奴隷な彼女のライバルです!(短編版)
連載用に書いていたものを短編にしてみました。サラッとしてます。
初めまして皆々様。わたくしアヴロラ・マレフィクスと申します。
父は国の上官。年の離れた兄は次代の女王の夫。王族に籍を置く、由緒正しき公爵家の令嬢でございます。
そんな私には、有名な婚約者がおります。
名をアルクス・ウィリディスと言い、こちらも由緒正しき侯爵家の長男であります。
彼は巷で話題の人物。貴族界のみならず、庶民の間でも有名人。なぜか?
それは彼が、齢十六にして“性奴隷持ち”だからですわ!
……失礼、はしたなく声を荒げてしまいましたね。以後気をつけますわ。
順を追って説明しますね。
わたくしとアルクスは5歳の時に婚約いたしました。ええ、親同士が決めた、家と家との政略結婚というものです。わたくしも王族の端くれ、国の安寧のために己が役に立つのならと、幼心に受け入れておりました。アルクスも同じだったと思います。
彼はとても整った顔立ちの美少年で、わたくしは彼の隣に立つのに相応しい女性になろうと日々努力をいたしました。
そんな彼がある日、買って来たのです。
奴隷を、買って来たのです。
性奴隷を、買って来てしまったのです!
あれは6歳の時。彼の家に遊びに行くと、紹介したい人がいると言われました。
わたくしは寛容で温和な淑女を目指しておりましたので、快く了承しました。
それが、全ての間違いだったのです。
彼に連れられて来たのは、どこをどう見ても完璧な、超絶美少女!
まるで天使のような柔らかな微笑みと雰囲気は、見る者全てを魅了し骨抜きにしたのです。
かくいうわたくしも女でなければ……いいえ、彼女がアルクスの性奴隷でさえなければ、メロメロに籠絡されていた事でしょう。
それほど、彼女は可愛らしかったのです。
彼は言いました。
「彼女の力になりたいんだ」
わたくしは言いました。
「よろしいのでは」
寛容で温和な淑女を目指していたわたくしには、そう答える他にございませんでした。
時は経ち、わたくし達は十六になりました。
ご存知の通り、当国の貴族の子供は王立の学園に通わねばなりません。
わたくしとアルクスも学園に入学いたしました。
そして、あの女も……。
そうです、あの性奴隷である女も入学したのです。奴隷の分際で、わたくし達と同じ敷居をまたいだのです。
彼は言いました。
「彼女に広い世界を見せてあげたいんだ」
わたくしは言いました。
「よろしいのでは」
高雅で優美な淑女を目指していたわたくしは、そう言う他にございませんでした。
そんなある日、事件が起きました。
彼女が、舞踏会に出席したのです。
当国の舞踏会は、同じ年頃の貴族同士の社交の場。そして女性は己の美を、男性は己の力を誇示する場でもあります。
そんな場に、性奴隷が参加するなど前代未聞。
しかもあろうことか、アルクスは彼女と踊ったのです!
わたくしを差し置いて! 婚約者であるわたくしに見せつけるように!
……これはもう、宣戦布告と受け取りました。
淑女? 温和? 何の事でしょう。
ここまで奴隷女にコケにされて、黙っていられるほど出来た人間ではございません。
だからわたくし、仕返しをしようと思うのです。
ねぇ、あなたならどんな仕返しが良いと思います?
続きは連載で。