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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第一章『大好きな彼女達を墜落させるのは、俺?』

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勝利の中に見つけた絶望

『……どうでもいいけど、偵察機で戦闘機と戦えるの?
 みたいなぁ~』

 あ、姫雨燕、目を覚ましたのか。

 よかった……。

「大丈夫、対戦闘機は一、対機艦も一ある。
 それが、基地戦闘機発進システムに設置すると四機になり、さらに基地戦闘機発進システム自体が二つあるから、対戦闘機八、対機艦八だ。
 ……さらに俺は、それらを随時投入という形を取ろうと思う」

『随時? みたいなぁ~?』

「みたいなぁ~だ。
 いわゆる、波状攻撃だ」

 偵察機や戦闘機などを作成するのは、厳密にはそれそのものを作るというより、それを操る付喪神ちゃんを召還するに等しい。

 そして、その付喪神ちゃんは装備される飛娘や設備によって操れる機体数が変わるのだ。

 先ほど言った通り、基地戦闘機発進システムなら一つに付き四機だ。

 合計、対戦闘機八、対機艦八――小型とはいえ、母鳥小型級なら最低限、対戦闘機は二十三ぐらいだと思うので、偵察機は短い時間で駆逐されるだろう。

 そこから、すぐに付喪神ちゃんを置き換えて出撃させるとしても、その空き時間に敵は山雲雀達を攻撃し、おそらく彼女たちはあっという間にやられてしまうだろう。



 それだけ、装備の整わない飛娘にとって母鳥級は圧倒的なのだ。



 仮に、山雲雀達を出撃させなかった場合は、それだけ基地に近づいてくることになる。

 それも、下手をすると致命的な危機だ

 だったら、どうするか?



 ブザー音と共に、機械音声が基地内に響く。

『基地戦闘機発進システム作動、旧級偵察機四機出撃します』

『基地戦闘機発進システム作動、旧級偵察機四機出撃します』

 時間差有りで出撃させる。

 最初は対戦闘機四、対機艦四だ。あっという間に倒されるだろう。

 それでも何回も繰り返すと、止まりはしないが進む速度も落ちるし、相手の戦闘機も削れる。

 設置ゴー、設置ゴーを繰り返せば徐々に相手も苦しくなるのだ。

 もっとも、戦闘機が落ちれば次に使う場合、その分だけ資源を消費しなければならない。

 なので、普通の基地では偵察機を仮に作っていたとしても使えない手だったりする。

 だけどまあ、そこは金満基地だ!

 偵察機程度が何百機落ちようが、びくともしないわぁぁぁ!

「作戦名、資源をぶつけて骨を絶つ!
 いいか、お前たちは出撃しても、戦闘機とはいっさい絡むな!
 近寄ってきたら、上手く離れて偵察機と戦わせろ!
 敵は小鳥級数匹に中鳥級だ!
 奴らを、金持ちが(たか)ろうと集まる貧乏人に対するかのごとく、蹴散らしてやれ!」

 山雲雀があきれたような声で言う。

『……作戦名も最後の一行も、最低だけど……。
 まあいいわ。
 希望が見えてきた』

 そこに、白梟が話しかけてきた。

『司令官の作戦は――作戦名と最後の一行以外は理解できました』

「あれ?
 そんなに不評?」

『しかし、わたしも――わたし達も出撃しても良いと思いますが』

「……白梟、祟り神は大損傷した飛娘に引き寄せられるという話を聞いたことがないか?」

『え?
 ……聞いたことはありませんが、そうなんですか?』

「あくまで噂だ。
 噂の域だ。
 だが、信憑性もある。
 だから、ひょっとするとさらなる敵の増援があるかもしれない。
 なので、全員を一気に出撃することはしない」

 初めはあり得ないと思った基地への襲撃、でも、冷静に考えたら起きても不思議ではないことだった。



 ゲームの話ではない。
 ”ここでの”話だ。



「いいか、白梟。
 特にお前は現在、この基地の中で最強の太刀であり、最強の盾だ!
 お前が万全の状態でいないと、この基地は揺らぐことになる。
 メンタル治療用の緊急回復液も、一戦だけならいいが、連戦になると疲労度が増すという話があるので、これも使わない。
 今は山雲雀達を信じて、休んでくれ!」

『……司令官がそこまでおっしゃるのであれば、分かりました。
 万事お任せいたします!』

「ああ」

 画面上で最初に送った偵察機の数が早速ゼロになる。

 俺は手早く、新たなる偵察機を設置して、出撃させる。

『基地戦闘機発進システム作動、旧級偵察機四出撃します』

『……なかなか、手際が良いわね』

 山雲雀が感心したように声を上げる。

 本来であれば、ある程度の手順を踏まなくてはいけない設置と出撃だが、俺にはこのゲーム画面がある。

 椅子に座って、基地内のあらゆる事を指示できる。

 僅かではあるが、このような緊迫した戦いにおいては、大きく影響する可能性がある。

『山雲雀、雲雀、出撃準備は整ったわ!』

「山雲雀……。
 その、さっきは済まなかった」

『……いいのよ。
 期待されないよりは、過分にされた方がわたしは好きよ』

『ふふふ』

 山雲雀の言葉に、雲雀が楽しそうに笑っている。

 それでこそ、山雲雀――だ。

「ありがとう……。
 よし、山雲雀、雲雀、出撃せよ!」

『『了解!』』

『山雲雀、出撃する!』





 基地の空域だからか、偵察機から映像が届いている。

 そこに映し出されているのは、必死に戦う山雲雀達の姿だ。

 予想通りというか、嫌な予想通りというか、敵の増援が本当にあり、思った以上に苦戦することになった。

 まさか、援軍にも母鳥小型級が、しかも二隻も現れるとは思いもよらなかった。

 だが、何回繰り返したか分からない偵察機の出撃と、完全回復した白梟達の合流で、徐々に押し返しつつあった。

 俺は雲雀が中損傷するのを見て、指示を出す。

「雲雀、お前は一旦引け!
 山雲雀もキツいようなら――」

『わたしはまだまだ大丈夫よ!
 雲雀姉は引いて!』

『うう……。
 了解です』

 これで勝てる……。

 そう思った後、慌てて首を振ってそれを払った。

 そのフラグを立てたから、先ほど負けたんじゃないか。

 危うい、危うい。



 ……。



 俺は今でも、信じている。

 俺の知っている山雲雀はこんなものではないと。

 信じてるというか――知っている。

 彼女がいかに戦い、いかに勝ってきたのか、を。

 この世界の彼女が、だ。



 この世界は俺が住んでいた所ではない。

 この世界は俺がやっていたゲームの世界でもない。

 ここは”ある作品”の中の世界だ。

 その名を”金満基地物語”という。



 金満司令官が書き上げたWEB同人漫画である。

 読む前は、どうせ中二病をこじらせた――飛娘に危機が迫ると、大枚をはたいて買った超絶強い兵器(予想名金満ガーZ)に乗った金満司令官が華麗に助けに来るとか、そんな俺つえぇぇぇ! な作品だろうと高をくくっていた。

 ネットでもそういう前評判で、2chに『金満物語の内容を予想してみた!』とかいう、バカにするようなスレッドがたったぐらいだった。

 とはいえ、彼が描く山雲雀は本当に可愛かったので、一応読んでみたのだが――俺はその物語にのめり込まれた。



 その物語の主人公である金満司令官は、自信家であり、自己顕示欲も強く、さらに超大鳥級などの大きな兵器でド派手にバンバンやりたいというしょうもない夢を持つ男であった。

 時は、祟り神との戦争が激化するさなか、人材不足から軍部は民間から司令官候補を募集し、そこで、彼は選ばれるのだ。

 元々、若くして事業に成功していた金満司令官は、そこで得た私財をふんだんに使い、最強の飛娘部隊を作りだし、戦争を終わらせた英雄という名声と、人類が得る最高の賞である世界貢献賞を手土産に、世界連合の代表に上り詰めるという野心を持つことになる。

 そして、それに向けて実行する行動力も、彼は持ち合わせていた。

 最高の設備が整った基地を作り、最強の飛娘を育て上げ、最大の戦果を上げた彼だったが……。

というのがあらすじだ。



 この作品に描かれているのは、とにかく勝つことの難しさ、である。

 最高の装備と最高レベルの飛娘――それでも、負ける時はちょっとしたことで負ける。

 それは、軽い嫉妬だったり。

 それは、ちょっとした功名心だったり。

 それは、仲間のために良かれと思った行動でありで、あっという間に、隊は崩壊する。

 その中で、金満司令官と飛娘達は必死に戦う、そんな物語だ。

 俺はこの作品は飛コレのゲームに通じるものがあると思っている。

 どれだけ頑張っても、あっさりと負ける、まさに飛コレそのままではないか。



 でも、ゲームならいい。



 再度、出撃するのだって、燃料とかがキツいと感じる時はあるが、苦悩するほどでもない。

 だが、それを現実に置き換えたらどうだ。

 それこそが、金満基地物語であると思っている。

 そして、山雲雀はその中で、金満司令を支え続ける飛娘だ。

 戦闘はもちろん、戦略、戦術共に、その立案力は金満基地屈指であり……。

 一説では山雲雀がいれば、金満司令官は不要――。





「あ、ああぁぁぁ!」

 しまった、そうか!

 そうなのか!

 引っかかっていた。

 でも、気のせいだと思っていた。

 いや、おそらくは思いたかったのだろう。

 ヨーロッパヒンズイは言った。

『あなたは何を期待してる。
 山雲雀をなんだと思っている』

 なんだと――思っている?

 そうだ、彼女が初めてなのは何も戦闘だけではないのだ。

 彼女は――”ただ”の飛娘なんだ。

「これって……。
 やっぱり、詰んでないか……」

 山雲雀が最後の母鳥小型級をしとめた。
大鳥級……。
超加速が出来なかったり、小回りも利かなかったりするが、防御力、攻撃力共に中鳥級の上位互換にあたる。
また、中鳥級とまではさすがに行かないが、速度もそこそこあるので、超大鳥級が使えないような空域で活躍する。

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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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