表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/21

ドナンは悪巧みを諦め、スドは額のラクガキにやっと気付く



この辺りで目立った報告が上がっていたモンスターは以上。そう聞いて、ノーワンアトライトはガッカリした。今日は引き揚げる事にする。


行きと同様第三騎士隊を先頭に、ドナンと後ろを歩いて行く。



狼は肉が臭く食えないというので、毛皮だけ剥いだ。アヤナが一頭辺り1分程で処理、元自衛官でレンジャーだった経験が活きている。



ノーワンアトライト「「「強いモンスが湧きますように!!」」」


祈ってから残った肉は森に投げ込んだ。


そんな祈りは迷惑だ!…そう言いたかったが、ドナンやガニル達は言えなかった。



熊とデビ熊は第三騎士隊に馬車を取りに行かせて運ばせた。数台の馬車が騎士隊の中央付近をガラガラ進んでいる。




サド「どうだ?レベルアップした感じするか?」


リッカ「微妙。レベル2のスキルとか使えないし…今夜は熊鍋?いやステーキ?熊のラードって美味しいとかなんとか…。」



ミココ「あの程度だったら、一人百匹とか狩らないとダメなんじゃない?…弱い。」


スド「そうだな。でも1レベ上げるのに百匹だったとしたら、元のレベル95迄はどんだけ掛かるんだか…。」




聞き耳を立てていたドナン達は、顔を強張らせている。話しぶりからして、彼等の基準で最高はレベル95、今がレベル1…最弱らしい。


なのに今日の彼等の戦果は、ドナン達が半年前に赴任して以来今日までの戦果を上回っている。


(ヤバい。なんか機嫌悪そうだし…。)



ガニル「いや皆様は凄ウデです!素晴らしい!」


ドナン「これで近郊の農場への被害も収まる事でしょう。お手柄ですな!」


ドナン達は、道々、引き攣った笑顔でノーワンアトライトを褒めるが、彼等は面白く無さそうに頷いていた。



-----------



やがてドナン邸に辿り着いた。

2km程先に街、更に2km先にゼークス城が有る。



サド「そう言えばドナン。」


ドナン「はい!何でしょう。」


精一杯の笑顔で、ドナンは返事する。



サド「そこのスドがアリエータを気に入ってな。彼女はスドの婚約者になった。」


ドナン「はぁ!? 」



スドは一歩前に進み出ると、自分ではイケてると思う表情でドナンに笑いかけた。いや確かに端麗な美貌なのだが。


(こ…この額に目の落書きがあるガキが!? )




リッカ「それ、どういう事か解る?」


ミココ「もはや彼女は私達の身内。」


いつの間にか、リッカとミココが左右に居てドナンを間近から見上げている。彼女達は微笑んでいるが、くっきりした目が笑っていない。



姉妹なのか?人間離れした美貌の少女に挟まれ、嬉しいような。しかし、人間離れした彼女達の戦いぶりを見たドナンは素直に喜べない。


ドナン「貴女様方の身内…。」



アヤナ「そう。手出しする者は、我々ノーワンアトライトの敵って事になるね。」


ドナン「ヒィ!? 」


真後ろからアヤナの声。

振り返ると彼女も間近に立ち、ドナンを美しい笑顔…笑っていない大きな目で見つめている。


ドナンは大きく頷いた。

この警告が解らない程のバカでは無い。




スド「一筆書いて貰いましょう。なに、簡単な文書で結構です。万一貴方の部下が勝手に動いても、貴方の責任だと解る内容ならば…。」


(このふざけた落書きのガキは、なんで王宮の官僚みたいに如才無いんだ?)



そこにスドが身を寄せて囁く。


スド「僕達が王都に行ったら、何か理由を付けて呼び戻してあげますよ。だから…ね?」


ドナン「ぜ、是非お願いします!それが叶うなら無理に婚姻など…お願い致します。」


(鞭と飴…本当に如才無い。)



ドナンは例の計画を完全に諦めた。


こういう奴を敵に回した結果が都落ちだった事を、思い出したのだ。



-----------



ゼークス城



第三騎士隊にデビ熊2頭、熊1頭を持って来させる。残り熊1頭は狩に付き合ってくれた礼代わりに、ドナンにくれてやった。


辺境騎士団員達「「「これを…貴方方が?」」」


ゼークス「素晴らしい!これじゃドナン子爵も形無しだな!たっぷり報奨金を出さねば!」



更にインベントリから狼の毛皮を取り出して渡す。ついでに、ドナンがアリエータに手を出さない約定書もゼークス辺境伯に渡した。


ゼークス「え!? 今朝頼んだ事が、もう文書に!?」


(ちょ!?優秀過ぎない!?)



スド「恥ずかしながら我々は、まだこちらの文字が読めません。どうか内容をご確認下さい。」



何度も礼をいうゼークスに笑顔で返礼する。狩りの後とて城のお湯を使わせて貰い、その後集合してクラン会議を開く事にした。



-----------



サドの部屋 居間



賓客用だから各部屋に居間と寝室が有る。扉で分かれており居間には暖炉が有って、お茶くらい飲める様になっている。


会議はサドの部屋で行う事になっており、風呂を出たメンバーは順次集まって来た。



アヤナ「ふぅ~っ!やっぱバスタブにお湯を注いで貰うってのは、慣れないね。」


リッカ「狩の手応えはSS以上だけど、汚れるわ匂いは着くわ、後始末が大変だねぇ。」


二人はジャージ姿で頭を拭きながら、ブツブツ文句?を言っている。色違いのジャージの背中にはノーワンアトライトのシンボルが入ってる。


クラン対抗戦で、勝利クランのみ作る事を許されたお洒落ジャージだ。




ミココ「SSの部屋家具にお風呂有ったけど、他人様の城に設置する気はしない。」


ミココはSS内では装飾・家具制作のスキルを持っていた。彼女の家具類は結構人気で、その売上はクランの資金源の一つだった程だ。


SSでは当然と言うかマイホームシステムが有り、金やスキル次第ではマイデザインの城も持てた。戦闘は最小限参加で、物作を楽しむ人も結構いたのだ。



サド「拠点を決めたら城を建てよう。ミココの風呂は当然として…温泉探さないか?」


因みにリッカは食事とお菓子の制作スキル、アヤナは農場を得意としていた。スドは武器防具制作、サドは建築と男性陣は実用スキルだ。




バタン!

スド「コラ~ッ!誰だ~~っ!? 俺の顔にラクガキした奴は!」


駆け込んで来たスドが怒ってる。風呂場でメイドが教えてくれ、やっと気づいたらしい。



スド「いったい何で書いたんだ!? どうやっても落ちん!…せっかくイケメンに生まれ変わったのに!」


主犯のリッカとアヤナが、ヤバっ!て感じで顔を見合わせる。あれ?…どうやったら落ちるんだ?




スド「あ!お前らか?お前らだな!よくも~!」



あちゃー、という表情でサドは軽く両手を挙げ、肩をすくめてミココを見る。ミココはサドの目をチラ見して、タオルで髪を拭き始める。…今は静観。




リッカ「…………スドお兄ちゃん!」


アヤナ「お、お兄ちゃん~!」


リッカとアヤナが涙目でスドに抱きつく。左右から美少女に抱き付かれ、スドの表情が緩む。



スド「そ、そんなんで、ごまかされないからな!」


そう言いながらスドは二人を振りほどかない。よく見れば両腕にリッカとアヤナの胸が当たってる。あざとい攻撃だ!




リッカ「ほんの、イタズラのつもりだったの!」


アヤナ「私達ワケの解らない世界に来て!ジョークで気持ちをほぐそうって…。」



スド「そ、そりゃ解るけど。だからってだな…。」


リッカ・アヤナ「「ごめんなさい!」」


二人はスドの腕を捕まえて、それぞれ胸に押し付けている。ジャージ越しのノーブラらしく、スドが嬉しそうな顔になってくる。あぁチョロい。




リッカ・アヤナ「「お願い!許して!…お兄ちゃん!!」」」


スド「おに……。」


釣れた!リッカとアヤナの目がキュピーンと光り、両側からスドの耳元に近寄り…。



リッカ「お兄ちゃ~ん。」


アヤナ「許して~!」


トドメに左右からチュッ!とキス。



スドはデレ顔になったチョロい。

いいのかスド!それ消えないかもだぞ!



スド「許…す…。」



リッカとアヤナは笑顔で歓声を上げる。


リッカ「さっすがスドお兄ちゃん!心広~い!」


アヤナ「器大き~い~!」



スド「は…ははは!解ったよ。うん、お兄ちゃんだしな!でも、もうやるなよ?」


リッカとアヤナは神妙な顔で頷いた。


チョロいっちゃチョロいんだが、スドのこういう女性に弱いとこは、クラメンに愛される部分でもある。




ミココ「そろそろクラン会議始めるよ~。」




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ