視点
青年の後ろを歩いていくと、荒れ果てた民家が立ち並ぶスラム街に連れてこられた。
「この辺りでいいかな? 多分【ソト】の者たちに聞こえることもないだろうし。」
と言うと、青年は通りにおいてあるボロい樽に腰掛ける。
「僕らはケガレを殺すために動いてる賢者達と違って、ケガレを本当の意味でハラウ活動をしてるんだ。」
「あ、自己紹介が遅れたね、僕はローグ。この世界をあるべき姿に戻す活動をしている。」
聞いたことのない響きの名前だ。
「まぁ、君はまだ小さいから詳しいことは知らなくてもいい。しばらくは本当のハライの練習をしてからの方がいいんじゃないかな? 運良く僕らですら手に入れられないでいるものを持っているようだし。」
と、言うと口だけが奇妙にニタァっと動き、反射的に目をそらしてしまう。
後ろからビリビリと来るような咆哮が聞こえる。明らかにそれは人間が出せるものではない。と言うより、生物が出せる音量だとは思わない。
耳鳴りがしている中、ぞろぞろと住民が現れる。顔に火傷を負っているものや、四肢が欠損しているものなど沢山だ。
彼らはなにか外見ではなく何かが普通とは違うことに気がつくが、何が違うのかは見当もつかない。
「紹介しようさっき行った通り、新入りのシズメ君だ。彼は何とソトから【ケガレダネ】をとってきた猛者だ。上手く行けばソトの奴らに【ニエ】無しで勝てるかもしれない。」
「さぁ、仲間を増やすためにたびに出よう。速くハラわないと賢者に殺されちゃうかもしれないし、きっとまた奴らはやってくる。わざわざニエを出すのも勿体ないしね。」
完全に俺は混乱していた。何を言っているのかもわからない。ただ、こいつらが父ちゃんを殺したであろうことは理解できた。
コイツラはきっと人の形をした人間じゃない者だ。さっきの違和感はそれだろう。
理性的に考えれば、これだけの敵にかなうはずも無いだろう。
だが、俺は本能のままに、拳を振り上げ油断しきっている青年の頬を殴りつけた。つもりだった。
青年は二本の腕を組んだまま、少しうつむいて
三本目の腕で拳を受け止めた。
「ごめんね、君はイレギュラーなんだ。そんなことが起こるとは我々も思いもしなかった。知ったときは何とかしようとしたんだけど……。作戦を建てないとソトの者たちは強くてね、運良く迎え入れられたけど……出来れば赤ん坊のうちに救ってあげたかったんだけど」
バケモノは俺の拳なんて気にもせずに話し続ける。冷静になった俺は、悪寒が背筋を駆け巡り、叫び声をあげようとするが声が出ない、腰が砕けたように座り込み、頭は処理の限界を超えた。
ぺたりと座り込んだ少年のまたから、フワッと白い湯気が立ち上り、顔は絶望にそまり、目に光はない。
「なれるまでは仕方がない、君にはしばらく不憫な思いをさせるかもしれないが、君のためなんだ」
「とりあえず、またソトに戻られてこっちが被害を出すわけにも行かん、自決されても困るな。ロック、彼を動けないように手と足をハライで縛っておいてくれるか?」
「アラァ、かわいい男の子ね!! もちろんヨォ!!」
と、筋骨隆々の……疑問符はつくが、女。が、少年の口と手に青い光を纏わせる。その後、小屋に連れ入り、キレイにしてくるわと小屋の中から話した。
しばらくして、ツヤツヤの女と、少し萎れたようなイメージを受ける気を失ったままの少年が出てきた。
「若いって、イイわね。」
「あんまりやりすぎて、怖がらせないようにな……。」
やれやれ、といった顔で青年はため息をつく。
「わかってるわよお!! メロメロにして【ケガれモノ】共の記憶を無くしてあげるわ!!」
「お、おう」
青年は完全に引いていた。
シリアスってやだなーと思ってちょっとギャグキャラほりこみました。もとの予定では、優しいロングの髪のお姉さんでオカマさんでは無かったです。耐えきれんかったとです。
結構路線変更もするので、後々矛盾点もでるかもです。