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4話 幼馴染と弟


 時期は4月中旬。春が終わりを告げに来るその時に生まれた子供はとても可愛かった。暖かな晴れた日に生まれ、とてもほのぼのとしていたが、突然扉が開く。

 先程の花の香りが漂う、部屋から一転激しい温度の夏がやってきた。


「はぁぁ、はぁ、産まれたのか!!」


 息を切らせながらドアに手をつき、酸素を取り込む男は短い髪にガタイがよく、緑のつなぎを着てた。腰の位置でつなぎの腕を結んで、ゆっくりとベットに歩いてきた。


「シズミさんおめでとうございます」

「ありがとう、ガイスくん」


 シズミさんに暖かく迎え入れられたのは私達と同い年のガイス・コカライである。ユイラ、エイラ、ミツネ、ガイスはこの村の同い年であり顔見知りだ。いや、仲がいい。

 特にガイスはミツネが意中の人であるため、日夜頑張っている。


「この子が妹になる子か....」

「ならねーよ」


 冷めたような声でガイスを否定したのはミツネの弟コージだった。

 コージの外見は父親譲りの黒髪であり、背も二つ上のガイスと同じぐらいと、身長が高い。性格は母親譲りの落ち着いた雰囲気を持っているので、村の中でも密かに評判が高い。


「よう、弟。妹ができて大変だと思うけど頑張れよ」

「勝手に弟にすんな」


 コージは頭をなでるガイスの手を払いのけサイドテーブルの水を勢いよく飲み干した。二人は別に仲が悪いわけではない。ただ、合わないだけだろう。


「あ!私もう行かないと」


 壁に掛かっている時計を見ると既に11時を示していた。12時から魔物清掃が入っているので急がなければならない。

 思ったより大きな声を出してしまったのか、皆がこちらを向いた。しかし、そんなことを言っている暇はない。


「コージまだ店にサンドイッチ残ってる?」

「残しておいたよ。一度家戻るなら後で持ってくよ」

「助かる」


 なんて、できた子だ。コエラ家はパン屋さんを営んでおり、偶に隣町からも買いに来るほどの人気店だ。今日は午前中だけコージが店番をしており、一つサンドイッチを残しておいてくれたみたいだ。


「じゃあ、シズミさんゴーガさん、また今度しっかり伺わせてもらいます」

「いえ、こちらこそ。こんなにも高価なクッション貰っちゃって、ありがとう」

「いえいえ、自家栽培ですから」


 何故か、周りの人に引き笑いをされるが時間がやばい。森に入れる時間は限られる為、一分でも時間を無駄にしたくない。


「じゃあ、エイラ、ミツネ、ガイス、また今度。コージあとでお願いね」

「わかった」

「気を付けろよ」

「夜にミツネと行くね」

「わかった」


 ドアを向きながら返事を返し、私は走り始める。

 既に太陽は高い位置に当たっており、辺りの畑にも人が何人か出ていた。朝から落ち着く暖かい気持ちになったからか、足が軽く、いつもより早く進める気がする。

 まぁ、そこまで家が遠いわけではないけどね。私の家は村の一番端にあるから、少し遠く感じるだけだ。

 走りながら畑を通る時、昨日の夜に切った植物を見たが、さすがにまだ葉は生えていなかった。


「えっと、リュックと証明書と袋と水筒と、手袋!」


 必需品をリュックに詰めたところで、ドアが二回なった。コージが来たのだろう。支度が終わったので、家を出るとコージが紙の袋で包まれたサンドイッチを持っていた。


「ユイ姉これでいい?」

「うん、ありがと。今度ちゃんとお返しするね」


 サンドイッチの代金、銅貨3枚を渡し村から東側にある幽遠の森に行く。


「一枚多いけど?」

「配達代」

「そう...」

「じゃあね」


 リュックの紐をわき辺りで縛り揺れないように気を付ける。サンドイッチが崩れないように早歩きで足を進め、森を目指す。

 森に入れる時間は、12時から2時までと2時間しかない。掃除で1時間以上掛かってしまうので実質探し物ができるのは1時間もないのだ。それが更に遅れると、小さな穴しか掘れなくなる。


「残して置いたって言ったのに、出来立てじゃん」


 パンの香ばしい匂いに、卵とソースの匂いが紙の包みから匂う。朝ごはんを食べ損ねた胃の中がぐーっと鳴り早く食べてしまいたい。大体食べるのは向こうについてすぐなので、冷めない為にも早くいかないと。

 30分同じペースで歩き、森の東入り口に着いた。

 

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