真の目的とは?
私は、これ以上、このプリンセスという人物に
何を説明しても無駄だと悟った。読者の皆さん
ならば、分かって下さるだろう。私は、敵国の
スパイではないのだと。いや、分からないよ?
そんなことを言わずに、どうか私のことを信じて
この物語の続きを読み進めて欲しい
私は、昔、F(Z)という留学生の雑用を
アルバイト感覚で手伝っただけの小市民だ。
そして、その当時、向こうの国からやって来た
留学生の女と私は同棲し、彼女を恋人にしていた
時期があっただけのこと。その女は、ご存知の
ように、私がベイビーと呼んでいた
ベイビーは、卒業とともにF(Z)と帰国した
ベイビーは、確かに、帰国前にいつかやって来る
訪問者を助けてあげて欲しいと、私に語った。
しかし、それはスパイ同士としての約束なんか
ではない。恋人としての、個人的な約束だった
と思っていたのだ。甘いよ?向こうはお前に
恋愛感情など最初から持ってなかった。
お前を利用するために仕方なく恋愛関係を
偽装したんだよ?・・・読者は常に、かしこい
そして、今、プリンセスと語る依頼人(女)が
上司が人質交換の件で、打ち合わせに行っている
間、私と2人だけになったのを利用して、彼女
自身の本当の正体を現したのだった・・・
民主主義連合の職員ではなく、敵国のスパイだと
告白したのだ!そして、この私のことも
同じだと思いこんでるのだ!
私は、この流れに乗ることにした。くれぐれも
私がこの先プリンセスに対して仲間のように
振る舞う猿芝居を、最期まで真に受けないで
いただきたい
私は、少なくとも、民主主義者だ
自分の国で不当に干され続けた人生を歩んで来た
それは決して人生とは呼べない失敗者の歩み
私は 民主主義連合が 真の民主主義とは
呼べないと感じる社会を生きて来た
だからといって 私は 敵国側の人間ではない
地球に 私がこうあって欲しいと願う
民主主義国は
私の人生にはなかった それでも
私は 銀河系内民主主義社会の一員だ!
たった1人の民主主義者だ どれだけ地球の
社会が腐敗していようが
銀河系のどこかに
私の仲間がいると信じている
つらい時は 自分にそう言い聞かせたこともあった
銀河系のどこかに
必ず
民主主義的なエイリアンがいると信じている
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
というわけで、私は独裁国家群のスパイでは
ない。しかし、相手の出方を探るために
あえてプリンセスの話に乗ろうと思う
ベイビーの真意は分からなくても、敵の真の
目的を明確にさせるべく、キワドイ道化師を
精一杯、演じていこうと思うのだ・・・




