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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第五章『初期飛娘の三人』

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秘書娘問題

「次は秘書娘についてだ。
 現在は山雲雀にのみやって(もら)っているが、今後はそれが出来る人数を増やしていこうと思う」

 ゲームのシステムでは秘書娘は三名まで設定できる。

 これは、第一秘書娘が遠征などに出ていても、第二、第三の秘書娘がメイン画面に表示されるようにという為だけの機能だ。

 なので、ひょっとしたら第三秘書娘まで設定していない司令官もいるかもしれない。

 ただ、現実でいえば、これから三百近い飛娘が着任してくるのに、それを管理するのが司令官()第一秘書娘(山雲雀)だけというのはさすがに無理が生じてくる。

 だから、今のうちに秘書の仕事が出来る子を増やしていこうという事だ。

「これは何かしらの問題で俺や山雲雀が不在になった時、残ったメンバーである程度の期間、基地を回せるようにする、という意味もある。
 急にそうなった時に、誰も何も知らないってなったら、パニックになる可能性があるしな」

 大本営や他の基地への連絡方法や、資材や燃料の発注方法など秘書娘として覚えておかなくてはならないことは沢山ある。

「だったら、真鴨がやろうか!?」

 ……どう考えても、秘書娘向きではないだろうに。

 こいつには一度、自己分析をやらせた方がいいな。

「悪いが、前提として中鳥級は外そうと思う」

「え?
 何で?
 真鴨でも!?」

 何で、お前”でも”なんだ!

 むしろ、真っ先に外される奴だろう!?

「真鴨はもちろんの事、他の中鳥級も外す」

「何で”もちろん”!?」

「そこに疑問に感じること自体、理由になるだろう!
 ああ、うるさい!
 とにかく、中鳥級は除外!
 中鳥級は前線での指揮を任したいの!」

「ああ、なるほど」

 白梟が合点が行ったというように、頷いた。

 基本的に機艦隊の旗機艦は中鳥級が行うことになっている。

 速度もあるし小回りも利くので、指示しやすいってのが主な理由だ。

「だから、それ以外の機艦種で――出来れば満遍なく選んでいきたい」

 視線を移すと、黒鶴が先手を打つ。

「司令官、背高鴫(せいたかしぎ)には秘書娘の素質があります。
 それに、前からやりたいと言っておりました。
 ね、そうでしょう?」

「……いや構いませんけど……」

 背高鴫(せいたかしぎ)は苦笑いを浮かべた。

 いろいろ言ってるが、黒鶴……。

 これまた、単に自分がやりたくないだけだろう。

 そもそも”前から”って言うほど、お前らいないだろうに。

 まあ、温厚で面倒見が良い背高鴫(せいたかしぎ)が、秘書娘向きなのは認めるがな。

 次に大鷹達に視線を向ける。

 毛足狂鳥(ケアシノスリ)が馬鹿でかい胸を張りながら、右手を挙げた。

「はぁ~い!
 わぁたぁしぃが~任されましたぁ~」

「じゃあ大鷹、頼むわ」

「……了解しました」

「ちょっとぉ~!?」

 何はともあれ、そばにいるだけで頭が痛くなる奴は、秘書娘には向いていない。

 間違いない所だ。

 ギャーギャーうるさい毛足狂鳥(ケアシノスリ)を無視して、雲雀に視線を移す。

「あとは雲雀、おまえに任せた」

「え!?
 わたしですか!?」

「ああ。
 とりあえず来週の頭から、メイン山雲雀にこの三人を加えて回していこうかと――」

 先に進もうとする俺に雲雀が何故か食らいついてくる。

「司令官!
 わたし無理です!
 無理ですから!」

「はぁ?」

「いやいやいや!
 何で驚いた顔してるんですか!
 確かにわたし、山雲雀ちゃんのお姉ちゃんですが、山雲雀ちゃんとは違うんですよ!?」

 ……え?

 どういうことだ?

「そんなこと無いだろう?
 やれば出来るだろう?」

「ちょ、無茶な買いかぶりをしないでくださいよぉ~!
 わたしみたいな飛娘に出来る訳がありません!」

 ……おかしい。

 何で、”雲雀”がそんなことを言ってるんだ?

「何を言って――」

「ちょっと、司令官(あなた)
 無理強いは駄目よ!」

 山雲雀が止める。

 いや、違う――ああ、いや、そんなことをやってる場合じゃないか!?

 皆の視線がこちらに集まっていた。

 ここで()めるのは最悪だ。

「そ、そうか……。
 そうだな……。
 だったら――」

 白梟にお願いしようと思い――慌てて考える振りをしつつ目線を宙に向けた。

 危ない!

 雲雀が駄目だからといって、代わりが上官というわけではないが、指導する立場にある白梟を選ぶとか、あり得ない!

 それじゃあ、雲雀より劣っていると言ってるようなものだ!

 それに、そもそも中鳥級は(はぶ)くって、言ったばかりだろう!

 だったら、小鳥級から選ぶ訳だが……。

 落ち着きのない姫雨燕、マイウェイな川蝉、無口で俺を嫌ってる節のあるヨーロッパヒンズイ……。

 あかん、今いるメンバーは駄目な子ばかりだ。

 せめて、針尾雨燕(ハリオアマツバメ)がいれば良かったんだが、ここにはいないし……。

「司令官」

 白梟がにこやかに話しかけてくる。

「よろしければ、少しだけでもわたしに秘書娘の仕事をさせていただけませんか?
 中鳥級は前線に、というお話はよく分かるのですが、それでもちょっとぐらいは触れておきたいので」

 あ、あああ……。

 完全に助け船出されちゃってるよ、俺。

「ああ、そうだな……。
 じゃあ少しの間、白梟にもやって貰おうかな……」

「はい!」

 視線の端に山雲雀が大きくため息をつくのが見えた。

 くそっ!

 面目ない。





「あなたねぇ、なによあれ!
 なんか、決まってるみたいな事を言っていたから根回し済みかと思いきや!」

「大変申し訳ございません」

「謝る相手は雲雀姉と白梟でしょう!」

「全く持って、おっしゃるとおり」

 俺と山雲雀以外が出て行った司令室で、やっぱりというかなんというか、我らの秘書娘様に怒られる羽目になった。

 まあ、俺が悪いんだから、仕方がないんだけどね。

 俺は司令官用の席で頭を抱えた。

「ああ……。
 でも、雲雀が断るなんて想像してなかったんだよな。
 おっかしいなぁ~」

「……そう思うのは、漫画が理由なのね?
 でも、言わせて貰うけど、”今”の雲雀姉なら断ると思うわよ」

「……そうなのか?
 ああ、てことは俺、完全に失敗したって事かぁ~」

 俺は漫画での雲雀で判断してしまった。

 現在の雲雀、で見なくてはならなかったのに……。



 雲雀型一番機艦、雲雀はゲームでは山雲雀と同じく、最初に選択できる四名いる初期機艦の一人だ。

 やや地味で、そばかすがある顔は田舎っぽいものの、明るくって元気、そして、ひたむきな女の子である。

 なので人気も高く、飛コレのタイトル画面には彼女が中心に立っているし、テレビアニメでは主人公にもなっていた。

 で、金満基地物語での雲雀はというと、”やや地味で田舎っぽい少女”の箇所が”地味で田舎の少女”にデフォルトされてしまっているという、ある意味、金満基地屈指の不幸な女の子になっていた。

 金満司令官からは美少女然とする山雲雀や姫雨燕と並べられ『お前、本当に飛娘か!?』みたいなことを言われたり『余所の基地の雲雀は……本物だった』と言われたりとかヒドい扱いをされている。

 実際、漫画に出てくる雲雀は冠羽(かんう)はまるで寝癖だし、顔はポッチャリだし、頬はそばかすどころか垢抜(あかぬ)けない感じに赤みがあったりと、何の恨みがあるんだって感じの女の子で描かれていた。

 一時期、雲雀ファンから苦情が殺到したと、金満司令官がツイートしていたが、さもあらんという描写の仕方だった。

 だが、彼女はただのネタ飛娘ではなかった。

 歴史家は彼女をこのように評価する。

『――金満の雲雀は表に自ら出るような飛娘ではなかった。
 だが陰では彼女以上に力強く、金満基地を支えた飛娘はいなかった。
 それは、基地を指揮した金満司令官も、秘書娘、そして司令官代理として戦い抜いた山雲雀も、勝利のためにその身を捧げた白梟も、認めるところだったという』

 そして、終戦後も軍務に身を置き続けて、小鳥級の”神”とまで評される飛娘だ。

 だから、彼女が秘書娘ぐらいであんなに拒絶反応を起こすとは、正直信じられなかった。

 そもそも、漫画では山雲雀が外出中、普通に秘書娘をやっていたはずなんだが……。

「なんていうか雲雀姉、妙に自信なさげなのよね。
 戦果だって悪くないし、一緒に戦っている者としての感想を言えば、正直、姫雨燕よりも上に思えるんだけど……」

 現在、何となくみんなの評価は

 一番上に、川蝉

 次点に山雲雀か姫雨燕

 その後、ヨーロッパヒンズイ、針尾雨燕(ハリオアマツバメ)、雲雀あたりになっているみたいだ。

 俺としては針尾雨燕(ハリオアマツバメ)は優秀な子ではあるものの、来たばかりなのに最初っからいる雲雀と並べるのはどうかと思うけど、その他に関しては異論はなかった。

 元々、雲雀は歴史家が言う通り、前に出るタイプでもないし、沢山いる中できらきら輝くタイプでもない。

 特化した能力もなく、これといった欠点もない。

 いわゆる、オールラウンドに戦える事こそ、彼女の特長なのだ。

 ベストメンバーには組み込まれないが、誰の穴も埋めることが出来る有能さは、それこそが尖った長所とも言える。

 自信を無くしたままいなくなるのは非常に困る飛娘なのだ。

 非常に困るぞ!

 思案する俺に対して、山雲雀がくぎを差す。

「水を差すようだけど、雲雀姉の気持ちが分からないうちから動くの禁止だから」

「え?」

「自信を無くしている所に、上官がしゃしゃっても、よけいなプレッシャーを与えるだけでしょう?
 取りあえずわたしが話を聞いておくから。
 雲雀姉についてはしばらく、あなたは何もしない!
 良いわね」

「……わかった」

 そういわれると、返す言葉もない俺は頷くしかなかった。

 困ったものだというように微笑みながら、山雲雀が続ける。

「わたしはあなたのやり方が間違ってるなんて思っていないわ。
 でも、あなたには”抜け”が多すぎるのよ!
 これからは何かをやろうと思ったら、きちんと、わたしを通してからにしなさい!」

「……了解した」

 はぁ~自分が情けない。
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読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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