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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第一章『大好きな彼女達を墜落させるのは、俺?』

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決意

 先ほど述べたとおり、金満基地物語という漫画は、地の文で書かれた歴史学者の独白と、実際にあったことを描く漫画が平行して進んでいく手法を取っている。

 このやり方、結構人気があった。

 歴史学者が語る内容と実際あったことの差異を上手く表現されていたからだ。

 例えば、歴史学者がこの飛娘とこの飛娘達との関係はその時、非常に険悪になり、ついには殴り合いの喧嘩まで発展した!

 などと、非常に大事(おおごと)のように語っているのに、事実としての絵には、お互いパジャマに着替え、トランプでの勝負をしてたりするんだ。

 そんな様子に、俺たち読者は『普通にパジャマパーティーじゃねーか!』とか突っ込みコメントを書き込んでいた。

 だが、そんな楽しいことだけではなかった。

 歴史学者の一言一言に、特定の飛娘に今後起きるであろう”悲劇的”な何かが匂わされたり、逆に、事実を示す絵の方に”暗い未来”が暗示されていたからだ。

 その中で、確定された事実として、ある飛娘の墜落――死亡を予感させる表現が含まれていた。



 ある飛娘とは梟型二番機艦、白梟である。



 暗示なので直接的な描写は無い。

 だが、ほぼ確定というのが、俺を含む読者達の認識であった。



 はじめはそれでも良かった。



 生き延びて欲しいという気持ちもあるにはあったが、元々、俺の”嫁娘(よめむす)”で無かったし、物語をより深みを与えるエッセンスだと割り切っていたからだ。

 白梟が嫁娘(よめむす)だという司令官達の悲鳴も、ネタとして面白くもあったしだ。

 だが、物語が進むにつれて、俺の心に変化が起き始めた。

 白梟の優しさ、強さに……。

 時折見せる弱さ、生きることに対する不器用さに……。

 金満司令に向ける無邪気な笑顔に……。

 俺は強く強く惹かれていった。



 そして、思ってしまった。



 こんないい子が、何故死ななくてはならないのか?

 こんな現実が許されて良いものなのか? と。

 思ってしまい、我慢しきれなくなった。



『白梟を墜落させないで欲しい!』



 俺は金満司令のツイッターにそうツイートするようになった。

 そう思っていたのは俺だけではないようで、徐々にそれは輪になって広がっていった。

『白梟の墜落絶対反対!』

『白梟を助けて欲しい!』

『お願い、白梟を助けて!』

 それに対して金満司令はこのように返事をしている。

『とにかく落ち着いて!』

『みんなの気持ちは分かった。
 ただ、歴史は改竄できても事実は曲げられないんだ』

『これは、僕だから助けられるというものではない。
 起きたことを変えることはできない』

 だが、そんなことでは俺たちは納得できなかった。

『書き手としてそう思う気持ちは分かるけど、同人なんだから、そこまでこだわる必要があるのか?』

『商販じゃないんだし、皆が望むような結果にした方がいいと思う』

『とにもかくにも、白梟の死亡だけは何とかして欲しい!』

 気づくと、金満司令のアカウントはほとんど炎上状態になっていた。

 中には、俺たちを(たしな)めたり、揶揄(やゆ)したりする人たちもいたが、圧倒的多数の中に飲まれていった。

『物語を変えることが出来ないなら、それでいい。
 だけど、白梟が落ちていく描写はやめて欲しい』

『話さえ続けないならそれでいいな。
 楽しい内容だけアップしてくれれば、それでいい』

 などという意見も上がってきて、その中でストーリーは完結して欲しいという人たちとぶつかりはじめ、収拾がつかなくなってきた。

 本来、ただ与えられるだけの作品に対して、なまじ金銭が関わらない無償の同人漫画だったことが影響して、だんだん自分たちが作中の飛娘を守る、守らないの話にまで展開し始めていた。

 そうだ、ここにくる直前もそうだった気がする。

 信号待ちをしていた俺は、スマホで見た誰かのツイートにカッと来て、何かを書き込んでいたんだ。

 ひょっとしたら、無意識のうちに歩き出していたのかもしれない。

 突然、視界が真っ白になり、気づいたら作品の中の金満司令官になっていたのだ。





「最初はここに来られて嬉しかった。
 だって、これから何が起きるのか、大体分かるんだ。
 なら、死亡フラグっぽいものを避けつつ進めれば、ハッピーエンド間違いなし――そう思ったからだ。
 だけど、そんな簡単な話ではなかった。
 そんな簡単な話でないのに、望み、来てしまったんだ……。
 俺はこの作品の金満司令官のように優秀でもないし、軍務についての知識もない。
 ……たぶん、覚悟もない。
 なのに、これから何が起こるのかを少し知っているだけで、彼を上回ろうっというのは無茶だったんだ」

 金満司令官が必死になって――それでも守れなかった彼女を救おうというのは、土台無茶な話なんだ。

「……ねえ知ってる?
 あなた以外の民間登用の司令官も、そのほとんどが軍務についての知識はないのよ」

「え?」

 そんな設定、聞いたこと無いな。

「そもそも、軍務について詳しいだけなら、別段、民間から募集する必要などないじゃない?
 軍の学校を卒業した人間なんていくらでもいるしね。
 でも、知識(それ)だけではどうしようも出来ない現在の戦況を打破するために、多くの”経験”を持った人間を今回募集したの。
 そして、知識が無い司令官をフォローするために、わたし達、初期機鑑がいるの」

 山雲雀は柔らかく微笑みながら、続ける。

「あなたの言う、”本当の金満司令官”がどんな理由で選ばれたのかは知らない。
 だけど、今の選考基準で言えば、あなたは十分資格があるんじゃないの?
 わたし達の未来を知っているのなんて、チートじゃない!
 何もやらずに、無理無理言ってないで、やってみなさいよ。
 ひょっとしたら、あなたの望んだ世界が待っているかもしれないのよ」

「……俺に出来るかな……?」

 山雲雀の勝ち気な顔が、ニヤリと笑った。

「出来るかどうかじゃないわよ!
 困難だからこそ、面白いんじゃない!
 やってみれば、何とかなるかもしれないわよ!」

 俺は少し驚いた。

 金満基地の山雲雀は、その有能さ故に、非常に現実主義者であると描かれていた。

 そういうところも含めて、有能秘書娘であり、読み手()も好意的に受け止めていた。

 だが、目の前にいる山雲雀は現実的にではなく、どちらかというと博打的視点で困難を面白いと言っている。



 もしかして、俺は思い違いをしているのかもしれない。



 誰もがほぼ同じ内容でスタートする飛コレ(ゲーム)の基地が、司令官によって大きく形を変えていくのと同じで、金満基地(この基地)も司令官によってそれぞれ別の形に変わっていくのかもしれない。

 そして、それこそが――金満基地の飛娘(彼女たち)を助ける要因になるのかもしれない。



 やってみよう。



 そもそも、元の世界への帰り方を知らないのだから、やるしかない。

 彼女たちを――白梟を――山雲雀を――助けるために。
小鳥級雲雀型一番機艦、雲雀……。
司令官「地味――いえ、特に欠点の無いオールラウンダーな飛娘である」
雲雀「……司令官、今、地味とか言いませんでしたか?」
司令官「しかも周りに気を使える、じ――いや、派手ではないけど優しいお姉さんな飛娘でもある」
雲雀「絶対言ってますよね! 司令官!」
司令官「雲雀、そんな所とっても頼りにしてるぞ!」
雲雀「えぇ~どんな所ですかぁ……」
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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