挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第五章『初期飛娘の三人』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

36/41

ヨーロッパヒンズイという飛娘

 はぁ~最近、上手く行かないなぁ~

 ……いや、ここに来てからほとんど上手くいってないか。

 俺はため息をつきつつ、食堂の付喪神ちゃんから昼ご飯の載ったトレーを受け取る。

 あの後、山雲雀には怒られるわ、川蝉には

『司令官がおっしゃることも、やってることもよく分かりません』

とニコニコ顔ながらも困った顔で言われてしまうわで、散々だった。

 う~ん、途中まで良かった気もするんだが、調子に乗ってしまったのが致命的に駄目だったんだろうなぁ。

 川蝉が出撃のために部屋を出ていった後、その背中を見送っていた山雲雀がため息混じりに明かしてくれた。

『……今だから言うけど、最初の出撃の時、不意を突かれた姫雨燕(ヒメアマ)はともかく、他の皆はそこまで負傷することなく退却できたはずだったのよ。
 なのに、川蝉が母鳥小型級に無謀な突撃をして……。
 白梟は、とどめを刺されそうになった川蝉(あの子)を助けようとして大損傷になったの』

 初めて聞いたその話に、俺は更に危機感を抱いた。

 あいつは本当に、何とかしなくては……。

 だが、そんな誓いを立てた俺に、山雲雀が再度釘を刺した。

『川蝉については、取りあえず保留にしなさい!
 現在、雲雀姉のことで精一杯なのに、落ち着いている問題を表面化するんじゃないわよ!
 いずれ解決しなくてはならなくても、一つずつ、一つずつ取り組んでいくの!
 そうしなくちゃ、収拾がつかなくなるわよ!』

 ごもっともなご指摘だった。

 はぁ~

 まあいい。

 取りあえず今は、どこで飯を食べようか、だ。

 バカみたいにデカい食堂には、お昼には少し遅かったからか、人気(ひとけ)が少なかった。

 ん?

 受け取り口から少し離れた所に、毛足狂鳥(ケアシノスリ)と白隼の姿が目に入った。

 毛足狂鳥(ケアシノスリ)は俺に気付くと、彼氏を呼ぶ女子のように
「こっちこっちぃ~!」
と満面の笑みで手を振り始めた。

 俺も笑顔で手を振り返し――近くのテーブルにトレイを置いた。

「ちょっとぉぉぉ!
 なんでよぉぉぉ!」

 などという声が聞こえてきたが、あんな頭が痛くなるような奴と一緒に飯なんて食えるか!

 仕事だけのお付き合い希望、だ。

 よっこらせ、と椅子に座り、ふと視線を挙げると……。

 !?

 サンドイッチをくわえたまま固まるヨーロッパヒンズイの姿が見えた……。

 薄黄色に黒のラインの入った長い髪、黒くてつぶらな瞳、ほっそりとした女の子らしい小さな体――と非常に可愛らしい子なのだが、何故か俺を嫌っているようで、話しかけようとするとすぐにどこかへ行ってしまう。

 ちょっと苦手としている女の子だ。

 そんなヨーロッパヒンズイとよもやこのタイミングで同席する事になるとは思いもよらなかった。

 まあ、俺が勝手に座っただけなんだけどな。

 っていうか、山雲雀に釘を刺されたばかりなのに、これ、更に難易度の高い女の子と絡もうとしてないか?

 ……とはいえ座ったのに、すぐさま立ち去るって明らかに不自然だし、失礼だ。

 なので、一生懸命笑顔を作って、声をかけることにした。

「お、おう、ヨーロッパヒンズイ。
 ご、ご一緒しても良いかな?」

「……」

 ヨーロッパヒンズイは(うつむ)きながら、三角に切られたサンドイッチの先をモグモグしている。

 ん?

 俯いてっていうか、頷いたのか?

 まあ取りあえず承知したと受け取り、俺は唐揚げ定食を食べ始める事にした。



 ゲームでのヨーロッパヒンズイも無口な設定である。

 台詞も、他の飛娘より短く、

『司令官、勝った』

『司令官、楽しみだ』

『司令官、新しい仲間が追加された』

とか、そんな必要最低限のことを呟くように話すものが多かった。

 戦力としては、火力は低いもののほかの能力は平均以上で、しかも、他の小鳥級が装備できないような特殊な武器を器用に使いこなすので、小鳥級のみでの出撃等の縛りがある時はかなり便利な飛娘だ。

 で、金満基地でのヨーロッパヒンズイはと言うと、扱いづらい飛娘と紹介されている。

 旗機艦を選ぶタイプの飛娘で、自分が認めた相手ではないと口にこそしないが不満そうにすると、漫画には書かれていた。

 認めている相手というのは、金満司令官、山雲雀、そして、戦術の考案や戦闘中の状況判断に定評のある軽鴨(カルガモ)ぐらいで、中鳥級、小鳥級を束ねていた、白梟ですら余り良しとしなかったとも書かれていた。

 そう考えると、ヨーロッパヒンズイが俺を嫌う理由も分かるってものだ。

 能力的に劣っている俺が司令官をやっているのが、ようは気に入らないのだろうなぁ。

 初めての出撃の時も、山雲雀を理不尽に責めてしまい、そのことでヨーロッパヒンズイ(彼女)を怒らせてしまったし。

 俺は唐揚げを一個食べると、ご飯を口に流し込んだ。

 ここの唐揚げ、シンプルだけど旨い。

「……」
「……」

 うっ!

 同席してるのに何も話さないとか、やっぱり駄目だよなぁ。

 でも、無視されたら涙が出ちゃいそうになるんだけどなぁ……。

 いかんいかん!

 そんなことを言っていたら、ヨーロッパヒンズイとの仲は一向に改善されん!

 取りあえず、話しかけなければ!

「う、うん……。
 あぁ~ヨーロッパヒンズイ、どうだ?
 皆と仲良くやっているか?」

 あぁ~俺、親戚のおっさんとかがこの手の、”面白くもなんともない”話を何で振ってくるのか疑問だったんだけど、今なら分かるわぁ~

 当たり障りがない所で話をすると、こうなるんだな!

 おじさん方、つまらん人扱いしてすまぬ!

 ヨーロッパヒンズイはチラリとこちらを見ると、また俯く。

 ……良し、これは頷いたと解釈しよう。

 ポジティブ! ポジティブ!

「そうか!
 ……因みに、誰と一番仲がいいんだ?」

「……山雲雀」

「そうなのかぁ~山雲雀かぁ~」

 ここら辺は原作通りだな!

 ……どんな会話をしているのか、想像つかんが。

 ふと、雲雀のことを思い出して、振ってみることにした。

「だったら、雲雀はどうだ?
 何度か一緒に行動しているのを見たが」

「……」

 ヨーロッパヒンズイは何故か、つぶらな目で見返してきた。

 ん?

 何だろう。

「雲雀に何かあったのかい?」

「え?」

「一緒に行動するのが多いのは姫雨燕(ヒメアマ)

 うっ!

 そう言われると、確かに現在、ヨーロッパヒンズイと一緒に行動するのって、姫雨燕が多いんだよなぁ。

 この前、意外な組み合わせだなぁ~何て思っていたのに忘れてた。

「……まだ、雲雀を秘書娘(ひしょむす)にするの、諦めてないのかい?」

 ヨーロッパヒンズイは俺を静かに見つめながら訊ねてくる。

「……秘書娘は取りあえずいいんだ。
 ただ、あいつが何であそこまで自信なさげなのか、それが気になって……。
 だから、おまえと話してる時にも、あいつの名前が出てしまったんだろうな」

 苦笑する俺から視線を外し、ヨーロッパヒンズイは再度サンドイッチをチビチビと食べ始めた。

 う~ん、せっかく会話になったのに、もう終わりか……。

 いや、ひょっとして……。

「ヨーロッパヒンズイ、お前は雲雀を秘書娘にするの反対なのか?」

 ヨーロッパヒンズイはこちらをチラリと見た後、答えた。

「……ううん、向いてる」

 雲雀は秘書娘に向いてる、ってことか。

「だけど――」とヨーロッパヒンズイは続ける。

「今は無理」

「無理?」

「無理」

 ヨーロッパヒンズイが不意に視線を俺の後ろに向けた。

 俺もそれをたどって振り向くと、(こわ)ばった顔の雲雀がこちらに向かって歩いて来るところだった。
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ