本編後
「自分から会いに行くなんて言われたらもう逃げようがないですよね~、圭君先生」
「そうそう。それにしても熱烈ね~。美奈ちゃんも大人しい顔してはっきり言うわね~」
三住先生と早瀬先生がからかうように言った。
その言葉に私と圭介君は真っ赤な顔になった。
「でも、美奈ちゃんはまだ高校生だしね、手、出しちゃダメよ」
三住先生のその言葉に圭介君はより真っ赤な顔になった。
「まあ、いつかはくっつくとは思ったけどね。意外と早かったよね~」
「そう? こんなもんじゃない?」
三住先生と早瀬先生は二人でそう話していた。
それに対して、圭介君は慌てるように言った。
「つ、付き合ってるってそんな……!」
「あら、じゃあ美奈ちゃんの事好きじゃないの?」
「そ、そんな事は……」
圭介君は口を手で押さえて横を向いた。
「美奈ちゃんだって圭介君の事好きよね~?」
「えっ、あっ、はい」
行き成り聞かれて思わず、私はそう答えてしまった。
すると、圭介君は私の方をばっと向いた。
「えっ、本当?」
圭介君のその言葉に答えたのは私ではなく、三住先生だった。
「当り前じゃない。そうじゃないと態々、会いになんか来ないでしょう?」
確かにそうだけど、そんなにきっぱり言われると恥ずかしかった。
「まあ、いいじゃないですか。三住先生。取り敢えず、二人っきりにしてあげましょう?」
「えっ!」
私と圭介君が同時に驚きの声を上げると、三住先生はそんな私たちを横目にニッコリ笑った。
「そうね。じゃあ、お邪魔にならないように出ていきましょう」
そう言って、三住先生と早瀬先生は出ていった。
すると、やっぱりと言うべきか沈黙が流れた。
気まず過ぎて何を言ったらいいのか分からなくって、もじもじしていたら圭介君に話しかけられた。
「ねえ、美奈ちゃん」
「な、何?」
私は酷く驚いた声を出しながら答えた。
「あのさ、本当に俺の事好き?」
その言葉を聞いた瞬間、私はボンという音がしそうなくらい真っ赤になった。
「美奈ちゃん?」
圭介君は私の顔を心配そうに覗き込んできた。
「……き」
覗き込んできた圭介君に呟いた。
「えっ、ごめん、聞き取れなかった」
「……好き」
精一杯の今の気持ちをたった一言に込めた。
「マジ……?」
圭介君はそう言った。私が圭介君の方を向くと、圭介君は真っ赤な顔をして口を押えていた。
「ヤッバイ。すっげー嬉しい」
圭介君はそう言うと私を抱きしめた。
私も嬉しくて、抱きしめ返して尋ねた。
「ねえ、圭介君は私の事好き?」
「うん、大好き」
多分、私たちは今、世界で一番幸せだと思う。
私たちはその日から付き合いだした。もちろん、学校側には内緒で。
と言っても、三住先生と早瀬先生はもちろん知っているけど。
「しっかし、美奈ちゃんって恋愛とか奥手そうなのにね~」
「と言うより、美奈ちゃんって今まで恋とかってした事あるの?」
「……無いです」
「じゃあ、これが初恋だったんだ。」
私は真っ赤な顔をしながら頷いた。
「もう、本当に初々しくて可愛いわね~。圭君先生にはもったいないくらいに」
「ちょっ、そんな事言わないでくださいよ!」
「でも、本当に年の差カップルだけど見えないわよね~。圭介君なんか完全に学生にしか見えないしね」
「ひどっ!」
圭介君は間髪入れずにそう言ったけど、私は確かに年の差カップルには見えないよねと思った。
圭介君はカウンセリング室では偶に白衣を着て眼鏡をかけている。
この時は少し、いつもより年上に見えるけど、ふんわりと笑った瞬間はやっぱり、圭介君だな~って思う。
なんで眼鏡をかけてるのかって言うと、童顔過ぎるかららしい。実際、目はすごくいいらしい。
白衣は仕事の関係で着てるだけらしいけど、あんまり似合っていない気がする。
なんでか制服が似合っていて、思わず笑みが零れそうになる。
一緒に学生をしていたらこんなふうに並んでたのかな? とか思いながらも考える。
きっと、私が恐怖症でなかったら、圭介君がカウンセラーでなかったら、今みたいにはならなかっただろうし、出会えなかったと思う。