#5 チガイ
「...だからぁ!俺は強い勇者で!国でも有名なの!」
「私の知る限り真に強い勇者は1人しかいない。貴様のような自称最強の勇者は腐るほど見てきた。自惚れるな」
洞窟を出て帰路を辿る中、2人の口争いは絶えることがなかった。
「じゃあ俺の魔法を見せてやるよ!あそこの岩に打つから!」
俺は少し遠くにある岩を指差し言った。
「いいだろう。貴様の力見せてみろ」
いちいちムカつくやつだな!あとで吠え面かくんじゃねぇぞ!
岩に手をかざし炎系の魔法を唱える。すると、某魔法測定器(#3推奨)のように岩は轟音をあげ粉々に弾け飛んだ。
「...」
アリスはそれを黙ったまま、まるで見下すように見ていた。
どうだ!?これでこいつも一丁前の口聞けなくなる...
「この程度か...」
...へ?
彼女はそう言い放つと、近くにあった岩に手をかざす。すると彼女の手から彩雲とは比較にならないほどの豪炎が彼女の前方を包み込み、激しい爆発を生じさせた。
「うぉ!?」
それは俺が目をほぼ開けられずかろうじて彼女が見えるくらいの爆風を伴った。
「これで分かったか?貴様がいかに非力であるか」
爆煙が消え、目をこすり彼女を見る。否、真に見たのはその後ろ。彼女が放った魔法は目測100mくらいの距離を粉微塵にし、そこには燃えた岩や木の残骸しか残されていなかった。
「あ、あ...」
俺は空いた口が塞がらず、彼女とその残骸を交互に見ることしかできなかった。
「最強の勇者であるために」
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