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推しの人生が残酷すぎるんだけど…

すみません!テストやら実習やらで投稿遅れました!楽しみにしていてくれた方がいたら本当に申し訳ないです。

またこうしてかなり遅れることがあるかもしれないので、その時は「あー、新本はテストか実習かな〜…(遠い目)」と思ってください。


それでは本編、どうぞ!

「嘘だろ…」と、前世の俺は信じられないと言いたげな顔をして、漫画を読みながら言った。

漫画は、今までドーラ達を奔走させてきたフローがドーラに敗れるというシーンで、ドーラの渾身の一撃でフローは倒れた。

その様子を遠くで眺めていたダスクのリーダー、ハルジオがフローを「弱い奴はいらないんだよね」と言って、殺そうとする。

前世の俺は「やめろやめろ……」とか「ハルジオてめぇ……」とか独り言を言っていた。

主人公のドーラは、「やめろよ!!元はと言えば、お前がその子を勧誘したんだろ!?なのに、どうして殺そうとすんだよ!!」と言っていた。

やっぱり、主人公は優しかった。

けど、そんなドーラの訴えも虚しく、ハルジオは、フローにナイフを振り上げる。

ドーラはフローを助けようとするも、ドーラがハルジオに勝てるわけがなく、ドーラはハルジオが魔法で出現させた植物に縛り付けられてしまう。

ちょうど、その時だった。

「な……なんだよこれ……」と、戦いの場に居合わせてしまった哀れな青年が声をだした。

前世の俺は思考回路がゲスなのか、それとも、ただのフロー大好き人間なのか、「よし、フロー!そいつを囮にして逃げるんだ!」と言っていた。

待て待て……前世の俺……ゲス過ぎないか……?

まぁ……気持ちは分かるけど……

フローは青年を見ると、「逃げて!!ジョン!!」と大声をだした。

「ふぅん……目撃者は殺すのがダスクの決まりなのに……やっぱり……フローはダスクに相応しくないよ」

「やめて……友達なの……殺さないで……」

涙目になりながらも訴えるフローに対して、「駄目。目撃者は殺すのがルールだから。」とゴミでも見るみたいな目でハルジオは言った。

「フローも殺さないといけないけど……まずは……」

ハルジオはちらりとジョンを見た。

ジョンは何がなんだか分からないと言いたげな顔をして、ハルジオやフローを見る。

「ジョンだっけ?ごめんね。目撃者は殺さないといけないから」

そう言って、ハルジオは魔法で瞬間移動して、ジョンにナイフを振り上げた。

次の瞬間だった。

ドーラの攻撃を受けて疲労困憊(ひろうこんぱい)になっていたフローが、ハルジオと同じように魔法で瞬間移動して、ジョンを庇うように抱きつき、ハルジオにナイフで刺されていた。

フローの着ていた白いワンピースが血で染まる。

「え……?え……?」

状況が掴めなかったジョンは、ただ混乱することしか出来なかった。

「逃げ……て……ジョン……」

痛みに呻き、血を流しながらもフローはジョンにそう告げる。

「なぁ……なんだよ……これ……なんなんだよ……」

「何をしているんだ!!」

近隣住民の通報により、駆けつけてきた魔法警察が到着した。

ちょうど、ドーラが自分の身体を縛り付けていた植物をとり終えた時だった。

ハルジオの姿は既にない。

きっと、魔法警察に顔を覚えられる前に逃げたんだ。

「君は……フローレンス・トワイア?」

どうして魔法警察がフローの名前を知っているのかは分からない。

魔法警察は、フローが血まみれになって倒れていることに驚いていた。

「ポールさん!応急処置を!このままじゃ、フローレンスが死ぬ!」

ドーラはフローに駆け寄り、しっかりと腕の中に抱いた。

そして、混乱しているジョンに代わって必死に「大丈夫か!?フローレンス!!しっかりしろ!!今、治癒魔法をかけるから!!」と叫ぶ。

ポールと呼ばれた魔法警察は、「いや……このまま治癒魔法をかけたとしても……この出血量じゃ彼女は死ぬ」と冷静に告げた。

「そんな……」

ドーラは悲しみに打ちひしがれながらも治癒魔法をかける手を止めることはなかった。

魔法警察がフローのことを知っていたのは、フローがダスクの一員だということを知っていたからか……ん?待てよ……確か……ダスクは正体不明のテロリスト集団だったはずだ。

魔法警察にダスクの一員だとバレてしまったら、リーダーのハルジオに処刑される……なら、どうして今までフローは処刑されなかったんだ?

「犯罪者に情けをかけるな……」

「でも……本当に悪者だったら……友達を助けたりしない……きっと……フローレンスが孤児院の子供を殺したのだって……何か理由があったんだ……」

途切れ途切れになりながらも、ドーラは必死に言葉を紡いだ。

待て待て……フローが孤児院の子供を殺した?孤児院の子供をあんなに大切にしていたフローが?

俺はドーラが何を言っているのか理解できなかった。

「人殺しに理由も何もあるか!!もしも理由があったら、犠牲になった人の魂はどこにいく!?地獄に落ちるっていうのか!?」

「違う……そうじゃない……」

「違わないだろう!!君が言っているのはそういうことだ!!地獄に落ちるべきは犠牲になった人じゃない!!犯罪者だ!!」

ドーラがポールに言い返せないで押し黙っていると、フローがドーラの腕を掴んだ。

「地獄行き……の……馬鹿の……戯言(ざれごと)だと……思って……聞いて……」

口から血を流して、ヒュー、ヒューと苦しそうにすきま風のような息を吐きながらフローが言った。

「わかった……聞くよ……」

「ドーラ!!犯罪者の言葉に耳を傾けるんじゃない!!」

ポールが叫ぶ。

「うるさい!!フローレンスは犯罪者である前に一人の人だ!!ポールさんがなんと言うと、オレはフローレンスの話を聞く!!」

有無を言わせない強い意志を感じさせる目で、ドーラはポールを睨みつける。

ポールはドーラの気迫に圧倒されて、「少しだけだからな……」としぶしぶ了承した。

「あなたが……はじめ……て……」

「え……?」

「人って……言ってくれた……の……ドーラ……が……はじめ……て…………やっぱ……り……あなたに……なら……言って……も……だいじょぶ……かな…………ゲホッ!! ッハ……ハァ……ハァ……」

「やめろ!!喋るな!!」

喋りながら血の塊を吐いたフローを見て、ジョンが叫んだ。

「ごめん……なさい……今……言わない……と……私……もう……死ぬ……から……」

そんなフローに、ジョンが言い返す。

「まだ死ぬって決まったわけじゃないだろ!?とにかく、もう喋るな!!」

「ジョン……聞いてやってくれ……」

フローを救えなかったことが悔しかったのか、ドーラは顔を歪めてジョンに言う。

「なんで……俺……何もわかんなくて……」

「全部オレが説明する。フローがしてきたことも……だから……今はフローレンスの話を聞いてやってくれ……」

「頼む」と言って、ドーラは頭を下げた。

ドーラの真剣な様子を見て、ジョンは「分かった」と言ってドーラの頼みを聞いた。

「私は……ずっと……化け物って……言われて……育った……お姉ちゃん……にも……いじめ……られて……だから……孤児院の……友達……も……お姉ちゃん……に……殺された……」

涙ながらにフローはドーラに話す。

ドーラは一言も聞き漏らすまいと、フローの言葉に必死に耳を傾けていた。

「ちょっと待て……お姉ちゃんに殺された?現場を見たのか?」

ポールがフロー言葉に横槍を入れる。

「言われた……の……お前の……友達……殺し……た……って……」

「それじゃ何の証拠にもならない。お前は姉に罪を(なす)り付けるつもりか?」

「証拠……なら……ある……よ……お姉ちゃんの……部屋の……引き出し……の……下から二番目の……開きに……」

「本当か?」

「本当……私の……執事の……ルパートが……調べて……くれた……」

「ルパート」と言った時のフローは、どこか優しい目をしていた。

そういえば……ルパートの姿が見えないな……どうしてルパートがいないんだ?まぁ……それはあとで考えるとして……今はこの映像を見ないと……

正直、フローが死ぬシーンをまた見たくなかった。けど、今後に関わることだから見ないといけない気がする。

漫画を意識してみると、ちょうどフローがドーラに姉のアドレイドのことを話している最中だった。

「お姉ちゃんは……いつも……いつも……私の……ことを……いじめて……きた……私の……大事なもの……たくさん……壊された……たくさん……たくさん……とられた……お父さんも……味方……して……くれなかった……」

「そっか……フローレンスのお父さんは……あまりいい奴じゃなかったんだな……」

「信じて……くれるの……?」

「これから死ぬ人間が嘘をつくはずがないから。誰がなんと言っても、オレは信じるよ、フローレンス。」

フローはくすりと笑って、ドーラの頭を撫でる。

「フローで……いいよ……堅苦しい……のは……嫌い……なの……」

「そっか……」

「うん……あなたに……なら……フローって……呼ばれても……いい…」

「ありがとう。」

ドーラは頭を下げた。

「ドーラは……変な人ね……私……もっと……早く……あなたに……会いた……かった」

「俺も……もっと早くフローとこうして話したかった。ごめん……守れなくて……本当に…」

「ごめん」と、ドーラが言おうとした時、フローが人差し指をドーラの口につけた。

「それ以上は……いい…………あのね……ドーラ……私……力しか……なかったの……」

「え……それは……」

「魅了の……魔眼……私の……能力……私には……他に……なかった……お父さん……には……化け物って……言われて……お姉ちゃん……には……濡れ衣……着せられて……どうすれば……いいか……分からなくて……逃げてたら……ダスクが……私を……拾って……くれた……私の……力を……必要と……してくれた……」

めちゃくちゃに、途切れ途切れになりながらもフローは言葉を紡ぐ。

その言葉からは、化け物扱いされる元凶になった能力を受け入れて、必要とされたことがどれだけ嬉しかったのかがよく分かった。

「そうだったのか……」

「ドーラ……伝言……頼んでも……いい?」

「あぁ、いいよ……」

「それ以上はやめろ!!」

まだフローのことを信じきれていないのか、ポールが言った。

「私……どうしても……伝えたい……の……」

自分の意見を聞き入れてもらえなかった駄々っ子みたいに、目に涙の膜を作って、フローが言った。

ポールは何かを察したのか、舌打ちをして「危険なことだったら許さないからな……」と言った。

フローは安心したのか、弱々しく、優しい笑みを浮かべる。

「ルパートに……私の……執事に……今まで……支えて……くれて……私の……執事に……なって……くれて……ありがとう……って……」

「わかった。」

そして、フローは今まで話さなかったジョンの方を見るために、ゆっくりと顔を横に向けた。

「ジョン……私……ね……」

「っ……嫌だ……やっぱり……聞きたくない……これで……最後になるんだろ……だったら……聞きたくないっ……」

今まで涙を堪えていたせいで、肩を震わせていて喋ることの出来なかったジョンの目から、大粒の涙が(こぼ)れた。

「じゃあ……勝手に……話す……ね……ごめん……なさい……どうしても……伝え……たい……から……」

「もう……勝手にしろよ……俺は……聞いてやらないからな……」

そう言って、ジョンはフローから顔を背ける。

そんなジョンを見て、フローは眉尻を下げて、困ったように笑う。

「ジョン……私が……はじめて……孤児院に……来た時……の……こと……覚えて……る?」

「一人で勝手に話すんじゃなかったのかよ」

「気が……変わっ……ちゃっ……た……ねぇ……答え……て……」

ドーラの治癒魔法のおかげで延命されているとはいえ、フローがずっと喋ることことができるわけじゃない。

そのことを理解したのか、ジョンはフローの話に付き合うことにしたようだ。

「……覚えてるよ。柵の前でずっと俺達のこと見てたから……みんなで何回遊ぼうって言っても……『パパに怒られるから』って言って……なかなか一緒に遊んでくれなくて……それで……ちょうど夏の暑い日だったから……俺が水かけたら……怒って庭に入ってきて……仕返しに水かけてきて……それで……一緒に……遊んで……」

「そう……だね……あのね……ジョン……私……あの時……魅了の……魔眼……開眼……して……パパに……嫌われ……はじめた……時……だった……の……」

「うん……」

「私は……すごく……救われ……た……家より……も……あった……かくて……優しい……場所……だった……私に……居場所を……くれて……優しさを……くれて……ありがとう……って……みんなに……伝えて……」

「そういうことは……もっと……早く言えよ……!」

洋服の袖で涙を拭いて、泣いてることで喉が刺激されて、うまく呼吸をすることができずに、しゃくり上げながらジョンが言う。

「わた……し……は……すな……お……じゃ……ない……から……」

フローの言葉がだんだん、続かなくなってきたのがわかる。

もう、長くないんだ……

「ど……ら……ドー……ラ……」

弱々しく手を震わせながら、フローはドーラの方に手を伸ばす。

ドーラはフローの意図を察して、その手を掴む。

少し力を込めて、フローは手を握り返した。

「なんだ?」

「人……って……言っ……て……くれ……て……嬉し……かった……よ……あり……が……と……」

そう言って、フローは微笑んだ。

目を薄らとあけて、弱々しく涙を流しながら微笑むフローのその顔は、可愛いというよりは綺麗と言った方が正しかった。

ドーラの手を握っていたフローの手から力が抜けて、パタリと地面に落ちる。

「フロー……?」

ドーラの呼び掛けに、フローが応えることはなかった。

ただ、安らかな笑みを浮かべたまま、事切れていた。

次回もフローの父親はどクズなので、気分が悪くなったらブラウザバックでお願いします。


夏本番なので、皆さん、熱中症・脱水症状にお気をつけてください!

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