夕暮れに飛ぶ鳥の群れ
太陽が沈んでいく時間が早くなった
昔、こどもと行った低い山
そこに出掛けた時は夕暮れ時ではなかった気がする
歩いて20分ほどのところの低い山
登るというより、行く、という感覚の同じような山がいくつか近所にあった
二人だけで、という時間が持てなくて
私は少し疲れていたけれど声をかけた
彼はテレビを見ていたが嬉しそうに上着を羽織り
靴を履いて
手を繋いで歩いていく
山では服が汚れるのも構わず
落ちてる葉っぱや松ぼっくり、どんぐりを拾って
ビニール袋に入れていっぱいになっても
「もっと」「待ってて」
私も一緒に拾っていたが
こどもが拾うのを見るのも嬉しかった
見る、というよりも、彼と向き合う時間が少なくて
もっと同じ時間を過ごしたい・・・
君はどんな顔で拾うのか
君は何が好きなのか
とてもとても知りたかった
面白い形をした石があると
「ママー!」
大きな声で教えてくれたり
黙々と真剣な顔で土を触る
小さな時は甘えん坊だったのに
だんだん、我慢するのを覚えていくばかり
障害を持つきょうだいがいるから
私が君に淋しい思いをさせていた
それでも君は弟のことを助けてて
もう帰る時間だと教えるように鳥が鳴き
君は空を指さして鳥の群れだと私に囁いた
「先頭の大きいのはママ、後ろはこどもたち」
暗くなってきて山をおりて
帰りには商店街の小さな店で
「内緒だよ」
と、二人でお団子を食べたんだった
学校を通り
校庭の鉄棒で逆上がりを見てほしいと
「ほら、見て!」
何度も見せて
私が笑いかけると君もとても嬉しそうで
目が回って落ちちゃって
尻もちつくんじゃないかってくらいに繰り返した
逆上がりが出来る君をほめてもらいたかったんだろうね
だけど、私が君自身ともっと話して向き合う時間を求めていたんだ
あの時、夕暮れの時間を過ごして気づかされた
もしも世界中の誰もが君の敵になったとしても
私は何も聞かず、絶対に君の味方をするって思ったよ
親も育てられる
急に親にはなれない
悔やみ始めたらやり直せばいい
そんなことを教えてくれた
長い時間過ごすことはない
どこか特別な所に行くこともない
朝かおを見て挨拶して
肩に触れて「いってらっしゃい」と送り出す
夜寝る時には
ほおを触ると早く眠れた
それでいいんだって
君が気づかせてくれた
夕暮れ時の橙色と藍色に
鳥をみた時には
君のことを思い出すんだよ
どんぐり坊や