挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第三章『北西空域を制圧せよ』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

24/41

予期せぬ飛娘

 ……。



 俺のマウスを持つ右手の――十センチほど先に、烏の形のいいお尻がある。

 例えばここで、俺が仕事に熱中している(てい)でスススーッとマウスを滑らせるとする。

 で、”熱中するあまり”その手があの柔らかな所にぶつかるとする。

 その時、烏はどういう反応をするか?

 例えば、琉球燕なら基地内を狂ったように走り回り、大騒ぎするだろう。

 だが、この烏はどうだ?

 何となくだが、『ふぅ~ん?』とか『なあにぃ?』とか、そんなふわっとした反応しか返さないのでは無かろうか?

 そこで、『邪魔だって言ってただろう?』とか言えば『あぁ~そうだねぇ~』とか何となく烏が悪いみたいな流れになるのではないだろうか?

 って、いやいや、なにを考えているんだ俺は!

 恥を知るべきだ!

 恥を!

 ……でも、もう少し近づけたら、不意に座り直したりとかで触れちゃったりとか何とか有るかも……。

 そうすれば、あれだ!

 受動だ! 受け身だ!

 よし! 取りあえず五センチほど……。

「ひゃ!?」

 突然、手を上から押さえつけられた。

「あ、ごめん。
 バランスを崩しちゃって」

 喉から心臓が飛び出るかと思った!

 喉から心臓が飛び出るかと思った!

 なんちゅうタイミングで、なんちゅう事してくれるんだ!

「そんなに驚くこと無いじゃん」

「驚くわぁぁぁ!
 ”仕事中”にそれされたら、まじ、驚くわぁぁぁ!
 もう、いいから向こうに行ってなさい!
 しっしっ!」

「そんなに怒ること無いじゃ~ん」

「いいから、ほら!
 行った行った!」

「ちぇ~っ。
 せっかく居て上げたのにぃ~」

 烏は頼んでもいない事を恩着せがましくブツブツ言いつつ、机から腰を下ろす。

 やっとかぁぁぁ!

 あああ~まったくもう!

 別に露出度が激しいわけでも、肉欲や官能を煽ったりする体つきでもない――ほっそりとした女の子なんだが……。



 妙にエロく感じてしまうのは何故だろうか?



 やっぱり、黒のタイツなのか……。

 黒スカートから覗く黒のタイツが俺を狂わせるのか……。

 ああああ~も……う?

 俺はふと目の前にあるノートパソコンの画面に違和感を抱く。

 なにこのカウントダウン?



 ……。



「ああああああ!?」

「うぁっ!?
 なに?」

 ちょ、うわぁ!?

 そうか、さっきマウスを持つ俺の手の上に、烏が手を着いたから!

「どしたの?」

 不思議そうに訊ねてくる烏に――俺は返事をすることすらできず、目の前の少しずつ減っていく時間を眺めた。

 いや、この開発時間って……。

 やばくない? これ。





「第一機艦隊、戻ったわ!」

 上機嫌な山雲雀の声と共に、六……いや、七名の飛娘が入ってきた。

「お、おう!
 お帰り!」

 応急処置のまま来たのか、皆、あちらこちらに包帯を巻いている。

 ただ、けが人とは思えないほど高揚した顔をしていた。

 その中で、真鴨が高笑いをしつつまくし立てる。

「いやぁ~
 真鴨は初めて戦ったけど、母鳥小型級?
 大したこと無かったよ!
 ね、白梟!」

「確かに……。
 もう少し、時間がかかると思ってたわ」

山雲雀(わたし)は元々苦戦するとは思ってなかったわよ!
 まあまさか、真鴨の跳び蹴りがトドメになるとは思ってもみなかったけど!」

「あははは!」

「あれは酷かったですね!
 ほんと、白隼なんて戦闘中なのに笑っちゃいました!」

大鷹(わたし)も!
 ねえあれって、狙ってたの?」

「いやぁ~放つ瞬間まで考えもしなかったけどさぁ~
 急に頭の中に来たわけ『今だぁぁぁ!』って声が!
 いやぁ~なんかコツを掴んだっていうかさぁ~
 背高鴫(セイタカシギ)がいるのにこんな事を言うとちょっと悪い気がするけどさぁ~
 母鳥級の倒し方って奴? もう分かっちゃったっていうかさぁ~
 皆にも後で教えるよ!」

「あなたぐらいよ、戦闘機同士の隙間をかいくぐりながら突っ込んでいける大馬鹿者は!
 あ、背高鴫(セイタカシギ)、ごめん。
 紹介するわ、こちらが金満司令官よ」

 山雲雀の振りで、白地にピンクの花菱(ハナヒシギ)模様の着物に、水草が描かれた黒い袴、そして、ピンクのブーツを履く少女が元気いっぱい挨拶をしてくれる。

「母鳥小型級背高鴫(セイタカシギ)型一番機艦、背高鴫(セイタカシギ)、着任いたしました!
 小型ですが母鳥級にも負けない働きが出来ます!
 よろしくお願いします!」

 可愛い。

 だが、俺は別のことに気が……。

「なによ、あなた。
 小型級とはいえ、せっかく初の母鳥級をドロップしたんだから、もっと喜び――」

 山雲雀の言葉を別の方向から来た声が遮る。

「なるほど。
 隊列を組む時、戦闘機同士に必ず隙間が出来てしまいます。
 そこをすり抜けられたら、母鳥級はひとたまりも無いでしょうね」

 落ち着いた――少女と言うよりも”女性”の声に一同の注目が集まる。

 ”彼女”の黒い着物には金色の雲がかかった華やかな牡丹(ぼたん)がいくつも描かれていて、墨汁色の袴の――その右足の位置には、一匹の”白い”鶴が立っていた。

 ”彼女”は続ける。

背高鴫(セイタカシギ)ですか。
 なかなか優秀な子が着任しましたね。
 このレベルの基地で、”本当に”初の母鳥級で有れば最高でしょうね」

「あなた、もしかして……」

 ”彼女”が何者か気づいたのか、山雲雀の目が大きく見開く。

 しかし、”彼女”は透き通るような白い顔を特に変化させるわけでもなく、ただ、切れ長い目で他の飛娘達を眺める。

 と、急に”彼女”は口元を緩ませた。

 それは、陸を必死になって走る亀を、空高くから見下ろす”鶴”のような傲岸さがあった。

「もっとも、戦闘機をすり抜けるという中鳥級も、”ただの”母鳥級レベルで活躍できると言う母鳥小型級も、”本物”の前では無意味でしょうが」





 ……歴史学者は”彼女”をこのように評した。

『まさに達人と呼ぶに相応しい飛娘だった』と。

 歴史学者は”彼女”をこのように評した。

『母鳥級が一対一の局面で、彼女から制空権を奪取できる者は敵味方共にいなかっただろう』と。

 歴史学者は”彼女”の”事実”としてこのように記した。

『金満基地の重要な戦いで、そのほとんどに彼女が出撃し、その空を確実に支配した』と。

 ”彼女”の名は黒鶴(クロズル)――金満基地四名いる最強の一角、母鳥級丹頂(タンチョウ)型二番機艦、黒鶴(クロズル)だ。
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ