気になる人。
こんちゃーす
私には、最近気になる人がいる。
いつも死んだ魚のような目をしていて、この世界に諦観している様なそんな人。
彼の名前は笠原高成。
私の通う月詠学園の2年生、同学年だ。
去年は違うクラスだったが、今年は彼と同じクラス。
このチャンスを是非ともものにしたい。
と、考えているうちに1ヶ月。
会話の一つもないままに過ぎ去ってしまった。
そもそも私には彼に話しかけて不自然じゃないだけのきっかけというものがない。
それに基本彼の周りには彼の友人と思しき人たちが集まっている。
彼は目つきも悪そうに見え友人なんかも多くはなさそうだが、それでも寄ってくる人は必ずいる。
去年から同じクラスの剣道部所属、容姿も爽やかイケメン、テストは毎回学年一位の秀才、藤山 佳。
接点なんてまるでなさそうだが、多分この人が一番仲が良さそうだ。
そしてもう一人が今年からの付き合いの川上 照。水泳部に所属しているインテリ系だ。
少し天然気味だけど面白い人。
そして今はいないみたいだけどもう一人、よく一緒にいる人がいる。
神原 千煕。
この子は女子なのによく絡んでいる。
よく聞くのが彼女が生粋のゲーマーだかららしい。
一番の難関は男友達同士の会話に割って入ることじゃない。
彼女が彼を落としに掛かる前に関係を築く事だ。
たまに彼と彼女を見た時の二人の距離感なんてほぼ0だ。
彼は何も気にしていないのだろうが、彼女はチラチラ彼の顔を伺う様なそぶりを見せたり、頬を赤らめたりしている。
完全にその気があって近づいている。
女の勘ってやつだ。
というかそもそも彼自身顔は整っているし、成績も学年二位を毎回保守している。
藤山さんや川上さんと仲がいいのは秀才として少し通ずるものがあるのだろう。
それに何かと物覚えも良く、一度始めた事は一発で完璧にこなしてみせる。
そういう人だ。もちろん彼を陰から狙っている輩は多い。
神原さんだってその一人に他ならない。
いや、話のネタがある程度尽きない分、私なんて目じゃないだろう。
仮に話のネタが尽きたとしても友人という立場は崩れない。
だから私は彼と話をする為、まずは彼の周辺を探ってみることにした。
それの第一手が尾行。
断じてストーカーとかじゃない。
友達の一人になりたいが為の仕方がない行為。
決行は今日の放課後。
彼は美術部だが今日はオフの日だ。
多分そのまま家に帰るだろうから、そこを付けてみよう。
恋する乙女、如月 結衣。いっきまーす!