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ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第四章『最強の母鳥級』

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とある飛娘の独白

 やっと見つけた。

 山雲雀(わたし)は人気のない食堂でご飯を食べている、黒鶴と背高鴫(せいたかしぎ)の元に歩みを進める。

「ねえ、あなた達、昨日あれから何があったの?
 なんか司令官、部屋に引きこもって出てこないんだけど?」

 なにやら眉間にしわを寄せていた背高鴫(せいたかしぎ)が申し訳なさそうに答える。

「ごめんなさい、山雲雀。
 途中で寝ちゃったらしくって、よく分からないの」

 視線を黒鶴に向けると、朝っぱらからテーブル一杯に皿を並べた彼女は、もぐもぐ咀嚼(そしゃく)しながらこちらを見返してきた。

「よふぉなはに――」

「口の中を空にしてから話しなさい」

 黒鶴は湯飲みを傾けた後、答える。

「世の中には知らなくても良いことがある。
 そういうことよ」

「自分の所の司令官が引きこもってる理由は、少なくとも秘書娘(わたし)は知らないといけないの!
 いいから言いなさい!」

「……他の面々はなんと?」

「顔面蒼白(そうはく)な白梟が首を吊るロープを探していて、他の面々はそれを止めるので大騒ぎ。
 だから、詳細は聞けずにいるのよ」

「……いったい何があったんですか?」

 背高鴫(せいたかしぎ)が顔をひきつらせながら黒鶴に訊ねるも、
「だったら言わない」
と黒鶴はそっぽを向いた。

「言いなさいって!」と山雲雀(わたし)がさらに迫っても「しーん!」とか口で言って聞かない。

 何、口で言ってるのよ!

 大人びた顔して大人げないんだから!

「山雲雀、一つだけ言っておくわ」

「なによ」

 黒鶴はこちらを向きながら、強い口調で言った。

「この件を、司令官に訊ねては駄目!
 これは希望が入っていないパンドラの箱よ!」

「だから、何やらかしたの、あなた達!」

 って、瞳の輝きを消してこっち見ないでよ!

 怖いから!

「……はぁ~まあいいわ。
 とにかく、司令官が出てきたらちゃんと謝りなさい。
 いいわね」

「……はい」

 素直!

 黒鶴(この子)が素直とか!

 いったいどんだけのことをやらかした訳!?

「って、あなた、よく考えたら出撃してないのに何、ご飯とかおかずをお代わりしてるのよ!」

 それに対して、背高鴫(せいたかしぎ)が苦笑しながら答える。

「いやこれは、背高鴫(わたし)達の分で。
 なんか、いわゆる二日酔いになってしまったみたいで、気持ち悪くて食欲がないの……」

「え?
 飛娘って二日酔いになるの?」

「まあ、ごらんの通りなわけで」

 背高鴫(せいたかしぎ)は眉を苦しそうに寄せつつ、苦笑した。

 よく見ると、確かに顔色も良くなく、気分も悪そうだ。

 因みにわたしは昨日、お酒を飲んでいない。

 司令官(あいつ)が何となくの見た目で線引きして、飲んで良い子と駄目な子を分けたからだ。



 年齢で言えば、わたしが一番年上なんだけど……。



 それでなくても、見た目が中学、高校生ぐらいの背高鴫が良くて、同じぐらいのわたしが駄目な意味が分からないし。

 機艦種的に駄目って事?

 そういえば、白梟もお酒駄目な側に入っていたはずなんだけど……。

 なら酔っ払う訳ないし、なんで死にたがってるのかしら?

 間違えて飲んじゃって、何かやらかしたって事かしら?

「そういえば、黒鶴(あなた)は大丈夫なの?
 二日酔い」

「ふっ!
 胸がムカムカして、頭がグワン~グワン~気持ち悪、痛いわ」

「じゃあなんで、そんなに食べられるのよ!」

「だからって、食べないと言う選択をしなくてはならない――そういう理由なんてないでしょう!?」

「無理して食べる理由の方が無いわよ!
 何言ってるの、あなた!?」

「そこに食べ物がある――それだけで十分理由になるわ!」

「何、無駄に良い顔作って、狂ったこと言ってるのよ!
 わたしまで頭が痛くなってきたわ」

 わたしは”それ”に気づき、スカートのポケットからハンカチを取り出して、黒鶴に差し出した。

「あと、またホッペにソースが付いてるわよ!
 これで拭きなさい!」

 しかし、わたしの意図とは違い、黒鶴は目を閉じ、自分の頬をこちらに向けてきた。

「自分で拭きなさいよ!
 ったく、なんでこんなに手間がかかるの!?
 これじゃあ、あなた、子ど……」

 ……子供?

 わたしは黒鶴の頬を拭いながら、ふと思い当たった。

 この子、大人びた容姿と高い能力とプライドが前にでていて、気付きにくいんだけど……。

 ひょっとして精神年齢は子供なんじゃ?

 少なくとも、大人になり切れていないんじゃないかしら?

 わたしが頬を拭き終わると、黒鶴はまた食べ始めた。

「よくまあ、食べられますねぇ」

背高鴫(せいたかしぎ)が呆れたように首を横に振った。

 背高鴫(せいたかしぎ)の目には黒鶴がどのように映っているだろうか?

 今のわたしには――強情な女の子が、引っ込みがつかなくなってしまい、無理矢理食べている――そんな風に見える。



 だとしたら……。



 わたしは司令官(あいつ)が黒鶴としっかり話をしたいと言った時、反対した。

 何故なら、下手に動かして、状況が取り返しがつかないぐらいに悪化したら問題だと思ったからだ。

 上手く行くと分かっているのなら、朱鷺さんが着任するのを待つ方が正しいと思ったからだ。

 おそらく、金満司令官(本物)も同じ事を言ったと思うし、実際、司令官(あいつ)のいう漫画ではその様にしたのだろうと思う。



 だけど、どうだろうか?



 もし、黒鶴が子供じみているのではなく、実際子供だとしたら……。

 わたしや金満司令官(本物)が正しかった――そう、胸を張っていえるのだろうか?

 おそらく、朱鷺さんがくれば黒鶴は言うことを聞いて、扱いやすいとまでは言えないまでも、そこそこ言うことを聞いてくれただろう。

 金満基地の勝利に大きく貢献してくれただろう。

 だが、黒鶴は朱鷺さんに依存する。

 恐らくは、今の基地にいる面々同様、黒鶴の本質を悟らせないまま、べったりと依存する。



 だとしたら、心は成長しない。



 だから、朱鷺さんや姉妹が着任する前に覚悟を決めさせるのが、正解だったのだ。

 司令官(あいつ)は何も言っていなかったから、恐らく、黒鶴の本質に気付いての行動ではなかっただろう。

 わたしが反対しているのに押し通した理由にしたって、一人で弱気になっているあいつをしっかりさせたいというものだった。

 司令官(あいつ)はそこまで深く考えられない。

 自身でも言っている通り、そこまで考えが行くほど(さと)くないのだ。

 ただ、わたしや金満司令官(本物)が”避けた”ものを司令官(あいつ)は正面から向かって行った。

 黒鶴と正面から向き合おうとした。

 だから、正解に行き当たった、のだ。



 わたしは黒鶴と背高鴫(せいたかしぎ)に軽く手を振ると、彼女たちから離れていく。

 わたしと金満司令官(本物)は恐らく同じだ。

 同じ思考で物事にあたるのだ。

 そのやり方が悪いとは……思わない。

 ただ、司令官(あいつ)が読んだという漫画では、ひょっとしたら、それが良くなかったのかもしれない。

 わたしと金満司令官(本物)だから、祟り神には勝てたが、わたしと金満司令官(本物)だから”失敗”もあったのかもしれない。

 同じ考え方のコンビならストレス無く進められただろうが、同じ角度でしか物事を見ることが出来なくては、その裏にあるものを知ることが出来ない。

 だとしたら、わたしと司令官(あいつ)の場合はどうなのか?



 吉と出るか、凶と出るか。



 さて、と。

 わたしは自分の唇が緩むのを感じた。

 そろそろ、”わたしの”司令官殿にも部屋から出てきて貰いましょうか?
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

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