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20話 朝の散歩


 アヒージョを食べ終え、2人で屋根の上に登った。少しだけニンニクの中が口に残っているが、あまり不愉快ではなかった。

 アイラはずっと暗い空に広がる小さな光を数えている。


「星って何個あるんだろうね」

「どうですかね。緑とか赤とか本当色々ありますよね」

「ほんとほんと」


 世の中の人は空に光る物体を星と呼んでいる。私が住んでいるソーユ村には星の物語はないが他の地域には存在すると聞く。それも恋の話とか。

 世の中はそれほどに恋に心を奪われ時に皆を驚かせることもある。アイラのお相手のカーラ王子とはどのような人なのだろうか。どれほどアイラに魅了されたのだろうか。

 ユイラの隣にいるアイラは先ほどから体が揺れ瞼が落ち始めている。半日森を走り、知らない土地や人と過ごすのはさぞ疲れたのだろう。ゆっくりと上下に揺れる体のふり幅は次第に大きくなり、倒れそうになる。ユイラが肩を掴み受け止めた時にアイラは目を覚ましはっとした。


「もう、寝ましょうか」

「うん」


 微睡に片足を入れながら帰ってくる返事は女性としての色っぽさが豊富に含まれており少しだけドキリとしてしまう。まだ家に残っていたお父さんのシャツを貸したのが間違いだった。

 緩やかな服は隙間を開け白い肌が露わになる。きわどい胸元にはだけた肩はとても艶やかで、これを使えば他国の王族も取り入れそうだった。

 だからこそ、荒れた手や青黒く変色した爪先、固い髪などが如実に彼女の品を落としていると痛いほど感じる。

 

 二人はその寝室まで歩いていった。ユイラが蝋燭を付けアイラを誘導する際も、彼女は生まれたての小鹿のようにたどたどしく足を動かし歩いている。

 ベットの上に倒れ込むように寝そべった時、今までで一番俊敏な動きでアイラが上体を起こした。


「ユイラちゃん!!」

「はい!」


 ユイラはアイラの大きな声に肩を上げ蝋燭の火を消しそうになってしまった。恐る恐る振り向くと、アイラは不思議そうに何度も何度も手に体重をかけベットを押す。


「何、このベッドちょーふかふかなんだけど」

「あ、それは私特製のベッドです」

「え、作ったの?マジヤバいじゃん」


 なんだか口調が砕けたのかおかしくなったのか、アイラの口調は不思議な言葉遣いに変化していた。

 

 前にミツネの新しい家族にあげたのはクションだったが、何度も葉が生えてきたら規模を倍にしてベットを作ることに決めていた。正直このベッドにしてからあの硬い板の上では寝たくない。

 多くの者が葉を入れクッション代わりに引くが、私が作ったのは葉を切ったら綿になると、何とも不思議な麻草まそうでありその感触は心を奪われるほどである。

 ベッドの長方形の型は木の板で周囲を覆いフワボウの糸で結んだ、完全特注品である。所謂世界に一つのベットなのである。

 王族のベットにもこのふわふわ感は負ける気がしない....多分、恐らく。


「凄い、私これで何時間も寝ちゃいそう...」


 アイラはその一言を良いながら眠りに付いてしまった。

 まぁ、私も完成したい日夕方まで寝てたけど。さすがにもう慣れた。明日はアイラにはお昼時まで眠っていて欲しいから好都合だが。

 私も疲れたし、明日ミツネの所朝に行かないとだから今日は寝よ。

 ユイラはサイドテーブルに蝋燭を置き、優しく息を吹きかけ火を消した。

 暖色が消え冷えは何故か少しだけ肌寒い。既にベッドで寝ているアイラの横に行き、一枚しかない上掛けを引っ張り包まる。アイラも何故だかギュッと離さず上掛けを握っているので、少し近づいて眠りに付いた。


 外の鳥たちに起こされ目を開けると外はまだ薄暗かった。いつもなら二度寝を楽しむところだが今日はそういうわけには行かない。ヌクムクとベッドから重たい体を抜け出させ台所に向かう。

 水を一杯飲み外に出ると朝日が顔を出し目に刺激を与えた。ゆっくりとした足取りで歩き始め朝の澄み切った空気を堪能する。既に活動を始めた歳の高い人たちは美味しそうにお茶を飲んでいた。


「珍しいねユイラちゃん」

「おはようございます」

「おはよー」


 どこまで行ってもまったりとした空気が漂っていたが、20分歩いたところで少しだけ活気が溢れてきた。大きな街に出る時に通る場所。弁当や服屋、日用品など商店が立ち並ぶ場所にやってきた。店は開いていないが中に灯りは灯っている。店の準備をしているのだろう。

 私はその中に流れる香ばしい匂いをたどり目的地に着く。ドアを三回叩くとドアが開く。


「どうしたのユイ姉、こんな早くに」


 ドアが開き顔を出したのはミツネの弟のコージだった。黒のエプロンに身を包み上から見下ろしてくる。いつから、見上げられるから見上げるに変わったのだろう。


「一日ミツネ借りていい?」

「姉ちゃん今日お昼からだけど、俺が代わりに出るからいいよ」


 なんて、良い弟なのだろうか。話が早くて助かった。


「今度、お礼するよ」

「期待しとく」

「任せて」


 コージも朝の仕込みに忙しいだろうから、簡単に用事を済ませユイラは先ほど歩いてきた道に踵を返した。

 

 

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