挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ようこそ、飛娘コレクターの司令官……代理! 作者:時井 人紀

第三章『北西空域を制圧せよ』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

21/41

とある飛娘の独白

「……酸素マスクは良し、と。
 次、安全装置の点検よろしく」

 山雲雀(わたし)の指示に、作業着姿の付喪神ちゃん達は頷き、わいわい言いながら”飛娘ドッキング仕様、司令官飛行ユニットスーツ”とやらに潜り込んでいった。

 飛娘(わたし達)も人のことは言えないが、付喪神ちゃん(この子)達とは不思議な生き物だ。

 司令官(あいつ)飛娘(わたし)達の腕力に驚愕しているようだが、それよりも付喪神ちゃん(この子)達の方がずっと凄い。

 何せ、十五センチぐらいの大きさにも関わらず、小鳥級の武器とはいえ、一人で持ち上げて運んでしまうのだ。

 単純な力だけでなく、武器や設備の修理や保全、母鳥級や基地防衛システムなどの戦闘機や偵察機の操作、傷ついたわたし達の治療などやれることは多彩で、驚異的な存在である。

 ただ、残念なことに彼女たちは”物”に司る存在なので、彼女たちの元となる”基地”や母鳥級を(おも)とする”飛娘”からあまり離れて存在することは出来ない。

 あくまでも、付喪神(宿るもの)なので、独立する意志も行動も出来る飛娘(わたし達)とは違う。

 だから、付喪神ちゃん(彼女たち)は何かに疑問を持つことはない。

 ただ、指示する者の権限に従い、行動するだけだ。



 ……。



 付喪神ちゃん(彼女たち)とは違って、わたし達、飛娘は独自性を保っている。

 それは、出撃先が通信不可の場所で、司令官の指示が届かなかったとしても、自分自身で考えて行動する必要性から、そのように作られたのだろう。

 確かに、そうしなければ刻一刻と変化する戦場では全く役に立たない。

 それは間違いない。正しい……。

 だが、独自性(そのような)ものを与えることで、何かの拍子に飛娘が裏切るとは考えなかったのだろうか?

 そんな疑問も湧いてくる。

 飛娘(わたし達)は柔軟性に乏しい部分は確かにある。

 空の飛び方も、司令官(あいつ)に指摘されるまで、戦闘機と同じ様にしか出来なかった。

 それと同じで、飛娘(わたし達)の中で、”司令官の命令は絶対”とか”人のために命をかけるのは当たり前”とかそういったものも有る。



 だが、それは完全ではない。



 琉球燕を例に出すまでもなく、うちにいる飛娘のほとんどが、司令官(あいつ)を盲信していない。

 司令官(あいつ)のキャラも影響してるだろうけど、指示を疑うし、嫌がるし、めんどくさがる。

 挙げ句の果てに、言うこと訊かないし、だ。

 飛娘うんぬくんぬ以前に軍としてあってはならないことを、わたしを含む皆が平気でやらかしている。



 うちはまあ、それでもいい。



 根本的な所では皆、司令官(あいつ)を信頼しているし、仮に行きすぎた子がいてもブレーキをかけられる白梟だっているのだから。

 だが、余所だとどうなのだろうか?

 ……。

 やめておこう。

 また、嫌なものに行き着きそうだ。



 ……。



 司令官(あいつ)金満司令官(本物)が気づいたのはホバリングや跳び蹴りではないかもしれない――そんな疑念を持っているようだ。

 わたしにだって、金満司令官(本物)が何を見つけ何を隠したのか、正確には分からない。

 だけど、何となくだが、司令官(あいつ)金満司令官(本物)は仮に一致はしていなかったとしても、それほど遠いものは見ていなかったのでは? とわたしは思う。

 ただ、金満司令官(本物)はこのことに気づくことで”悪目立ち”したくなかったのでは無いだろうか?



 自分たちが作ったと”公言”しているにも関わらず、この程度の”本質”に気づかず、大本営(彼ら)から遠く離れているはずの金満司令官(一司令官)がそれに気づいたという事実について……。



 金満司令官(本物)は変な勘ぐりをされたくない――そう判断したのではないだろうか?

 どちらにしても飛娘(わたし達)という存在は、どこか怪しい。

 自分のことだからこそ、どことなく気味が悪い。



 ……。



 わたしは何となく、目の前にある厳つい飛行ユニットとやらを眺めた。

 これは飛娘が装備して離陸したら、着陸まで外れない仕様になっている。

 それは、例え飛娘の力を持ってしても無理には外れない。

 そういう、”仕様”なのだ。

 だから、飛んだ時点で何か有れば、飛娘と司令官は運命を共にする事になる。

 ……司令官(あいつ)はこそこそと、外れるように出来ないかとか馬鹿なことを付喪神ちゃんに聞いていたらしいが、そんなこと出来るわけが無い。

 そんな仕様変更を行って、何かの拍子に外れたらどうするつもりなのかしら。

 本当に間抜けな男だ。

 ……そもそも、司令官(あいつ)は考えないのだろうか?



 飛娘が自分を殺す可能性について。



 そんな変更を行い、空を飛んでいる時に飛娘(わたし達)が、結合を外すのではないかとか、全く考えないのだろうか?

 それとも、山雲雀(わたし)や白梟を信じて疑わないのだろうか?

 強固に……。

 それこそ、盲信的に……。

 白梟はともかく、わたしは司令官(あいつ)をそこまで信じ切っていない。

 司令官(あいつ)が何かあった時には、わたしは運命を共にするつもりでいる。

 わたしは司令官(あいつ)に無防備な姿も見せるし、なんだったら、司令官(あいつ)の前で睡眠薬を服用しても良い。

 それは、司令官(あいつ)がそれに値する人間だと思っているし、それは、司令官(あいつ)がむやみに人を傷つける人間ではないと思っているからだ。



 だけどそれは多分、司令官(あいつ)がわたしに向けるものとは違う。



 なぜならわたしは、覚悟も決めている。

 司令官(あいつ)が仮にわたしを傷つけることがあっても良いように。

 司令官(あいつ)が仮に飛娘(わたし達)に酷い事をしても良いように。

 そうなったら、そういう人間だったと気づかなかった”わたしが悪い”とか、思っている。

 ”わたしの見る目”がなかったとか、思っている。

 多分、本当に信じているのであれば、そんな”逃げ道”なんて作らない。

 司令官(あいつ)はきっと、そんな逃げ道を作ってやしない。

 だから時々、司令官(あいつ)の事が眩しいし――見てるのが辛い。



 ……金満司令官(本物)はどうだったんだろうか?



 わたしを妻にしたという人も、司令官(あいつ)のようにわたしを信じたのだろうか?

 司令官(あいつ)のように信じ、わたしに身をゆだねたのだろうか?

 わたしが落とす可能性など微塵も考えず、あの飛行ユニットの中に――。



 金属の音が響き、不意を付かれたわたしはビクッと震えた。

 え? 何?

 目の前の飛行ユニット――その背中に尖った何かが飛び出ていた。

 ん?

 付喪神ちゃんがやってきて、それをどうやらチェックしているようだった。

 わたしはそれに近づきよく見てみる。

 何か注射のようなもののようだった。

 あの位置は……飛行ユニットにつながっていた時、ちょうどわたしの胸辺りがある位置だった。

 視線を付喪神ちゃんに向けてみた。

 なにやら熱心にチェックをしている彼女の手元には、”緊急用”と書かれた紙があった。

「ハハハ……」

 わたしはそれが何なのか、理解した。

 理解した瞬間、なんだか笑えてきた。

 それと同時に、目から何かがこぼれ落ちてきた。



 涙、これが涙、か。



 生まれて初めてのそれを、わたしはどうしたらいいのか分からず、手のひらでただ受け止めた。

 わたしは歪んでいる。

 つくづく歪んでいる。

 だけど、なんだかよく分からないけど嬉しい。

 理屈には合わないけど、嬉しい。

 金満司令官(本物)の存在が嬉しくてたまらない。

 どれくらい経ったのだろうか。

 気づくと、何十人もの付喪神ちゃんに囲まれていた。

 凄く心配そうに見上げる彼女たちに気づき、今度はたまらなく恥ずかしくなった。
*************
読んで頂き、ありがとうございます!^^
評価感想など頂けると、これからの執筆活動の糧になります。
気が向いたらで構いませんので、よろしくお願いします。><

小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ