国家反逆罪
徹夜をしてしまった・・・
当時の卒業論文を読みながら朝を迎えた。
インスタントコーヒーを飲んで、眠気覚ましにしようと思っていた矢先に、玄関のブザーがなった。
カメラに、2人の人物が映っている。昨日の依頼人たちだ。打ち合わせは昼過ぎだと思っていたので、困った。
昼までゆっくりしたかった。
少し戸惑いながら聞いた。
「ちょっと早すぎじゃないですか?」
依頼人(男):
「すみません。どうしても上の方から急ぐようにと
命じられまして。お許し下さい」
「じゃあ・・・どうぞ・・・」
本当のことを言うと、この依頼を断りたかった。しかし、どうやら民主主義国連合政府全体の意向ということが分かったので、断ることができなくなっていた。依頼人は、様々な書類や依頼の手紙を私の前に並べて見せた。
事態が、急を要してるらしい・・・
私は、依頼人たちに、インスタントコーヒーと茶菓子を用意した。
依頼人(男):
「ありがとうございます。あまり気を使わないで
下さい。さっそく説明に入りたいと思います。
よろしいですか?」
私は、眠たかった。コーヒーをひと口すすった。
「ええ。どうぞ。始めて下さい」
依頼人(男):
「この地図をご覧下さい。この地域の近海で
戦闘があり、敵軍がそのまま上陸しました。
ここに3万人の市民がいます。ほぼ都市が封鎖
されました。われわれ民主主義連合は、3万人の
市民の生命と安全を保障するように、敵国に
申し入れを行いました」
「今、そこでの戦闘は、どうなっているん
ですか?」
依頼人(男):
「市民を救出するため、都市に軍を投入する作戦を
考慮中でしたが、市民に犠牲者を出すわけにも
いかず困っていました。敵国も、近海での戦闘が
五分五分であったため、それ以上の進軍はでき
ません。現在、この地域では、ギリギリの状態
が続いています。われわれの代表団が、市民の
即時解放を要求しました」
「そうですか・・・」
依頼人(男):
「しばらくして、敵国の司令部から、この文書が
届きました。昨日、説明した人質交換の要求文書
です。交渉人は、あなたです。司令部のZと
いう幹部のサインがあります。おそらくこの
人物が過去にわれわれの国に留学していたFと
いう男で間違いありません。
あなたが過去に依頼を引き受けていたであろう
人物です」
「そうですか・・・司令部のZは、やはり
Fだったんですね。なぜ、僕なんですかね?
すみません、昨日と同じことを言ってしまって。
交渉人など誰でも良くないですか?
人質を連行するだけでしたよね?それなら、
僕ではなくても・・・」
依頼人(男):
「あなたのおっしゃる通りです。敵国司令部の意図は分かりません。しかし、あなたを指名して来ました。本題ですが、こちらをご覧下さい」
依頼人は、写真を並べ始めた。
「これは?」
依頼人(男):
この3名は、われわれ民主主義連合で働いている者たちです。敵国が、この3名を、国家反逆罪として逮捕するように、敵国内で指示を出したのです。
そして、あなたに対しましては、この3名の内の1人を逮捕して、その人物の身柄を奴らに引き渡すようにとの要求が来ました。あなたは、敵国が要求したわれわれの職員を逮捕しに行き、彼を連行する。そしてある場所で、敵の司令部に彼を引き渡す。
その時点で、3万人の市民は即時解放するとのことです」
「その人は、敵に引き渡された後、どうなるの
ですか?」
依頼人(男):
「分かりません。おそらく奴らに処刑される
可能性があります」
「国家反逆罪?」
依頼人(男):
「お気づきでしょう?
われわれの国の反逆罪ではありません。
敵国にとっての国家反逆罪ということです」
「・・・」




