102 ベラリエラ捕獲作戦?②
ベルエットは常時潜る研究の話をした。
簡単な結論としては、ラムネで使用されていたビー玉では耐久性がなく深く浸水してしまうと割れてしまったそうだ。よって、硬質なガラス玉を生成することが必要となった。しかし、現代の技術力では到底水深3000メートルには到達できない。いや、それよりも....
「その実験って人間の体は影響受けないの?」
あくまでも研究としてできる限り耐久度は上げて臨んでいるはずだ。そんな、ビー玉が海の底では割れてしまうのなら人間の体は活動できなくなってしまうのではないだろうか。
「普通はそうなんだろうね。でも、これは母が検証したものなんだ」
ベルエットは苦虫を噛み潰したような表情を出さないよう心掛けるが、既に奥歯は強く噛みしめられていた。
「私にもできる魔法なんだけど、体全体に魔力を被せて身体は海の圧力に耐えれていたんだよ。だけど、ガラスは安物ではダメだった。かなり高価な耐久性を持つ素材が必要だった。私にはそんなお金はないから試したことはないけどね」
私には高価な素材というものがどの程度の値かは分からなかった。幾許かのお金はあるだろ。しかし、ベルエットが高価というものがどの程度の値段がするのかが分からなかった。
「お母さんはその高価な素材を買わなかったの?」
純粋な疑問だった。
この実験はベルエットのお母さんが検証したと言っていた。世界でも名が知れ渡る魔法師だ。資金も潤沢にあるだろう。
「母はそんなものに興味なんてないんだよ」
「どういうこと?」
「母は元から深海に潜る事に興味はなかったんだよ。ただ、研究や実験をすればお金がもらえるから動いていただけで、依頼主、資金提供者から高価なものを実験の為に購入は許されなかったんだ」
「だから、実験は終わった...」
「そういうこと。依頼主も深海での目新しい発見は自身の権威になると思ったんだろうけど、資金力も碌にないから母の依頼料でほぼ底が付いているんだよ。魔法が身体だけ健全なら使えると思っている典型的な馬鹿だね」
ベルエットはいつも以上に饒舌に事の詳細を話した。
母の実験の結果がうまくいかなかった事への優越感なのか。それとも、依頼主の傲慢な考えへの苛立ちからなのか。また、そのどちらでもない何かなのか。私には分からなかった。
朝食の皿が綺麗にさらわれ、スズメたちの声も静まった穏やかな時間に玄関の方にカタンっと軽い音が聞こえた。




