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103 小旅

「なんの音?」


 ベルエットは不思議そうに顔を傾け玄関を見た。

 ユイラがゆっくりと玄関の方に足を向け、ドアの下に挟まった封筒を持ち上げた。封筒は緑の桜を模った封蝋で閉じられていた為、送り主については予想できた。


「国がどうしてユイラに?」


 王国の象徴である緑の桜が付いており、ベルエットも送り先が分かったようだ。

 王国から手紙が来るのは年初めだけであり、その他で手紙が来る事はまずない。何か伝える事があるとすれば使者が事情を説明しに家まで来るそうだ。


「なんだろう..悪い事でなければいいけど」


 通常では起こり得ない状況に困惑しつつユイラは封筒上部をゆっくりとちぎっていった。


「ベルエット..これ」


 両手で持った紙が震えたままユイラは紙をベルエットに渡した。


「あーこんな話もあったね」

 

 ベルエットは1枚目の紙を確認して興味をなくしているが、問題は2枚目である。


「これ、王都に行くってことだよね?」

「それはそうでしょう」

「今から?」


 ユイラが疑問を投げかけた時には既にベルエットはリュックを背負っていた。最近商店街で買ったであろう小さな茶色いリュックを。

 しかし、それを一度おろし真面目な顔でユイラを見つめた。


「このリュックじゃ入りきらないか」


 あまりにも真剣な顔にユイラは喉の奥から出てくる何かを顔を赤くしながら必死に堪えた。


「だ、大丈夫。は、入るよ」


 ベルエットはいったい何円お金をもらえると思っているのだろうか。わざわざ王都から手紙が来るということは小切手になる可能性が高いのだ。金貨で渡すことはまずないだろう。


「それはそうと、王都にはどうやっていく?」


 以前、エイラとガイスで王都に行った際には配送馬を使ったが果たしてこのお嬢様は体力はがいる配送馬に乗るのだろうか。


「森を抜けていく」


「森を抜けて?」


「そう、幽遠の森を抜けて行く」


「冗談だよね?」


 ここから王都に行くのにも時間がかかるというのに幽遠の森を抜けて行くなんて前代未聞だ。

 おそらく下層地区だけを歩いても王都にはつかない。ベルエットがどれだけ強くても…


「いや、私ここの村に来るの森を抜けてきたんだから大丈夫だよ」


「そうかもしれないけど、それはベルエットが1人できたからで私を連れてとなると話が変わるでしょ」


「それはそうだけど、ユイラはそこまでボンクラじゃないでしょ?」


「それでも、魔法は使えない」







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