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依頼人再びやって来る
彼女が去ってから1週間後だったと思う。午後に玄関のブザーが鳴った。
「どちら様ですか?」
「仕事の依頼の件で来ました」
カメラの画像には、2人の人物が立っていた。上司と部下、お断りしたはずの依頼者たちだ。私は、さすがに門前払いをするほど薄情な人間ではない。とりあえず、インスタントコーヒーを提供して帰ってもらおうと決めた。
「どうぞ」
「お邪魔します」
2人の依頼者はそろって会釈をした。なぜ、私の事務所へ?他にも潰れかけた廃業寸前の探偵事務所なら沢山あるじゃないか?他所へ相談すれば良いのに。そう思いながら、簡易テーブルのイスにお座りいただいた。今日は、1対2でテーブル越しに向き合っている。部下の彼女は、相変わらず私好みの雰囲気を醸し出していた。
「どうもすみませんでした」
「えっ?どうかされたのですか?」
「依頼の件です。場所を移動して欲しいと
お願いしてしまいまして」
「いや、そのことは別に構いませんよ。もう
済んだことですから、気にしないで下さい」
「この子から報告を受けまして、改めてこうして
今日、お願いに上がりました」
「えっ?」