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2.にじファンサービス終了の混乱

◆1 2chスレ――【小説家に】にじファン【なろう】

◆2 【重要】にじファン/NOS サービス終了のお知らせ(2012/7/4)

 にじファンの特徴を挙げるとすれば、とにかく「規模が大きい」ことだろう。

 にじファンというサイトは当時の二次創作を語る上で、非常に強い存在感を放ちながら、その実存在していた期間は僅か2年にも満たない。しかしその僅かな間に投稿された作品数を見れば、3月の大規制までの間に2万4000作、サービス終了までにさらに4000作と膨大な数にのぼる。

 1年あたり1万4000作超が投稿されていたのだ。2019年の1ヵ年にハーメルンで投稿された二次創作の合計(2020年11月現存数、チラ裏・R-18除く)は1万2000未満であり、いかにその勢いがあったかということが窺い知れる。(尤もここには単純なカラクリもあるが……)

 ここではそんなにじファンにあった作品はどう見られていたのかと、その膨大な作品が生み出した各所への影響を見ていきたい。




◆1 2chスレ――【小説家に】にじファン【なろう】


 ハーメルンというサイトはにじファン崩壊の混乱期、作る人が当時の2chスレの意見を容れつつ、その基礎的な部分を形成していくこととなる。運営情報にある◆ZjXNknkVmkという文字列は、当時使用していたトリップの名残だ。

 そうした事情によりハーメルンは単なるにじファン住人の移住としてではなく、当時の2chスレ内の雰囲気というものを色濃く反映した、一種独特な空気が形成されていくこととなる。


 にじファンというサイトの運営期間と比べると、スレが存在していた期間はさらに短い。スレが【投稿サイト】小説家になろう152【PC・携帯対応】から分離して成立したのは2012年1月末のことであり、僅かに5か月程度なものである。文芸書籍板では当時なろう関連スレが増えすぎという批判にさらされがちだったこともあり、小説家になろうスレとの分離はかなり遅かった。

 当時の住人がにじファンというサイトをどう見ていたかと言えば、大体以下のようなものだ。


日間なんか掘ったらスコップ爆発する

原作好きなら読まない方がいい

原作××でアンチなしは諦めろ

作者の願望突っ込んだオリ主ばっか

まぁにじファンだもの


 決してにじファンアンチスレという場所ではない。アンチスレではないが基本的な認識はひどい作品ばっかりというものであり、その中からまだ比較的マシな作品を見出そう、なんて雰囲気だ。

 スレが出来た当初、既読原作の累計100位までをレビューするという猛者がいたので大体の傾向を読み取ることができる。にじファンでポイント的に人気だった原作としては、三大被蹂躙原作などとも揶揄される「ネギま」(20作)「ゼロ魔」(11作)「なのは」(10作)、2011年冬アニメでヒットした「IS」(9作)、やや落ちるが「恋姫」(5作)「Fate」(5作、ただクロスでの存在感は強い)といったものが挙げられる。


 にじファンで人気となる作品は、「神様転生」で「蹂躙クロス」的な「チート」を貰った「オリ主」が「劣化原作キャラ」や「踏み台転生者」相手に「捏造」的な「アンチ」「ヘイト」の「SEKKYOU」して「ハーレム」がなんかできているもの。

 日間ランキングはテンプレ出来上がっている原作に、神様転生で能力貰うパート書いただけのものが期待値で上がってくるような有様。ランキング空白になってると思ったらまた盗作やらかしたらしい。ひどい内容の作品に批判的な感想を書いたところで、すぐに削除されるだけで無駄なこと。

 ……そんな認識こそ持ちつつも、ブックマークの更新通知が来るって時点で機能面では他サイトなんて比べ物にならず、中にはまともな作品だって存在するという思いも強く、新しめの原作はにじファンが一番盛り上がっている、等といった実情もあり、馬鹿にしつつもそれなりに楽しんでいた感じだ。


 2012年7月4日、スレは【小説家に】にじファンサービス終了【なろう】に移行する。




◆2 【重要】にじファン/NOS サービス終了のお知らせ(2012/7/4)


 2012年7月4日、にじファンのサービス終了が告知された。全二次創作は7月20日公開停止、今後小説家になろうへの投稿を認めないとするものだ(その後何作か投稿可能とはなったが)。

 にじファンというサイトの利用者が多く、作品数も3万2000作と膨大な数に上っていただけに、この発表は大きな混乱と問題を引き起こしていく。有名作にまつわる騒動としては某型月二次が再投稿され、すぐに削除されるなんてことが起きた。

 作品が移転していった場所としては、企業運営だとpixivにTINAMIが挙げられる。現在でも運営している通り規模が大きく安全とみなされたものの、これらのサイトの小説機能はあくまで短編用のものであり、連載作品の多いにじファンだと、作者にしろ読者にしろあまり適しているとは言えなかった。


 最も激烈な反応を示していたのは、連載作品の投稿にも適していたArcadiaだろう。発表後は1日と経たないうちに何十作と移転があり、しかもその中には注意事項に抵触する作品も相次ぐなどして、厳しい感想を受けてそっと削除していくなどという光景が多々見られた。またそうした読者や信者集団が活動報告で理想郷批判を繰り返していたこともあり、感情的な対立も生まれていく。

 とはいえ当時の理想郷も理想郷で問題を抱えていた部分がある。「読者様」の存在だ。Arcadiaというサイトはルールとして、厳しい感想を許容することを作者に求めているサイトである。それ自体はいいのだが、問題はそうしたルールを根拠として、程度が低いと見做した作品に異常な攻撃性を発露する(またその指摘自体が的外れだったり、単なる誹謗中傷に堕していることもある)集団が存在していたのだ。そんな彼らに対する一般的なユーザ達からの侮蔑と、「一緒にするな」とばかりに呼び分け的なニュアンスが含まれる語が読者様である。

 理想郷はにじファン崩壊後は一時期賑わいを増したものの、時期的に管理者が不在がちであったことはどうしようもなく、年を追うごとに投稿は減少していった。サイトを訪れてみると、受け入れられて好評を博した作品も数多く現存しており、往時の賑わいを偲ばせる。


 その他に連載に適しているとして有望視されたのがシルフェニアなのだが、受けた影響という意味ではここが一番大きかったかもしれない。そもそもが「投稿頂いた作品に不備がないかをチェックした上で、管理人が手作業で編集・更新作業を行っています」なサイトに大量の移民が押し寄せ、「事前に掲載サイトの作品を削除してから」「全角2500文字以上で」「禁止:アンチ・ヘイト色の濃い作品」という規定も無視した作品を大量投下、さらにアクセス数の急増にサーバー移転を余儀なくされている。

 また発表があった当初こそ緊急メンテを余儀なくされたが、最終的ににじファン作品を数多く受け入れたと思われるサイトとしてアットノベルスも忘れてはならない。運営実態が怪しいなど騒動はあったものの、その後サイト自体はそれなりに賑わっていた(2013年初頭くらいまではハーメルンより大規模)のだが、こちらは2015年の末頃に閉鎖した。

 時期は前後するがにじファン閉鎖発表で開設された暁もここで挙げてしまおう。管理人の投稿作の傾向もあって、ある作風に寛容な場所と目されたサイトであり、当時のにじファン総合評価2位を筆頭にランキング上位にあった作品が結構な数現存している場所である。


 混迷を極める状況において、スレは最早にじファンにある作品を語るなんて場所ではなかった。お気に入りだった作品の移転情報の交換や、にじファンの思い出話はまだいい方である。読者様的な人とやり合ったり、移転先で起きてる事件をヲチしたり、作者のイタい割烹について語ったりと、まぁなかなかにひどかった。

 そんな状況が変わる切っ掛けとなったのはにじファン閉鎖発表から1週間後、2012年7月11日夜のことである。

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