8話 歴史
前回までのあらすじ
①「何かしら? さっきも名乗ったでしょう? 私の名はオリヴィア。 オリヴィア・イーラ・サターンよ」
②「私達サターン家は今まで通り静かな物よ。 いくら筆頭とは言っても、先立つ物も兵隊も居ないんじゃ話にならないものね」
③「もしも貴女がリーリカだったら、私は迷わず貴女の味方をしたでしょうね」
物語は一旦、ズィーベントローン城から遠く離れた地へ移る。
日付も時間も、どの時だったかは分からない。
けれど、明るい太陽が昇っていた事だけは確かに言えることだろう。
恐ろしい程に手入れの行き届いた庭園の中に白いテーブルと椅子が置かれ、そこへ一人の女性が座っていた。
紫の長い髪に、一般的に魔女と言えばコレと言うような黒一色のローブ姿をした彼女は、テーブルに置かれた紅茶を飲みながら誰かをゆったりと待っている。
「……ふぅ…おいしい…」
庭園のすぐ向こうで、使用人の人たちがわたわたと何かの準備をしている音が聞こえて来てはいたが、それにしても平和だ。
昔は世界を旅してまわっていたのも今となっては懐かしい。
あの頃は8人とそれなりに騒がしかったのに、もう誰もいやしない。
「……まだ…かなぁ…」
旅に出るきっかけをくれた勇者様も、魔術の才を競い合った賢者様も、そして誰よりも目が離せなかった錬金術師…私の兄でさえも。
誰一人、もうこの世界には存在しない。
目の前で仲間と信じ戦ってきた者たちの命が散っていく様は、戦いから退いた今も呪いのように心を蝕む。
そして今もこうして、彼女だけが無為に生き永らえている。
「……」
「ごめんなさい、待たせてしまったかしら?」
庭園で寛いでいた彼女以外に、もう一人の女性が彼女を訪ねてきた。
美しく着飾ったドレスは、それだけでとても裕福な家の者なのだと見せつけてくる。
金の髪に青い瞳を持った女性は、この国に住む者ならば誰でもその顔を知っている事だろう。
「姫様…」
「あら、プエルと呼んでとお願いした筈だけど?」
「失礼しました…ごめんね、プエルさん」
「怒ってないから許してあげる。 元気にしてたかしら、ベアトリシア」
白いドレスを纏うプエルと呼ばれた女性と黒いローブを纏ったベアトリシアと呼ばれた女性。
二人は最初こそ畏まった挨拶を交わしていたが、すぐに言葉が崩れていく。
なにせこの二人、仲良しなのだからこうなるのも必然なのだ。
「はい、この通り元気です」
「それは良かったわ。 旅から帰ってきた頃の貴女なんて今にも自殺してしまいそうな顔をしてたもの」
「あ、あの頃の話はやめてくださいよ…割と本気で死のうかと思ってましたもん…」
暗い話へ突入していくのかと思いきや、からかってきたプエルの笑いと共に暗い雰囲気は吹き飛んで行った。
そうさせる魅力が彼女にはあるのだろう。
「まあまあ、今の貴女はただの一教師なんだから、胸を張らないと」
「ありがとうございます…プエルさんこそ、王女としてのお仕事大変なんじゃ…?」
そう。
彼女の名はプエル・ラ・プロテア。
ここプロテア王国の国王の娘である。
「そんな事ないわよ? あの頃、貴女が私の世話をしてくれた時よりは楽な筈よ?」
「プエルさんの世話…拉致された時の事ですか?」
今から何年も前の話だ。
ベアトリシアは過去、見知らぬ男たちに攫われた事があった。
背後から襲われ、気付くとどこかも分からない地下牢へと放置されていたのだ。
そこで彼女は同じく牢に閉じ込められていた数人の人々と助け合いながら救助を待っていた。
その時、同じ牢に居たのがプエルだったという訳である。
「ええ 辛いことを思い起こさせるかもしれないけれど」
「いいえ? プエルさんとお友達になれたんですから、辛くなんてありませんよ」
申し訳なさそうに俯くプエルだったが、それにベアトリシアは精一杯の笑顔で返す。
「それに、勇者様に助けてもらった時に首魁の男にはドギツイ一撃を食らわせてやったので恨んでは無いです」
「うわぁ…そんな事があったのね …だから法廷に立った時、顔とか痣だらけだったのかしら」
一撃とは一体。
いや捕えられた後に兵士たちによってボコボコにされたのかもしれない。
まあ本当にそうだったとしたら兵士の方にも追及が必要かもしれないが。
「まあ、そんな事はどうでもいいの」
「バッサリと切り捨てましたね」
「当然よ! 貴女の話してくれる旅のお話を聞きに来たんですもの」
そう言うプエルの表情は、お楽しみのデザートか何かを前にした少女のようにキラキラと輝いていた。
ベアトリシアがこの庭園に囲まれた場所で待っていた理由とはこれにある。
二人はたまにこうしてこの静かな庭園に二人きりだったり何人かで集まる事があるのだが、それは往々にしてこの話をするためである訳で。
「それじゃあ今日はどのあたりのお話をしましょうか…」
「この前は渓谷に落ちたって所だったじゃない? その後の事が知りたいわ!」
そこからは、ベアトリシアの勇者一行時代に起きた出来事についての話題が繰り広げられた。
内容をごく簡単に纏めると、魔物達の罠にはまり、吊り橋から落とされた勇者たちについての話だ。
橋から落とされ川へ落ちた勇者一行は、そのまま川を下る途中で横に大きな穴を開けて道を作り、最終的には入った洞窟で魔物達と戦いながら洞窟を抜けて一気に罠にはめてきた魔物達を一層する、というお話だ。
「それで面白かったのが、いつもしっかりしてる勇者様が、ゴーストに凄く驚いてて」
「えぇっ?! あの勇者カルディラが?!」
「ええ、あの勇者様が」
彼女らの言う勇者カルディラ、それはとあるゲームの主人公、カルディラその人であった。
まあ、それを知っている者はこの場に居ない訳だが。
そしてそれからも暫くはベアトリシアによる昔話が繰り広げられていった。
「――ふぅ…」
「お疲れ様、ベアトリシア。今日も楽しいお話をありがとう」
礼を言うとプエルは席を立つ。
出入り口の方には、彼女を迎えに来たのであろう人々が集まっていた。
世話をする人だけでなく、ボディーガードなんかも居るのだろう。
一人や二人でない事は見なくても分かる。
「いえ、プエルさんのお誘いとあればいつでも」
「あらあら、嬉しい事を言ってくれるわね また時間が空いた時に手紙を出そうと思うのだけれど…」
「はい、その時はまたこうして準備して待っています」
次にまた会う約束をして、プエルは迎えに来た人たちとこの場を去って行った。
残ったベアトリシアは、彼女を乗せた馬車が見えなくなるまで見送り手を振る。
「さてと…貴方達にも感謝しなくちゃね」
ベアトリシア以外には誰も居ないであろう庭園の中で、彼女は誰に語り掛けるでもなく呟く。
それに返事を返したのは、物陰に潜んでいた誰かでもなければ獣でもなかった。
「今回も綺麗な庭園をありがとう。 王女様すごく喜んでたわ」
庭園に咲く花の一つを、愛でるように撫でる。
するとその花はまるで生きているようにウネウネと動き喜びを表現しているように見える。
いや、これは生きているような、ではない。
生きているのだ。
え、植物は生きているじゃないかって?
動物のように自分の意思で動く植物は果たして植物と言えるのだろうか?
「ご褒美の栄養剤作ってあげるからね」
そう言って、ベアトリシアが庭園の奥にある家へ入る。
家の扉が閉められたのを見送ってから、その庭園はまるで最初からなかったかのように姿を消すのであった。
彼女の名はベアトリシア・リヴィエット
かつて国内一とまで言われた錬金術師クロウ・リヴィエットの妹にして勇者カルディラの率いる勇者一行のメンバーだった者である。
現在は勇者一行唯一の生き残りとして勇者と仲間たちの勇士を語り継いでいる。
その傍らで教師をしている彼女だが、何年も教師をやっている彼女はすっかりベテラン先生だ。
彼女のかつて勇者一行の頃の呼び名がある。
それは、彼女の魔術に対する高い適性からそう呼ばれていた。
魔女ベアトリシア と
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場所は戻り、ここはトローン城にある書庫だ。
かなり大規模な図書館のように、何千何万という本が所狭しと並べられていた。
「……」
リーリカはそこで、ある一冊の分厚い本を開いて呼んでいた。
内容を分かり易く説明してしまえば、魔物図鑑のような物である。
どういった魔物が、どんな場所に生息し、どんな力を持っているのかを記した図鑑である。
「えぇと…」
「お姉様?」
「あ、ウィッチ? どうしたの?」
あれも違うこれも違うとページをめくるリーリカ。
しかし目的のページは見当たりそうにもない。
暫く目的のページを探していると、ウィッチが声を掛けてきた。
そう、探しているのはこのウィッチに関してだ。
「いえ、お姉様が何か探されてるようでしたので」
「あぁ、うん ウィッチについてちょっとね?」
「わ、私の事っ?! まさかお姉様、私の身体にご興味が…?」
違う、そうじゃない。
ウィッチ…つまりは魔女だが、「魔女」というのは魔物側にも人間側にも同じ呼び名が存在する。
役割は全く違っているのだが。
「違うよ。 ほら、魔女って色々あるじゃない?」
「まあそうですわね… 私だとノーブルウィッチ、上にエルダーウィッチ、下にはウィッチが居ますし」
リーリカの考えていた通りだ。
一言でウィッチと言っても種族ごとにかなりの違いがあるのだろう。
ゲームだった時もそれはよく表されていた事だったし、リーリカも良く分かっている。
同じ種族でも三種類くらいの段階分けがされていて、強弱がはっきりとしていた。
「あと、人間側だと魔女というのは職業として定着していますわね。 魔女協会なんてものもあるそうですし」
「魔女協会?」
ゲームとしての知識がない以上、あの時間軸以降に作られた組織なのだろう。
ストーリーの中で邪教の暴走を止めるサブストーリーがあった事も覚えていたし、きっと色んな組織が生まれては消えて行っているのだろうか。
「魔女協会というのは、ここ数年…そうですわね、確か5年くらい前だったかも…まぁ、それくらいに姿を現した団体です」
「新しいんだ」
「はい。 人間が魔女の名を騙って暗躍していたのが起源なんだそうですけど、私達ウィッチ族からすればいい迷惑です」
そう言う彼女の顔はやれやれと顔に書いてあるほど嫌な顔になっていた。
あまり語らせていると、少女然とした顔立ちが殺意と怒りでぐにゃぐにゃに歪んでしまいそうな程に。
ウィッチの為にも、この語りはやめさせないと。
「そうなの…分かった、もういいよ、ありがとう、ウィッチ」
「お、お姉様…んふふ~…」
帽子を取って頭をナデナデしてあげれば、懐いたネコのように心地よさそうな声を上げてくっついてくる。
その姿のなんと可愛らしい事か。
とてもあの時、防衛の為とはいえ人間を一人まるまる花火に変えて打ち上げてしまった魔女には見えない。
「あっと、そうだった」
「…? どうされたんですの?」
「ウィッチって人間と見た目がほぼ変わらないじゃない? 違いってあるのかなーって」
そもそも最初にこの書庫で本を読み漁っていたのもこれが原因だ。
ウィッチはどこをどう見ても人間の少女が魔女っ娘コスプレをして立っているようにしか見えない。
頭を撫でてみても、リーリカのように頭に角がある訳でも無ければ背中に翼も尻に細長い尻尾がある訳でもなかった。
ではウィッチは人間なのか魔物なのか、一体どっちに属しているのだろう。
「それなら簡単ですわ。 我々ウィッチ族は元々は人間だったんですもの」
「えっ! 元々は人間っ?!」
そんな設定、ゲームでは全く触れていなかったではないか。
なんて思うリーリカだったが、よく考えても見れば出てくるウィッチ族は強くてノーブルウィッチくらいでそれ以上であるエルダーウィッチは出て来ていた覚えが全くない。
何週もしているから、覚え間違いと言う事はまずないだろう。
「何代も前の魔王様の時代、我々の祖先である魔女の女性が魔王との間に子を成した…それがウィッチという種族の始まりだと言われています」
「……え、って言う事は、ウィッチって魔王の末裔っ?!」
「そうなりはしますけど、かなーり昔のお話ですから魔王様の力なんてありませんけどね」
とんだビッグなニュースが飛び込んできてしまった。
身内の、それも懐いてくれている女の子が大昔の魔王の末裔でした、なんて笑い話にもならない。
本人はこれっぽっちも受け継いでは居ないと言ってくれているが、果たしてそうなのだろうか。
「というか、件の魔王様の末裔を自称する種族は数多くおりますの」
「あ、そうなんだ…」
ウィッチ族だけがそうという訳ではないらしい。
内心ホッとしたような、呆れてしまったような。
期待していた魔王というイメージがガラスのように砕け散った感じだ。
「理論上どんな種族とも子を作れた、なんて言われてたそうですから」
「どんな種族とも…ん? 子を作る?」
言葉のニュアンスにちょっとしたひっかかりを覚えて、ついそこが口に出てしまう。
子を作る、という言葉にしたって色んな意味がある。
「あら、鋭いですわね 流石はお姉様に選ばれた方、と言った所でしょうか」
「……もしかしてその魔王様って…女?」
リーリカの問いに、ウィッチはすぐに正解と言ってくれた。
これで頭の中のモヤモヤが取り払われた感じだろう。
「そういう事ですわ。 全ての魔の祖にして母なる魔王様…魔王リリス様」
「リリス…」
ファンタジーや創作なんかではよく聞く名前だが、まさかここでも出て来るとは。
しかも全ての魔物の祖先と来た。
「種族としてはお姉様と同じサキュバス種だったと言われています」
「そうなんだ」
どういう因果があったのだろう?
まぁ何も無いと言うのが一番かもしれないが。
「まあ、それも残された文献に描かれていたのが有翼有角の女性だったから、だそうですが」
「あぁ…確かにサキュバスね…」
自分の角と翼を触って確かめながらゆっくりと頷く。
まだ完全に慣れていない事もあってか翼は自分で触れておきながら、指が伝える刺激だけで悶えるようにビクビクと震えていた。
「ふぅ…お姉様、疲れましたわ」
「ありがとね、ウィッチ」
「ご褒美が欲しいんですの」
本当に疲れているのかは分かりかねるが、ウィッチは疲れたような顔をして両腕を広げてきた。
こうしろと言う事だろうか。
ウィッチのするように立ち上がって両腕を広げてやると、ウィッチはリーリカの胸へと飛び込んでくる。
「んー…お姉様の腕の中…あたたかいですわぁ…」
「お疲れ様…ひゃんっ?!」
自主学習に付き合ってくれてありがとうとお礼を言おうとした矢先、それは起きた。
背中に回されていた手が、どんどんと下へ下がっていく。
まだ胸へ顔を埋めているのは身長差的に仕方がないから許していたが、これは少し度が過ぎている。
服の上からだろうがお構いなしに艶めかしく指を這わせながら、その手はリーリカの腰へと向かっていく。
「んふふ…今のお姉様ならきっと…っ!?」
「何をやっているのでしょうか…?」
「げぇ!コロネ!」
いきなり身体が固まったかと思えば、書庫の入り口からコロネがこちらへ手をかざしていた。
その手には何かの魔法陣が表れている。
おかげで助かったとはいえ、なんとも危ないことを。
前に攻撃しようとしてきたスラが目の前でパーンと弾け飛ぶのを思い出して少し寒気がする。
リーリカ自体へ攻撃している訳ではないから大丈夫なのだろうか。
「あ、あとちょっとなのに…」
「ありがとう、コロネ」
「リーリカお嬢様…いえ、狼藉を働こうとしたウィッチがいけないのです。私はそれを阻止したまでの事…」
「けど助かったわ。 感謝くらい言ってもいいでしょう?」
身体が固まって動けなくなっているウィッチを持ち上げて端へ寄せて、跪くコロネの頭を撫でてやる。
こっちも頭を撫でると喜んでいるようで、背中の翼と尻尾がパタパタと暴れ回っていた。
そのまま飛べるんじゃないかってくらい暴れてた。
犬が尻尾を引きちぎれんばかりにブンブン振り回すみたいな感じで。
「ところで、私に何か用があったんじゃないの?」
「っ!そうでしたっ!」
この部屋に来たという事は、調べものをしていたであろうリーリカに用事があったのだろう。
それをポッカリと忘れているのだとしたら相当恥ずかしい事だ。
だが今はこうしてリーリカが確認した事で思い出せたのだという事にしよう。
「明日、市街へ買い出しへ行こうと思っているのですが…」
「買い出し…? あぁ、そういえばスティーブがそろそろ食料が無くなりそうとか言ってたっけ」
「はい。 おおまかな物の調達は行商に任せているのですが、細かい物は私達が見に行って決めているんです」
「いきつけとか、こだわりとかそういう?」
リーリカの問いに、コロネは元気よく返事をしてくれた。
だったらそれこそ行商人とかに任せればいいのではないだろうか、なんて思いもするが彼女たちなりのこだわりがそこにあるのだろう。
「ですので、明日は! めいっぱい! 買い出ししましょう!」
「あ、うん…そうね…」
コロネのグイグイと押してくる感じでなんとなく察してしまった。
これ、買い出しにかこつけたデートの約束じゃないか。
食料の買い出しなんてのは単なるきっかけ、建前だ。
本当の理由は主であるリーリカを全うな理由を付けて独占しようと企んでいるらしい。
断ってもいいのだろうが、そうするとコロネがどんな顔をするかなんて容易に想像が付く。
デートを断られるのだから明るい笑顔で居られるわけがない。
ヘタを打てば自室に籠って出て来なくなってしまうかもしれない。
どこかの誰かさんみたいに。
「…いこっか」
「っ?! 今なんと?!」
「明日の買い出し、一緒に行きましょ?」
結局こうなった。
まあ一番平和的な解決である事は確かだと思う。
それに、リーリカには少し気になる事もあったので実は街へ行くというのは都合が良かったのだ。
「~~っ!! はいっ!」
「ふぁ~あ… 明日の予定も決まった事だし、今日はもう寝ましょうか」
「…あの、お嬢様?」
実はもう、時間は深夜になっていた。
夕食を食べて調べものをしながらウィッチから色々と情報を聞いている間にかなりの時間が経っていたのだ。
眠気も強まってきたような頃合いになって、不意にコロネが何か言いたそうな目をリーリカへ向ける。
そしてそういった視線を送る時は大抵内容は決まっている。
「…一緒に寝たいの?」
「っ! は、はいっ!」
「いいけど… ただ寝るだけだからね?」
ここで生活し始めて、最初にコロネが添い寝を希望してきたのはどれくらい前だっただろうか。
どうせ女の子同士なんだし大丈夫だろうと考えていたリーリカの考えは甘かった。
まさか紐同然の下着オンリーでリーリカの部屋へ突撃してくるなんて誰が予想しただろう。
その上で、何を要求してきたかなど文字に起こすまでも無いだろう。
まぁその時は睡眠魔法をちょいっと掛けてやってそのまま朝までグッスリ眠った訳なのだが。
え、逆に襲わなかったのかだって?
中身は普通の、ちょっとゲームが好きな男子高校生だというのに無防備に眠る女性を襲う度胸があるとでも?
「ありがとうございますっ!」
「それじゃ行きましょうか」
「お嬢様と一緒…お嬢様と一緒~」
ルンルンと嬉しそうな歩き方をしながら、リーリカと一緒に彼女の自室へと向かう。
まだ動けないでいるウィッチを一人残したまま。
「コロネ…覚えてるがいいですわ…」
コロネへ敵意を燃やしつつ、ウィッチは明日の朝までこのまま硬直していたんだとか。
さあ、朝が来てこれから向かう街とはいったい!
続く