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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第五章『初期飛娘の三人』

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雲雀という飛娘


「司令官、お食事中、失礼します!」

 雲雀は俺の脇に立ち、敬礼をした。

「ああ、構わない。
 どうした?」

「司令官にお願いしたいことがあります!」

「お願い?」

「現在のローテーションで、白梟さんや山雲雀ちゃん抜きでの出撃のことですが、わたしを旗機艦にするのを止めていただけませんでしょうか?」

 はぁ?

 何だって!?

 俺は胸に渦巻く困惑を必死に押さえつつ、静かに訊ねた。

「……何故だ?」

「小鳥級だけならともかく、現在では中鳥級の烏さんや河原鳩(カワラバト)さん、大鳥級の毛足狂鳥(ケアシノスリ)さんがいるのに、わたしが旗機艦というのは、明らかに失礼です!
 それよりも三方を旗機艦にしてください!」

「いや、それはきちんと説明しただろう?
 あいつらは出撃経験が浅いから、経験豊富な者を旗機艦にするって。
 烏達(あいつら)だってそれで納得してたし――」

「そんな、司令官の意向に逆らうようなことは言えませんよ!
 本当はすごく嫌がっているに決まってます!」

「そうかぁ?
 あいつらってそんなに殊勝な奴らかぁ?」

 それだったら、どんだけ楽なことか。

「小鳥級に指示されるのなんて、山雲雀ちゃんみたいな例外を除いて嫌に決まってます!
 人間である司令官にはその辺りがお分かりになってないんです!」

「いや、そう言われると……」

(ずる)いよ雲雀」

 ヨーロッパヒンズイが珍しく――俺が怒らせてぶりに――強い口調で言った。

「何で自分の望みを、他人を理由に通そうとするんだい?
 挙げ句の果てに人間だから分からないって――いくらなんでも失礼だ」

「え、いや」

 狼狽(ろうばい)する雲雀にヨーロッパヒンズイは続ける。

「だったら、小鳥級のみの機艦隊ならいいのかい?
 それなら、旗機艦をやってもいい――そういうことなのかい?」

「あ、あの……」

「言わないよね?
 だって、雲雀の望みは”そこ”じゃないもの。
 そういう話に進んだら、きっと言う。
 姫雨燕(ヒメアマ)ちゃんが、川蝉ちゃんが、ヨーロッパヒンズイちゃんが、ってね。
 そんなことを繰り返しても、”本当”のことは司令官には届かないよ。
 それはあまりにも誠意を欠く行為、そうは思わないかい?」

「そ、そんなつもりは……」

 おおお、凄いぞヨーロッパヒンズイ!

 こいつ、話し出したらこんなにスラスラと言葉が出てくるのか!?

 とはいえ、余り責めすぎても良くない。

 だから一旦、この辺りで中断しておこう。

 俺は席を立つと、二人の間に割ってはいる。

「そこまでだ!
 なあ雲雀、お前が嫌だと言うのであれば、俺は無理強いするつもりはない。
 だが、もう少し考えてみてくれないか?」

「……」

 俯く雲雀に、俺は慌てさせないように続けた。

「そうだなぁ~後でどうだ?
 お茶でも飲まないか?
 どんな理由か分からないが、山雲雀も一緒に……」

 雲雀の顔が一瞬歪んで見えた。

 次の瞬間、怒声が押し寄せてきた。

「山雲雀ちゃんは関係ありません!
 関係ありません!」

 雲雀!?

 歯を()く狼のような表情の雲雀に気押されて、俺は思わず体を強ばらせ、一歩二歩後ずさる。

 そして、バランスを崩しそうになったが、反射的に伸びた手を”何か”に付いてこらえた。

 雲雀は目から大粒の涙をこぼしていた。

 何だ?

 何が起きたんだ?

 雲雀は、ハッとした顔を浮かべると、歯を食いしばりながら頭を下げる。

「あ、すいません、失礼します!」

 そして、そのまま走り去っていった。

 何だ?

 いったい何が起きたんだ?

 ……?

 何やら柔らかい物が左手に……。

 !?

 いや違う……。

 違うに違いない……。

 違ってくれ……。

 俺は恐る恐る左手の先に視線を向けると……。



 あかんかった。あかんかった。



 顔を真っ赤に染め、プルプル震えるヨーロッパヒンズイの――その薄めの胸に――手がばっちりと付いていた。

 おお、神様。

「ひやん!」

 ヨーロッパヒンズイの小さな手が、俺の胸を押した。



 何度も繰り返すが、飛娘は人間などよりずっと力が強い。



 なのでその結果――俺は宙を舞った。

 飛娘の本気の力で押されたら、ただの人間などひとたまりもない。

 だから、テーブルの上を飛行しながら俺は「あ、死んだこれ」と冷静に判断していた。

 とはいえだ。

 なんやかんやいって手加減をしてくれたのか――十五メートルぐらい飛んだ後、俺は無事(?)テーブルの上に着地した。

「げほっ!?」

 ここのテーブルは取り外し可能なものの、常時は固定されている。

 だから衝撃がダイレクトに伝わったのか、変な声を吐き出してしまった。

 息がしづらい上に、そのテーブルには食器が置かれていたようで、背中に当たって痛い!

「あれぇ~
 結局ぅ~わぁたぁしぃの所にぃ~来てくれたのぉ~」

 気づくと、毛足狂鳥(ケアシノスリ)が俺の顔を見下ろしていた。

 そうか、俺はこいつらのテーブルまで飛ばされたのか。

「大丈夫ですか!?」

 白隼が立ち上がると、俺を起こそうとしてくれる。

「あ、ああ……。
 いやすまない。
 お前らの食事を駄――」

「わぁ~い♪」

「げほ!?」

 毛足狂鳥(ケアシノスリ)が突然、俺の首を抱きしめた!?

「ツレなくしておいてぇ~飛んでぇ~来るなんてぇ~
 すぅ~てぇ~きぃ~!」

 嬉しいことがあった時の少女がぬいぐるみにするように、キャッキャといいながら、俺の体を揺さぶり始めた!

 後頭部に豊満な胸を押しつけられている……。

 本来はそれを喜ぶ所なのかもしれないが、毛足狂鳥の細い腕が俺の喉に極まっていてそれどころじゃねぇぇぇ!

「ぐるぅ、ぐるしぃ!」

「ちょっと、止めてあげてください!」

 白隼が必死に止めようとしてくれるが、毛足狂鳥(ケアシノスリ)は変なスイッチが入ったのか、一向に聞く耳持たない。

「まるでぇ~お姫さぁまぁ~に求婚するぅ~王子様ぁ~みたいなぁ~
 きゃぁぁぁ!」

 死ぬ!

 マジでこのままだと死ぬ!

 俺は必死に手をタップして、限界をアピールする。

「や、め、ぐる……」

「ちょ、司令官!
 毛足狂鳥(ケアシノスリ)さん、司令官が問題ありあり、になってます!
 止めてあげてくださいって!」

「アハハァァァ~♪」

くそ、止めろ(ク、ソ、やべろ)
 この、人殺し(ひほ殺し)ぃぃぃ!」

 叫んだ次の瞬間、俺の意識はすぅーっと抜けていった……。





「あなた、何やってるのよ……」

 気が付くと知ってる天井、及び、我が秘書娘様が呆れた顔で俺を見下ろしていた。

 どうやら、俺は毛足狂鳥の(頭おかしい)奴に落とされ、医務室に連れてこられたようだ。

 あいつ、ホントその名の通り、狂ってる。

 狂ってやがる……。

毛足狂鳥(ケアシノスリ)の話はともかく――なんでも、ヨーロッパヒンズイに飛ばされたとか何とか。
 一体何をどうしたらそうなったのよ……」

 うっ……。

 言うと怒られるだろうなぁ。

 でも言わないわけにはいかないよなぁ。

「ほら、言いなさいよ!」

 俺は観念してヨーロッパヒンズイと雲雀とのやり取りを説明した。

 山雲雀はため息を付くと、首を横に振った。

「あなたねぇ~……。
 はぁ~何か怒りを越えて呆れちゃったわ」

「いやほんと、意図せずだから!」

「意図するしないは、もういいわ。
 どうするの?
 主力小鳥級の内、三人と()めて」

「あ、う……」

 どうしよう。

「まあとはいえ、ね」

 山雲雀はやや苛立たしげに頭をかきながら、続ける。

「川蝉とヨーロッパヒンズイはまあ、後回しに出来るでしょう。
 どちらも解決する必要はあるけど、すぐに爆発するたぐいのものでもないし。
 でも、雲雀姉の件は……。
 思ったより深刻ね」

「そうだな……」

 雲雀は基本的に、穏和な飛娘だ。

 あんなに怒りを露わにする姿は、現実でも漫画でも見たことがない。

「ねえ、漫画ではどうだったの?
 金満司令官(本物)とは上手く行っていたんでしょ?」

「……それが不思議なんだよなぁ。
 どちらかというと、金満司令官は雲雀のことを酷い扱いしてたんだ」

 地味だとか、本当に飛娘なのかとか、女の子に対してそれでいいのかぁ~ってことを平気で言っていた。
 それに対して、雲雀は文句を言いつつも普通に秘書娘もやっていたし、旗機艦もやっていた。

 ……なんだろう、なんやかんや言って、今の雲雀より楽しそうにしている気がする。

「だからといって、真似しない方がいいわよ。
 普通は引くから、そんなこと言われたら」

「だよなぁ~」

 まあ、雲雀のことだ、容姿とかに関しては特にそこまで気にはしてないだろうが。

 そうじゃなければ、あんなに言われて平然となんてしてられないだろうしな。

「……きっと、金満司令官(本物)は気づいたんでしょうね、雲雀姉の本質に。
 雲雀(自分)山雲雀()も気づかないものに、ね。
 それが分からない限り、真似をしたって毒にしかならないわよ」

 ……なんだろうか?

 俺には分からない。

 だが、このままでは駄目な気がする。

 今だけではない。

 飛娘としてもそうだし、もし仮に機羽を解体して人になったとしても、駄目な気がする。

「話を聞く限り、わたしでは駄目そうね。
 ……ここは白梟に任せてみる?
 それとも、大鷹とか」

 白梟、大鷹……。

 俺なんかよりずっと頼りになるから、適している気がする。

 しかし……。

「山雲雀……。
 お前には反対されるかもしれないが、まずは俺が話を聞いてこようと思う。
 そうしなくては駄目だ――と思うんだ」

 山雲雀は――反対しなかった。

 ただ、どことなく寂しげに微笑んだ。
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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