『転落』あるいは、宇宙から、落とされただけ・・・
サングラスをかけた男:
「すみませんでした。話を、引っ張ってしまいました・・・
『クラマンス』という、主人公がいるんです」
プリンセス:
「カミュの小説の主人公のこと?」
サングラスをかけた男:
「お嬢さん、そのとおりです」
ケン・アキレス:
「そのタイトルは、何だよ?」
サングラスをかけた男:
「『転落』です」
プリンセス:
「転落?」
サングラスをかけた男:
「はい、そうです」
ケン・アキレス:
「それで?俺たちが、笑うと思った?」
サングラスをかけた男:
「いえ、プリンセスさんの質問に答えようと思っただけです・・・」
プリンセス:
「どうゆうこと?」
サングラスをかけた男:
「プリンセスさん、操作パネルをお持ちですよね?」
プリンセス:
「これ?」
サングラスをかけた男:
「そうです。ケンさん、お酒、飲みますか?」
ケン・アキレス:
「えっ?ジイさん、このタイミングで、酒を飲もうっての?
酒なんて持って来るわけねえだろ?大丈夫か?」
サングラスをかけた男:
「それが、この部屋にあるんですよ。クラマンスが飲んだ銘柄は
残念ながら置いてませんが。あなた、ご存じですよね?
とぼけなくて良いんですよ。
宇宙ステーションでも、Zに殺された25名のクルーたちは、
酒や、紅茶を飲んでいましたから」
プリンセス:
「私は、いらないわ・・・」
サングラスをかけた男:
「ケンさん、いつものアレを飲みますか?」
ケン・アキレス:
「・・・」
(サングラスをかけた男は、部屋の隅にある冷蔵庫に酒を取りに行き、
グラスを2つ、盆にのせて戻って来た・・・)
プリンセス:
「それは?」
サングラスをかけた男:
「ウィスキーです。『ザ・タートル』という銘柄です。
さあ、どうぞ・・・」
ケン・アキレス:
「ああ・・・」
(ケンとサングラスをかけた男は、グラスのウィスキーを一気に
飲みほした・・・)
サングラスをかけた男:
「さて、クラマンスの様に酒を飲んだところで、話を続けましょう。
プリンセスさん、操作パネルのYとミサイルマークを押して下さい」
プリンセス:
「押せば良いのね?ちょっと待って・・・押したわ!」
サングラスをかけた男:
「お二人とも、Yのカプセルをよく観ていて下さい・・・」
ケン・アキレス:
「・・・」
(ウィ~ン、ウィ~ン、ウィ~ン、ウィ~ン、ガチャ・・・ドン!)
(冬眠カプセルの背面が左右に分かれて、大きな穴が見えている)
プリンセス:
「さっき、ケンが寝てた場所に、穴が空いてるわ・・・
どうして?」
サングラスをかけた男:
「そこですよ、そこからクルーは、寝ている間に『転落』したのです」
プリンセス:
「転落?それが言いたかったの?」
サングラスをかけた男:
「まどろっこしくて、すみません。実は、転落・・・じゃなくて、
単純に、宇宙へ落下させられた、つまり、彼らは、落とされたのです」
プリンセス:
「ひどい・・・」
ケン・アキレス:
「・・・」
サングラスをかけた男:
「ご存知のように、この冬眠カプセルは、すべて偽物です。
重力誘導型小型核爆弾用に作られた、発射装置の土台なんです」
プリンセス:
「小型核爆弾?」
サングラスをかけた男:
「宇宙から、地球へ向けて、落とすだけで良いんです。
真上から、ものすごい速さで落ちて来るので、地上からは、
撃ち落とせません。仮に撃ち落とせても、上空で核が爆発するので
地上の人間は誰も助かりません・・・
これが、覇権を狙う、亀の国の最終兵器『亀のイナヅマ』です」
プリンセス:
「亀のイナヅマ・・・」
ケン・アキレス:
「・・・」
・・・
・・・
・・・
・・・
・・・




