40話
配送馬に乗っている乗客はぞろぞろと降り固い地面に足を付いた。出た先は太陽の届かぬ閉鎖的な空間。中は広く危険も感じない。周りを見渡すと配送馬の馬の頭側に大きな扉があった。
「門を開けますので下がるようお願いいたします」
丁寧な言葉使いで国兵が声を掛けた。ユイラは配送馬と同じ速さで足を後ろに引き下がっていく。足裏にある整った道路はどれほどお金が掛かっているのだろうか。大きな扉の上から延びる長細い鉄の塊は何なのだろうか。エイラの隣に並びドアが開くのを待つ。
どのようにこんな大きな扉を開くのだろう、少人数では私の家の高さ程ある大きな扉を開けるのは不可能に近い。
そんなことを考え周りを見ていたら二人の国兵が左右の壁についているハンドルを握った。国兵は力を込め回していくと私たちがいる場所がギリギリと音を立て始め、扉の中心に一線の光が入る。その光は次第に広がり太くなり、喧騒を運び込む。
門の先に広がる世界は私の想像をはるかに超えていた。目の前を通る通行人の服装は彩、華やかな者もいればシンプルな服装に綺麗な靴、華奢な女の子が丈に合わない服を着ていた。
あの丈に合わない感じ私と似てる気がする..
「ユイラ、あの子は長ズボン履いてるから」
「だから?」
ユイラの見ている先を確認しエイラはユイラが考えてそうなことを言った。何故かその時顔を少し赤らめていた。
「ユイラは半ズボンの時が多いからその,,,」
「要は履いてないように見えて目のやり場に困るんだよ」
「ユイラこんな変態置いて帰ろう」
死んだ魚のような、見下すような目をしエイラはガイスを睨んだ。暖かくなり始めたとは言えこの空間は少し温度が下がったのだろう。先ほどより風が冷たく感じた。
「いや、なんでだよ。お風呂とか一緒に入ってるじゃん」
「それとは別なの。そんなんじゃミツネに嫌われるよ?」
「難しい....」
「そこは真面目なのか」
ミツネには変だけど大丈夫と曖昧に返されたがどうやらエイラは大きいTシャツに短パンは好みではないらしい。前から注意は受けていたがあの解放感と楽さを考えるとやめられないものとなっている。特に夏場は。
「そんなことより早く行かねーと時間無くなる。今のうちにスケジュール立てちまおう」
ガイスは時間の正確さや判断が早くこういった時に頼りになる。王都の有名な工房に受かるのも納得だ。試験監督もしっかりと見ているんだな。
ガイスはメモを取り出しスケジュールを書く準備を始める。
「私の用事は最後でいいから先にエイラの用事からだね」
正直私の用事はあまり重要ではない。今日買えなくても一週間ほどまてば入手することはできる。
「私は時間決まってるし、なんならもう直ぐだから早く終わるよ」
「まぁ、元々はガイスの用事しに来たんだから好きに使ったら?」
「いいのか、ユイラ初めての王都だろ?」
「まぁ、時間はかかるけど一生来れないわけではないから別にいいよ」
ガイスの細かい思いやりはずっと変わらない。偶に先走る時もあるけど、なんだかんだ周りを見て助けを出す。ミツネもそんなガイスを好きなんだと私は勝手に思ってる。
「門が完全に開くまでもう少しお待ち下さい。それと、最近スリなどが多発しておりまして祭りなどはございませんが十二分にご注意下さい」
門の近くにいた国兵が私たちに向かって声を出した。人数が少なくあまり大きな声を出さずとも聴こえるはずだが、その声は大きくどこまでも伸びて行きそうな....
「ねぇ、エイラ後ろに並んでる人たちも王都に?」
「そうみたいだね。ラッキーだったね前で並べて」
私たちの背後には長蛇の列ができており中には荷物が配送馬からはみ出したものもあった。
「それでは開門いたします。前方に十二分に注意をし前へ歩き出してください」
国兵の声が伸びて行き私たちが乗ってきた配送馬が動き出す。
「ほら、行くぞ」
ユイラとエイラはガイスの背中を追い大きな門をくぐった。そして、ユイラは思ってしまった。
門から見ていた景色は王都の1ピースでしかなく今、目の前に広がる光景は数え切れないほど細かくピースが組み合わさり広がっているのだと。
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