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59話


「うぅううー」


 ユイラが頬を叩いたからだろうか眠っていた少女は体を先ほどよりも更に丸め円を作った。布が無くなったことにより寒くなったのか体をふるふると震わせている。

 二人は意思疎通をしたのか同時に猫みたいな子だと頭の中で思っていた。

 エイラは棒を置き、少女の長く伸びた髪を顔から避けると小さな鼻が現れ、小さく口を開けていた。ユイラの方はつつくのをやめ、柔らかい頬を軽くつねる。


「おーい、朝ですよ」

「お昼だけど」


 エイラの優しいツッコミに無視を決め、ユイラは更に声を掛けた。


「おーい、人の家で寝るなよー」


 大きな声を出せば起きるだろうが、耳元で優しく囁くようにユイラは声を掛けた。

 頬をつねられ声を掛けてなお少女は起きる素振りをしない。余程深い眠りに付いているのだろう。

 細い腕に引き締まったウエスト。腕よりも少し太い足は、見るだけで心配になりそうだった。


「おーい、ご飯食べるから起きろー」

「ぐぅー」

「エイラこの子現金だ」

「やめてあげなさい」


 エイラに優しくたしなめられユイラは少女の体を起こした。

 本当にお腹がすいたのだろう。体が軽く、私の力でも簡単に持ち上がる。よくみたら隣の箱の食べ物にも触れられてないし、我慢してたのだろうか。


「もう起きて!」


 ユイラは両脇に手を立ち上がった。


「うぅ、あといっこー」


 何やらブツブツ言っているがエイラがしゃがみ込みユイラは少女を動かしエイラの背中に少女を預けた。

 長い髪は少女の背中を覆い隠し垂れ下がっている。


「取り敢えず、家に戻ろう」

「そうね。本はいつでも探せるからね」


 エイラが少女を背負いユイラは建付けの悪くなったドアの隙間を広げる為足早に歩いていった。

 すぐ隣にある家に付き少女を台所の椅子に寝たまま座らせると、糸で引っ張られるようにおでこを机に強く当てた。


「痛そう,,,」


 エイラは他人事のように言葉を洩らしながらエプロンを着た。直ぐにコンロの火を付けフライパンを温める。ユイラはそんなエイラをニンマリと見ているだけだったのでエイラからの冷たい目線が届いた。


「ユイラは手伝って」

「はい」


 ざらついた音を立て椅子を引きエイラの隣に並んだユイラは冷蔵庫か ら卵を二つと瓶に入った牛乳を取り出した。牛乳と卵を混ぜたものを平たい更にいれエイラに渡した。

 エイラはそれを受け取り食パンを浸していく。


「ユイラ、砂糖とバターだしといて」

「はーい」


 ユイラは再び冷蔵庫を開けバターを取り出した。次に床下に貯蔵している砂糖を探したがユイラは成果を上げず床下の蓋をした。


「砂糖などなかった」

「そんな神妙に言わなくても。まぁ、蜂蜜だしといて」

「はーい」


 沢山ある蜂蜜の瓶をエイラの近くに置いたところで、激しく盛り上がる音が聞こえてきた。その音と共に香ばしい芳醇な香りも漂い始めた。


「ぐぅー」

「熊だろうか」


 エイラの冗談にユイラは乗り、喉を鳴らし先ほどの音と似た音を出した。

 盛り上がる音は食パンを入れた時にピークを迎え、空間が熱狂していく。国で一番人気のあるスポーツもこのくらい盛り上がるのだろう。


「あといっこ」


 消え入りそうな声が後ろから聞こえ、振り返ると彼女が涎を机に垂らし薄目を開けていた。



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