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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第五章『初期飛娘の三人』

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川蝉という飛娘

 司令室にやってきた西岩燕の第一声は
「……司令官、西岩燕の調べでは、現在の琉球燕を西岩燕がどうにかするのは、九十九パーセント不可能と出ています」
だった。

 げっそりと、疲れた顔をしていた。

 いや、別にお前に全てを押しつける気なんて、(はな)から無いんだよ?

 でもな。

 報告ぐらいはしろよ、なぁ?

 とにかく、付喪神ちゃんに琉球燕の応急処置を頼んだ後、医務室まで運んだ。

 そして、西岩燕に報・連・相(ホウレンソウ)の大切さをきちんと()き、琉球燕の監視を大鷹に託した。

 強くて頼りになるお姉さんタイプの大鷹なら、なんとか落ち着かせてくれるだろう。

 もちろん、何かあったらすぐに連絡するようにと釘は差した。

 二の舞を防ぐためだ。

 ふむ。

 そして今、もう一人の問題児と長机を挟んで向かい合っている。

 川蝉だ。

 自分が大損傷レベルにブン投げた琉球燕のことなど既に忘れたかのように、ニコニコ楽しそうに紅茶を飲んでいる。

 ふむ、彼女は入れるだけではなく、飲むのも好きなようだ。

 いや、そうじゃなくって!

 俺は心を落ち着かせようと、同じく川蝉が入れてくれた紅茶を一口飲む。

 ふむ、旨い。

「川蝉、あぁ~なんだ。
 琉球燕は機羽を装備していなかったから正確には分からんが、恐らく大損傷だ」

「……」

「いやおい、川蝉!
 何を唐突に株価について説かれた小学生みたいな顔をしてるんだ!
 お前がやったんだろう!?」

「……邪魔――いえ、司令官が嫌がってました」

 やっぱり邪魔だったか!?

 邪魔だったからか、”どかした”のか!?

 でも一応それ発言しちゃ駄目って事ぐらい、分かってるようだな!

「いや俺は別に――いや、嫌だったは嫌だったけど!」

 そこはハッキリしておかないと、女の子に素足で()でられるのが好きな変態にされてしまう。

「俺を助けようとしてくれたことは素直に嬉しいし、()(がた)いと思ってるぞ。
 ありがとな。
 だけどなぁ~いくら何でもやりすぎだろう?
 琉球燕(あいつ)は俺と西岩燕(ニシイワ)以外には強気に出ることの出来ないヘタレだから、川蝉(お前)が『やめなさい』って言えば、引き下がったと思うぞ?」

「……それでも、琉球燕は繰り返します」

「まあ、確かにそうだけど――」

「むしろ、”やりなおし”た方が良いのです。
 ……今からでも」

 ――一瞬、川蝉が何を言ってるのか分からなかった。

 だが、立ち上がる川蝉を見て、背筋がすーっと冷たくなった。

 殺すつもりか!?

「おい待て!
 まず座れ!」

「?」

 川蝉は相変わらずのニコニコ顔のまま小首をひねったが、再度座るように言うと腰を下ろした。

「川蝉、お前今、何をやろうとした?」

「……司令官は勘違いをしています」

「え?
 ああ、そうか……」

 うっかりだ。
 いくら何でも、仲間を殺すとかは――。

「川蝉はただ、機羽の解体を――」

「それも駄目だろう!?」

 何言ってるんだ、この子は!?

 機羽解体はいわば、飛娘としての死を意味する。

 本人が望むならともかく、駄目だろう!

「いいか川蝉、お前はやや短絡(たんらく)過ぎるぞ。
 あんな奴でも仲間だろう?」

 丁寧に言い聞かせる俺に対して、川蝉はいつものニコニコ顔であっさりという。

琉球燕(あの子)は被害妄想が過ぎて、もう駄目です。
 琉球燕(次の子)に期待するのが早いです」

 ああ……。

 あああ……。

 そうだった。

 川蝉、こいつは”こういう”奴だった。



 小鳥級川蝉型一番機艦、川蝉。

 過去、飛空機戦艦の頃の川蝉が命知らずの特攻でその名を知らしめた事もあり、ゲームでのこいつは小型で回避率が高いながらも高火力という、多くの司令官が小鳥級の主力候補として名をあげる優秀な飛娘であった。

 たっくん基地でも多くのイベントの、最終空域で使用している。

 そして、金満基地(漫画)の中の川蝉はと言うと……。

 金満基地の数いる小鳥級の中で最強と言われている。

 凡基地に黄鶺鴒(キセキレイ)というチート級の飛娘がいるので世界最強とまではなかなか言えないが……。

 トリッキーな動きに定評のある姫雨燕や先読みに定評のあるヨーロッパヒンズイ、小白梟と言われた野駒(ノゴマ)など、数いる最強候補を圧倒した――そう歴史家は語っていた。

 しかし、川蝉は一時期、金満司令官に干される事になる。

 干される、と言うか謹慎を命じられたという方が正しいだろうな。

 とにかく、重要な戦いから川蝉の名が外されることになる。

 その理由が”これ”だ。

 飛娘の命を軽く見る(きら)いがあるのだ。

 それは他の飛娘に対してだけではない。

 自分自身の命も軽く考えてるのだ。

 恐らく、金満基地という資材が豊富な基地だから、よりその傾向が強くなったのだろう。



 代えが()くのだから、特攻などをもっとするべきだ。



 それが、彼女の中の飛娘使用論だ。

 しかし、金満司令官はそれを良しとせず、考えを変えるまで使わない。

 そう宣言したのだ。

 そうか、すっかり忘れていたな。

 だが今、そのことに気付いたのは僥倖(ぎょうこう)とも言える。

 下手を打つと、とんでもないタイミングで特攻し、落ちてしまう可能性だってあったのだ。

 だが逆に、ここできちんと言い聞かせれば金満司令官のように謹慎させずに済む。

「あぁ~川蝉。
 我々はせっかく同じ基地で出会い、一緒に戦うことになったのだ。
 そう簡単にさぁ~その絆を断ちきろうとするのは……」

「司令官はともかく、わたし達は戦うためのみの存在。
 司令官や基地のために戦うための存在。
 にもかかわらず、司令官に害する飛娘がいるのであれば取り除く――正しいことです」

「い、いや、『人はパンのみにて生くるものに(あら)ず』じゃないけど『飛娘は戦うのみにて生くるものに非ず』だと思うぞ!
 せっかく心も備わってるんだし……」

「そのお話の正確な意味は分かりません。
 ただ、人は食事(パン)がなければ生きられないのと同じく、飛娘は戦わなければ存在する意味がないのです。
 その戦う”意味”である司令官を陥れようとする琉球燕(もの)は速やかに排除すべきです」

 う、おお!?

 川蝉、結構賢いぞ!

 何とか言いくるめようとする俺の言葉を軽々といなしていく。

 ……いや、何となく何も考えずにいつもニコニコ紅茶ばかりを作っているイメージがあったからお馬鹿さんなのかと思ってたけど、そういえば、漫画でも戦闘時における判断力の高さが、最強の理由の一つに挙げられてたわ。

 くそっ!

 琉球燕の奴の印象が悪すぎて上手く話を進めることが出来ない。

 そこから、少しずらしていこう。

「いやしかし、惜しいと思わないか?
 琉球燕も今では三十レベルだ」

「現在の琉球燕程度の貢献度が抜けても、そこまで困りませんし、その分、今後の琉球燕が優秀ならばそれこそ、基地の為になります」

 知ってた!

 そう言うだろうと知ってた!

 俺はそこから話をずらす。

「だが、レベルだけではないぞ。
 例えば川蝉の紅茶はどうだ?
 こんなに旨い紅茶を、次の川蝉が作れるかどうか……」

 無理矢理、琉球燕から川蝉自身の話にスイッチした。

 賢い川蝉なら気付くかもしれないが、どうだ?

 一応、司令官を立てている川蝉がそれを指摘するか?

 まあ、仮にそれについて指摘されても、俺たちが知らない琉球の能力があるかもしれない的に進めていくつもりだが……。

 川蝉は――指摘をしなかった。

 代わりに立ち上がると、ニコニコしながら俺の袖を引っ張り始めた。

 ん?

 何だ?

 引かれるまま付いていくと、川蝉がいつも紅茶を作っている場所に連れて行かれた。

 そして、何やら書いてある紙を指さした。

 ……。

 紅茶を美味しく作る方法が事細かに書かれていた。

 どことなく、ドヤ! って顔の川蝉が説明する。

「ここに書かれているのは、川蝉が紅茶を作る上で気づき、学んだ内容です。
 ですから、次の川蝉でも美味しく作れます」

 ……。

 駄目だ!

 駄目だ駄目だ!

 絶対こいつに言い負かされちゃ駄目だ!

 勝たないとこいつ、絶対どこかで墜落する。

 自ら進んで墜落する。

「……川蝉、もしも川蝉が墜落したら、俺はどうなると思う?」

「?」

 川蝉はニコニコ顔のまま小首をひねった後、答える。

「新たな川蝉を作成します」

「うむ、新たなる川蝉を作る。
 確かにそうだ。
 優秀な川蝉型一番機艦、川蝉は必ず必要だからな。
 だがなぁ、俺はこうなるのだ」

 俺は精一杯苦しげに、悲しげに言葉を絞り出す。

「かぁわぁせぇみぃぃぃぃ!
 何故だぁぁぁ!
 何故落ちたぁぁぁ!
 おおおおおおおおおお!」

「!?」

 川蝉はニコニコ顔のまま慌て始めた。

 ふむ。

「さらに、こうなるぞ!
 うぉぉぉぉぉぉ!
 俺がぁぁぁ俺がぁぁぁ!
 川蝉を殺したのかぁぁぁ!」

 俺は床に転がりもがく。

 川蝉は「違います! 違います!」とおろおろしている。

 これは……いける!?

「さらに、紅茶を飲む度に殺してしまった川蝉を思い出し、その都度、悶絶(もんぜつ)するぞ!
 川蝉ぃぃぃ!
 かぁわぁせぇみぃぃぃ!」

 なんだか興に入ってきた俺は、頭を抱えて床をごろごろ転がり始めた。

「くそぉぉぉ!
 どうして!
 どうし――痛っ?」

 何かに頭がぶつかり見上げると、肌色の何かと、黄色のヒラヒラしたものが見えた。

 ん?

「あなたって人はぁぁぁ……」
 押し殺すような怒気が上からじわじわ降りてきて、俺の血の気も同時に下りた。

 さささ、っと離れると、スカートを押さえた山雲雀が額に青筋が見えるんじゃないかってくらいの顔でこちらを睨んでいた。

 いやあの……。

「あなたはどんだけ、スカートの中が見たいのよぉぉぉ!」

「違う、違う!
 そうじゃないぃぃぃ!」

 サングラスをかけた歌手の、昔の曲みたいな台詞を俺は必死に叫ぶ羽目になってしまった。
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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