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Fから紹介された女

Fから頼まれた代行の仕事は、どんどん増えていった。次から次に、Fの本国からやって来る短期滞在者たちの世話をすることになったからである。利益は急速に上昇した。これで何とか生活をつないでいける、そう思えた時、私は初めてわずかばかりの安心感を覚えることができた。

Fの国から来た短期滞在者に関する全ての依頼は、Fを窓口として行われた。ある日においては、Fがいきなり女性同伴で私の事務所に来たことがあった。



F「イツモ アリガトウ タスカッテ マス」




「いや、別に。仕事だから当たり前のことですよ」




F「コノ ヒト ハ ワタシノ クニノ 

  トモダチ デス」




Fが連れてきた女:


「こんにちは。初めまして」



彼女はFと同じ国から来ていた留学生だった。Fは日ごろの感謝を込めて、この女性を私のアシスタントに使って下さいと紹介した。


その日から、いつの間にか彼女は、私の助手のような働きぶりを見せてくれるようになった。そして自然に、私の部屋に住みつくようになったのである。


ここから先は言わずもがな、何となくの恋愛関係になっていった。私は、食事の世話から掃除まで彼女にしてもらえるようになり、今まで生きて来た中で、他人から愛を受けることの幸せを初めて感じることができたのである。今から思えば、それはハニートラップだったと思う。当時の私は舞い上がっていた。新しくともに生活してくれる女性を得て、無我夢中でFから依頼される仕事に没頭するようになった。彼女は信じられないくらい言語が発達していた。だからFから受けた雑務のアシスタントとしても不自由はなかったのである。


休みの日には2人でドライブや小旅行を楽しんだ。しかし今から振り返れば、私とその女の行く先々にFか彼女の知り合いに出会うことが多々あったことを、もっと考えるべきだったのかも知れないと思う。私は考えが甘かった。自分の欲望が満たされればそれで良いと、単純に思っていたのだから。きっと偶然ではなく、何らかの活動の一環だったのだと今の私なら判断できる。


私とFの間に亀裂が入るのは、Fの帰国が1年前に迫ったころからだと思う。ちょっとした意見の違いから、その亀裂は決定的なものとなり、その依頼を最後にFと私の彼女は卒業式を終えて帰国した。それ以降、2人からの連絡は1度もない。


最後の依頼とは、Fの卒業論文の代筆の依頼だった・・・

私とFは、卒論の内容のことで激しく異論をぶつけ合い、彼女が間に入ってやっと口論が収まるほどの

泥試合を毎回繰り返した。最終的に、私がFの意向を聞き、それをアレンジして代筆した論文は、無事通過し、卒業となったのであるが・・・


きっとあの時のことが、今回の依頼に関係しているのだと、私は確信せざるをえない・・・



今、その卒論のコピーを、私は手にしている。

Fが話をして、分かり難いことは、アシスタントの彼女に間に入って通訳してもらう。私が、要所要所で、Fの論述の観点に違和感を覚えると、私はその都度、彼女に間に入ってもらいながら、Fの考え方を修正させようと努力した。しかしFは、信じられないくらい、突然感情的になり、自分の観点こだわり続けた。そして私が常識的にいくら説得しても、考えを修正するつもりはないと返事をしたのだった。


その卒論の内容を簡単に記しておきたい。

これから先の人質交換にも関わっているみたいだ。


Fの考え方の原点がここにあるかもしれない。

よく分からないが、そんな気がしている・・・


タイトルは・・・


F(Z?)がこだわり続けた部分とは・・・


夜が明けるまで、論文を読み、当時の思い出に

ひたり続けた。

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