海を制する者は 世界を制する
玄関のブザーがなった。Fが立っている。卒業論文の続きを書くために来たのだ。
ベイビーがFを部屋へ迎え入れ、冷たい飲み物を出した。
Fは、一気に飲みほすと「さあ、始めよう!」と
どなった。【①現状の世界】【②マイナス時間を走らせる】は完了しているので、今日は第3章と第4章を打ち合わせる予定だ。
【③海を制するものが、世界を制する】
何となくお気づきだろうと思うが、アキレスと亀を海中で競争させるという戦術だった。②がマイナス時間の座標軸をアキレスに限界まで走らせる作戦であるならば、③は、アキレスと亀に海の中を泳がせて、その座標軸、つまり進行方向を深さ、海底をゴールにすえる戦術である。もちろんアキレスは、水中メガネも酸素ボンベもつけることは禁止されている。海水パンツだけはいて、素潜りすることだけが許されるのである。
Fは、得意そうな顔をして、いつものように紙を1枚取り出して簡単な図を描き始めた・・・
「先に、海底にたどりついた方が、世界の
海洋覇権と海洋資源を両取りする!」
Fは、ベイビーに、ニヤッと笑い、意気揚々と告げた。
このFという男は、世界平和を構築するという意味が分かっていないとしか、私には思えなかった。
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↓ 進
↓ 行
↓ 方
↓ 向
↓
(START!!!)
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【海のなか】
(アキレス)
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↓
↓
↓
↓
↓
↓
↓
(GOAL!!!)
【海底】 (亀)
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Fによれば、海洋覇権と海洋資源は、ワンセットと
して転がりこんで来るらしい。つまり領海を拡大しながら海底資源を採掘する。これを地球1周しながら無限に吸収することにより、食料、天然資源はもちろん、圧倒的な軍事力を構築できるというのだ。
「君は、平和を望んでいるのか?
それとも、今ある覇権国を打ち負かしたいのか?
つまり民主主義国のリーダーを破壊したいのか?」
私はFに質問しないわけにはいかなかった。ベイビーに通訳してもらいながら、私は2人のやりとりを見守った・・・




