の横を舐める仕草はとても子供っぽく私たちと年齢が近いと思えない。水は今度は少しづつのみ半分ほど残したところでコトンと底を付けた。
「それで、また質問で悪いんだけど。なんで流されたの?」
エイラはコップを二つ置き水を灌ぐ。私の前に水を置くとアミスに話始めた。
私はプレラという村を知らない。おそらくエイラも知らないのだろう。アミスの服装からも豊かではない村とは想像することは可能だが、なおのこと人材は必要となるとも思うがそうではないのだろうか。それとも、そんなことが言えないぐらい食料が足りないのか。決定的な情報が無い為、何が合っているかも分からない。
「私の村では農業で魔法を使うんです」
「魔法を!!」
「ユイラは少し静かにして」
エイラには怒られてしまったが私はアミスが言う魔法が気になって仕方がない。
前のめりで聞くユイラと対照的にエイラは落ち着いた様子で水を一口飲んだ。
「売り物が無い村なので皆で頑張って農業で生計を立てていたんです。私の家も農業で生計を立てていたのですが、私の魔法ではなんだか使い物にならなくて目が覚めたら一面真っ青でした!」
アミスは軽く言っているが完全に海に捨てられてしまっている。
その後もアミスは今での状況を教えてくれた。
どうやら、アミスの家計では代々土の中で育てられる土栗を育てていたこと。しかし、アミスが請け負った土地ではしっかりと育つことが無かった。更には魔法が他の物とは違いそれが原因で追い出され流されたと。
異分子を簡単に排除する効率的なやり方だった。
「それで、アミスは何も育てる事ができなかったんだ?」
エイラが同情するような目を向けるがアミスはカラットした声でアミスに言葉を返した。
「そんなことないですよ。私はあまりお腹の足しにはならないけど青いイチゴなら少しだけできましたよ。立派には出来ませんけど」
そんな前を置き言いアミスは懐から小さな巾着を出し、掌に青というより黒い小さな果実を見せてくれた。